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第2章.妖精王
042縫.フィリルは何処に?
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アカリとニックと長老さんは、背筋を伸ばしたフィリルの凛とした後ろ姿が階段の上に消えて行くまで見送りました。
振り返ると、ミストシャワーの水玉がまだキュイぐるみに貼り付いていたみたいです。
アカリが立ち上がると、キュイぐるみを伝ってアカリの素肌を滑ります。
さすがは女子高生、若い素肌は張りが違いますね。
腕の表面で滑る水玉を指で軽くプンっ!と払いながら、アカリは周りを見回しました。
「おい、アレと違うかの?」
長老さんにちょんちょんと突かれ、アカリが長老さんの指差す方向を見てみると……
擦りガラスの仕切りの向こうのソファーで、先ほどまで絶賛モフモフ中だった3人のキュルミー少女達が伏せて気を失っている状態で発見したんです。
ユサユサと起こした少女達のうち2人は立てますが、1人はまだ腰が抜けている様です。
ワタシもこの子達みたいに、モフモフされてしまっていたら今頃……
長老さんとアカリは、二度と闘えなくなった3人のキュルミー少女達の元へと歩み寄りました。
ニックは心配そうに隙間から覗き込みます。
「遅くなって、すまんかったの。
そなた達3人、絶対に見捨てはせんぞい!」
『ちょ、長老さまぁ……!』×3
今は、長老さんと少女達の世界です。
ワタシは一歩引いて、存在を空気にした方がいいですね……
アカリは何も言わず、涙を流す3人の少女達を背中から肩をそっと優しく抱き竦めてあげます。
少女達3人の気分が落ち着いた所で、長老さんとアカリとニック、そして少女達は北の漁村を後にしました。
そして、再び深い霧の中をアカリを頼りに歩き続けてキュルムの町に戻り、少女達を町の病院へと送り届けます。
「長老さん、この後相談したい事があるんですけど……」
「この道端では周りの人の目もあるし、落ち着いて話も出来なかろう。
ワシの家へおいで。」
こうしてアカリは、町中でひと際大きく存在感を放つ長老の家へと招待されたんです。
魔除けを意味する紫色の屋根に、狛犬に似た水色のシーサーの置き物がまるで鬼瓦の様に置いてあります。
「長老さん、アレは一体何ですか?」
アカリは、屋根を指差して聞きます。
「あれは “ 風獣と言っての、風で霧を払いこの町を守ってくれる守り神なんじゃよ。
よく追い風を背に受ける事を、『風上に立つ』って言うじゃろ?
アレの語源なんじゃよ。」
確かに、キュルムの町はいつも深い霧に包まれています。
この町はいわゆる “ 風 ” という自然現象を崇拝する、「自然崇拝」の町でもあるんでしょう。
みんなで、長老の家の中に入ります。
長老さんとアカリがテーブルの周りに敷いてあるゴザに座ると、使用人のお姉さんが冷たい飲み物を持って来てくれました。
「長老さま、粗茶をお持ちしました。
お客様もどうぞ……」
アカリはコップの飲み物をコク……と飲み干して、ニックにニコとアイコンタクトをします。
そして、コップを下から上に振って中に入った氷だけをニックに放り投げると……
綺麗な放物線を描いて、見事にニックの口へジャストイン!
ポリポリ……ポリポリ……
ニックは美味しそうに氷を頬張り、噛み砕いて食べています。
アカリはスウ……ッとひとつ深呼吸をした後、意を決して長老さんに尋ねました。
「長老さん、『ミントセキュリティサービス』って一体どういう組織なのか、ご存知無いですか?
長老さんの分かる範囲でイイです、教えて下さい!」
ふむ、と長老さんはしばらく考えて思い出した事を口にしました。
「確か、ミントセキュリティサービスっていうのは『ミント団』グループという大きな傘下の中で主に “ 要人警護 ” を主な業務とする一大警備保障会社なんだそうじゃ。」
要人警護って……
もしかすると、今ワタシが探している『7世界の王』達もミントセキュリティサービスに護られているんでしょうか?
「えっ、“ 要人警護 ” って国のトップとか超エライ人を護るのが仕事なんでしょう?
何でそんな人達が『窃盗団の殲滅』なんて事をしていたんですか?」
う~ん、と長老さんは首を捻りますが、答えに辿り着きませんでした。
「それは……分からんのう。
何か理由があったのかも知れん。
それこそ、今度フィリルとやらに会った時に聞いてみたらどうなんじゃ?」
取り合えず、今現在で分かっている事は
『ミントセキュリティサービスは要人警護の業務を請け負っていてフィリルが最高責任者である』
事だけです。
ミントセキュリティサービスの拠点がどこにあるのか、どこに行けばフィリルに会えるのかが依然不明なんです。
「八方塞がりって感じですよ……」
悄気ているアカリを見て、見かねた長老さんが救いの手を差し伸べてくれました!
優しいです、長老さん♡
「ならば、そなたは明日時間が空いているかの?
今日病院へ行った3人は、そのまま明日まで点滴入院をするそうなんじゃ。
ワシの代わりに、見舞いに行ってやって欲しいんじゃよ。」
ニックも、全面的に後押ししてくれます!
