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仮交際始めました
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筋肉痛と薬の副作用でフラフラしながら真夜中に下着洗って、薬飲んでもう一度寝直してーー起きたら朝で。
俺は職場に連絡して午前中だけ仕事休んで、かかりつけの病院に行った。こんなに発情周期乱れるの初めてだったから、念の為な。
そしたら医師の言うことには、通りすがりにアルファの方と接触したりした覚えはありませんか、って。
その上言われたのが、オメガは30過ぎると身体が出産リミット意識し出して、相性のいい相手と接触すると発情周期が乱れやすくなる、って事で。
昨日の今日でまたショックを受けた……。
夢のこともあるけど、要するに身体ばっかり産む気マンマンてことじゃねぇか。
……犬塚さんの子供を……?
夢の中でも俺、頑張るって言ってたしな……子犬が欲しいって。
……ずっと、自分は世間一般の男と何一つ変わんねぇと思って生きてきたのにな。
ーー12歳の時にオメガだって知るまで、自分は「普通」の男だと信じてたし、疑いもしなかった。
オメガだと知らされてからも、余計なものは付いてるけど、他のことは周りのベータの男と何一つ変わらないと思ってた。
この余計なものを使うってことは、女にならなくちゃいけない事だと漠然と感じてたし、セックスで子供を作るなら文字通りそういう事になると後から知って、なおさら嫌になった。
男ってさ、俺の同級生殆どそうだったけど、毛は生えてるし硬いし脂っぽいし、頭の中身は大概アホでスケベだし、外見も中身もあんまり綺麗じゃねぇじゃん。そんな奴らにワザワザ痛ぇ思いして突っ込まれるなんて死んでもゴメンだと思ったんだ。
ーー今改めて思うと、思春期の女の子みてぇな考えだったな……。この人の子供なら産めるかもって相手を探してみる気もなく、ハナから決めつけてたと言えなくもない。
犬塚さん毛は生えてるどころの騒ぎじゃねぇし、硬いし、人間の時に触ってみたら脂っぽいかもしれねぇけど、何でか嫌じゃない。顔もキレイで可愛いし、中身がムチャクチャ男前だったりもするからかな。
もし彼が俺の立場だったら、犬とか人間とか、男とか女とか、アルファとかオメガとか、気にしなさそう。
そういう毅然とした態度が、すげぇカッコいいし、たとえ男でも惚れそうではある。
もしかしたら俺、ほかの誰かの子供はともかく、犬塚さんの子供なら産めるのかもしれない……と、チラッとは思う……。
犬塚さんは俺なんか選ばなくて、この仮交際ももうすぐ終わりかもしれねぇけど。
ーー病院出て、貰った強めの薬飲んで月曜午後は出勤した。
けど、犬塚さんとの水曜の約束は、やっぱり延期してもらった。事故があったら申し訳ねぇし。
……そしてその日から会えない間、俺のスマホには毎日オハヨウとオヤスミのメッセが来るようになった。
今日も一日頑張りましょう、とか。
今夜はいい月だね、とか。
午後は雨が降るらしいから、傘を忘れないで、なんて事まで。
それで気付いた……犬塚さん、この前のことで俺を嫌ってねぇんだなって。
終わらせようと思ってんのにこんなにマメに接して来るヤツ普通いねぇし、言葉の端々から「恋人」っぽい感じが半端ねぇから……。
好きとかそういう直球な言葉は無いけど、それ以外なら全部くれる感じ。
仮交際終了かなって思ったのは俺の勘違いだったんだと思う。
「少し話したいこと」がやっぱり怖くはあるけど……。
それでもって、毎日メッセージが来るたびにやっぱり嬉しくてさ。
でもいつもよりも来るの遅かったりすると、もう終わりなのかなとか、凄ぇ怖くなって。