「お姉ちゃん、気分転換にちょうどいーよー!」
「分かりました、ニックと2人で行って来ます。」
翌日、見舞いの場でまさかあんな事が起ころうなんて……!
振り返ると、ミストシャワーの水玉がまだキュイぐるみに貼り付いていたみたいです。
アカリが立ち上がると、キュイぐるみを伝ってアカリの素肌を滑ります。
さすがは女子高生、若い素肌は張りが違いますね。
腕の表面で滑る水玉を指で軽くプンっ!と払いながら、アカリは周りを見回しました。
「おい、アレと違うかの?」
長老さんにちょんちょんと突かれ、アカリが長老さんの指差す方向を見てみると……
擦りガラスの仕切りの向こうのソファーで、先ほどまで絶賛モフモフ中だった3人のキュルミー少女達が伏せて気を失っている状態で発見したんです。
ユサユサと起こした少女達のうち2人は立てますが、1人はまだ腰が抜けている様です。
ワタシもこの子達みたいに、モフモフされてしまっていたら今頃……
長老さんとアカリは、二度と闘えなくなった3人のキュルミー少女達の元へと歩み寄りました。
ニックは心配そうに隙間から覗き込みます。
「遅くなって、すまんかったの。
そなた達3人、絶対に見捨てはせんぞい!」
『ちょ、長老さまぁ……!』×3
今は、長老さんと少女達の世界です。
ワタシは一歩引いて、存在を空気にした方がいいですね……
アカリは何も言わず、涙を流す3人の少女達を背中から肩をそっと優しく抱き竦めてあげます。
少女達3人の気分が落ち着いた所で、長老さんとアカリとニック、そして少女達は北の漁村を後にしました。
そして、再び深い霧の中をアカリを頼りに歩き続けてキュルムの町に戻り、少女達を町の病院へと送り届けます。
「長老さん、この後相談したい事があるんですけど……」
「この道端では周りの人の目もあるし、落ち着いて話も出来なかろう。
ワシの家へおいで。」
こうしてアカリは、町中でひと際大きく存在感を放つ長老の家へと招待されたんです。
魔除けを意味する紫色の屋根に、狛犬に似た水色のシーサーの置き物がまるで鬼瓦の様に置いてあります。
「長老さん、アレは一体何ですか?」
アカリは、屋根を指差して聞きます。
「あれは “ 風獣と言っての、風で霧を払いこの町を守ってくれる守り神なんじゃよ。
よく追い風を背に受ける事を、『風上に立つ』って言うじゃろ?
アレの語源なんじゃよ。」
確かに、キュルムの町はいつも深い霧に包まれています。
この町はいわゆる “ 風 ” という自然現象を崇拝する、「自然崇拝」の町でもあるんでしょう。
みんなで、長老の家の中に入ります。
長老さんとアカリがテーブルの周りに敷いてあるゴザに座ると、使用人のお姉さんが冷たい飲み物を持って来てくれました。
「長老さま、粗茶をお持ちしました。
お客様もどうぞ……」
アカリはコップの飲み物をコク……と飲み干して、ニックにニコとアイコンタクトをします。
そして、コップを下から上に振って中に入った氷だけをニックに放り投げると……
綺麗な放物線を描いて、見事にニックの口へジャストイン!
ポリポリ……ポリポリ……
ニックは美味しそうに氷を頬張り、噛み砕いて食べています。
アカリはスウ……ッとひとつ深呼吸をした後、意を決して長老さんに尋ねました。
「長老さん、『ミントセキュリティサービス』って一体どういう組織なのか、ご存知無いですか?
長老さんの分かる範囲でイイです、教えて下さい!」
ふむ、と長老さんはしばらく考えて思い出した事を口にしました。
「確か、ミントセキュリティサービスっていうのは『ミント団』グループという大きな傘下の中で主に “ 要人警護 ” を主な業務とする一大警備保障会社なんだそうじゃ。」
要人警護って……
もしかすると、今ワタシが探している『7世界の王』達もミントセキュリティサービスに護られているんでしょうか?
「えっ、“ 要人警護 ” って国のトップとか超エライ人を護るのが仕事なんでしょう?
何でそんな人達が『窃盗団の殲滅』なんて事をしていたんですか?」
う~ん、と長老さんは首を捻りますが、答えに辿り着きませんでした。
「それは……分からんのう。
何か理由があったのかも知れん。
それこそ、今度フィリルとやらに会った時に聞いてみたらどうなんじゃ?」
取り合えず、今現在で分かっている事は
『ミントセキュリティサービスは要人警護の業務を請け負っていてフィリルが最高責任者である』
事だけです。
ミントセキュリティサービスの拠点がどこにあるのか、どこに行けばフィリルに会えるのかが依然不明なんです。
「八方塞がりって感じですよ……」
悄気ているアカリを見て、見かねた長老さんが救いの手を差し伸べてくれました!
優しいです、長老さん♡
「ならば、そなたは明日時間が空いているかの?
今日病院へ行った3人は、そのまま明日まで点滴入院をするそうなんじゃ。
ワシの代わりに、見舞いに行ってやって欲しいんじゃよ。」
ニックも、全面的に後押ししてくれます!
「お姉ちゃん、気分転換にちょうどいーよー!」
「分かりました、ニックと2人で行って来ます。」
翌日、見舞いの場でまさかあんな事が起ころうなんて……!
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