俺の送った言葉が何か悪かったんじゃないかとグルグル悩んで……来たら、ホッとしてスマホを抱く。
こんな事毎日繰り返してたら、元の生活に……犬塚さんが現れる前の生活に、戻れないような気がしてだんだん恐ろしくなった。
包み込むような優しさに少しずつ慣らされて、毎日オハヨウとオヤスミがある事が当たり前になっちまったら、この先もしもそれを失った時、俺はどうなっちまうんだろう。
毎日一喜一憂する心が悲鳴上げてる。
これ以上踏み込まれたら危ない。
そんなに揺さぶらないでくれ。
俺、自分自身のこの半端な気持ちに、まだ名前を付けきれてねぇのに。
尊敬なのか恋なのか、発情か、はたまた単なる犬好きなのか……。
発情期終わって一週間後、三度目は俺から誘って東京駅待ち合わせでデートする事にした。
この前のデートで体力不足を実感したから、まず皇居の堀の周り5キロをランニングして、御苑の広い芝生でフリスビーしようかなと。
都内一走ってる人が多いとこだから、あちこちにロッカーとかシャワーを貸してくれるランニングステーションがあって、犬塚さんが脱いだり着たりしやすいし、帰りに飲んで帰る場所にも困らねぇし。
念の為に発情抑制剤を飲んで、更に予備も持って、今度は俺もデートっぽい服で行った。勿論、走る時は着替える前提。
黒スキニーに春用の白ニットとボア付きのミリタリーコート、それから、髪はもう仕事行く時と同じ感じで額出してった。
もう三回目だし今更若作りしてもと思って。
ちなみに弁当は、俺が作るって言ったんだけど、周りに食べる所いっぱいあるから無理しなくて良いとか言われて、ナシ。
なんだかんだで二回目のデートから二週間空いちまった後だったので、俺は凄く緊張しながら丸の内中央口の大きな改札に向かった。
時間にはまだ30分近く早い。
駅舎のクラシカルな天井ドームを見上げながら改札にICカードを通して出ると、屋内広場を囲むように丸く並んだ柱の一つに寄り添って立ってる犬塚さんの姿が見えた。
俺は職場に連絡して午前中だけ仕事休んで、かかりつけの病院に行った。こんなに発情周期乱れるの初めてだったから、念の為な。
そしたら医師の言うことには、通りすがりにアルファの方と接触したりした覚えはありませんか、って。
その上言われたのが、オメガは30過ぎると身体が出産リミット意識し出して、相性のいい相手と接触すると発情周期が乱れやすくなる、って事で。
昨日の今日でまたショックを受けた……。
夢のこともあるけど、要するに身体ばっかり産む気マンマンてことじゃねぇか。
……犬塚さんの子供を……?
夢の中でも俺、頑張るって言ってたしな……子犬が欲しいって。
……ずっと、自分は世間一般の男と何一つ変わんねぇと思って生きてきたのにな。
ーー12歳の時にオメガだって知るまで、自分は「普通」の男だと信じてたし、疑いもしなかった。
オメガだと知らされてからも、余計なものは付いてるけど、他のことは周りのベータの男と何一つ変わらないと思ってた。
この余計なものを使うってことは、女にならなくちゃいけない事だと漠然と感じてたし、セックスで子供を作るなら文字通りそういう事になると後から知って、なおさら嫌になった。
男ってさ、俺の同級生殆どそうだったけど、毛は生えてるし硬いし脂っぽいし、頭の中身は大概アホでスケベだし、外見も中身もあんまり綺麗じゃねぇじゃん。そんな奴らにワザワザ痛ぇ思いして突っ込まれるなんて死んでもゴメンだと思ったんだ。
ーー今改めて思うと、思春期の女の子みてぇな考えだったな……。この人の子供なら産めるかもって相手を探してみる気もなく、ハナから決めつけてたと言えなくもない。
犬塚さん毛は生えてるどころの騒ぎじゃねぇし、硬いし、人間の時に触ってみたら脂っぽいかもしれねぇけど、何でか嫌じゃない。顔もキレイで可愛いし、中身がムチャクチャ男前だったりもするからかな。
もし彼が俺の立場だったら、犬とか人間とか、男とか女とか、アルファとかオメガとか、気にしなさそう。
そういう毅然とした態度が、すげぇカッコいいし、たとえ男でも惚れそうではある。
もしかしたら俺、ほかの誰かの子供はともかく、犬塚さんの子供なら産めるのかもしれない……と、チラッとは思う……。
犬塚さんは俺なんか選ばなくて、この仮交際ももうすぐ終わりかもしれねぇけど。
ーー病院出て、貰った強めの薬飲んで月曜午後は出勤した。
けど、犬塚さんとの水曜の約束は、やっぱり延期してもらった。事故があったら申し訳ねぇし。
……そしてその日から会えない間、俺のスマホには毎日オハヨウとオヤスミのメッセが来るようになった。
今日も一日頑張りましょう、とか。
今夜はいい月だね、とか。
午後は雨が降るらしいから、傘を忘れないで、なんて事まで。
それで気付いた……犬塚さん、この前のことで俺を嫌ってねぇんだなって。
終わらせようと思ってんのにこんなにマメに接して来るヤツ普通いねぇし、言葉の端々から「恋人」っぽい感じが半端ねぇから……。
好きとかそういう直球な言葉は無いけど、それ以外なら全部くれる感じ。
仮交際終了かなって思ったのは俺の勘違いだったんだと思う。
「少し話したいこと」がやっぱり怖くはあるけど……。
それでもって、毎日メッセージが来るたびにやっぱり嬉しくてさ。
でもいつもよりも来るの遅かったりすると、もう終わりなのかなとか、凄ぇ怖くなって。
俺の送った言葉が何か悪かったんじゃないかとグルグル悩んで……来たら、ホッとしてスマホを抱く。
こんな事毎日繰り返してたら、元の生活に……犬塚さんが現れる前の生活に、戻れないような気がしてだんだん恐ろしくなった。
包み込むような優しさに少しずつ慣らされて、毎日オハヨウとオヤスミがある事が当たり前になっちまったら、この先もしもそれを失った時、俺はどうなっちまうんだろう。
毎日一喜一憂する心が悲鳴上げてる。
これ以上踏み込まれたら危ない。
そんなに揺さぶらないでくれ。
俺、自分自身のこの半端な気持ちに、まだ名前を付けきれてねぇのに。
尊敬なのか恋なのか、発情か、はたまた単なる犬好きなのか……。
発情期終わって一週間後、三度目は俺から誘って東京駅待ち合わせでデートする事にした。
この前のデートで体力不足を実感したから、まず皇居の堀の周り5キロをランニングして、御苑の広い芝生でフリスビーしようかなと。
都内一走ってる人が多いとこだから、あちこちにロッカーとかシャワーを貸してくれるランニングステーションがあって、犬塚さんが脱いだり着たりしやすいし、帰りに飲んで帰る場所にも困らねぇし。
念の為に発情抑制剤を飲んで、更に予備も持って、今度は俺もデートっぽい服で行った。勿論、走る時は着替える前提。
黒スキニーに春用の白ニットとボア付きのミリタリーコート、それから、髪はもう仕事行く時と同じ感じで額出してった。
もう三回目だし今更若作りしてもと思って。
ちなみに弁当は、俺が作るって言ったんだけど、周りに食べる所いっぱいあるから無理しなくて良いとか言われて、ナシ。
なんだかんだで二回目のデートから二週間空いちまった後だったので、俺は凄く緊張しながら丸の内中央口の大きな改札に向かった。
時間にはまだ30分近く早い。
駅舎のクラシカルな天井ドームを見上げながら改札にICカードを通して出ると、屋内広場を囲むように丸く並んだ柱の一つに寄り添って立ってる犬塚さんの姿が見えた。
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