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出会い

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 高校一年生の秋、ちょうど夏と秋が変わる頃の話だ。
 僕、桐谷一輝は学校に飽きていた。学生ならよくあることだと思う。中学時代はいろいろな同級生がいた。自分より頭が良いやつもいれば、悪いやつもいて、いろいろな価値観を見ることができた。僕はそれが好きだった。しかし、高校は違った。アニメや漫画の高校は個性あふれるキャラがいてとても面白そうだったのに、現実にそんなものは幻想でしかなかったのだ。実際には、高校に行けば同じようなレベルの頭のやつが集まって同じような考え方のやつらが集まるのだ。僕もその一人でしかないのだが、僕にとってはとても面白くなかった。田舎の公立高校(ここではE高校とする。)に通っていたのだが自称進学校で無駄に高いプライド、効率の悪い勉学、極めつけはとんでもない宿題量。苦痛だ。
 そんなことを日々思いながらも、結局あの日も学校に通っていた。おはようと友達、東涼真と挨拶を交わし、改札を渡る。
「なぁ、今日は可愛い子を探そうぜ。」
俺が話し出す。
「おん、勝手にやれば?俺はやらんけど。」
涼真は適当に返した。いつものことである。僕がしょうもないことを言うといつもこう返すのだ。だが、今日はそれに足して
「え?一輝急に女に興味出してどうしたの?最近までまともに女子とも話せなかったのに。」
と笑う。身長が170後半ある涼真を160前半しかない僕が見上げる。確かに言い返す言葉はない。その通りだ。僕は自分でもよく分らないが、男子は大丈夫なのに女子と目を合わせて話すことが苦手なのだ。
「うるせーわ。学校に行く楽しみの一つくらい見つけたいだろ。」
僕は、言い返す。涼真の高校は同じ隣町の私立高校(ここではO高校とする。)に通っている。制服のデザインも良く、コースもたくさんあるのでいろいろなやつがいてさぞ楽しいのだろう。その上校舎まできれいなのだ。
「まぁ、がんばれ。一輝君。」
と嫌みな上司のごとく言い残し。僕たちは電車に乗った。
 この電車への乗車がきっと後悔するであろう選択をしてしまうすべての始まりだった。
 いつも通り最後尾に乗車し、いつもなら右を向いて空いている席に座る。そこをその日だけは右を向いて電車の車内を眺める。そこで一人の少女に目がとまった。少女が下を向きスマホを眺める姿に妙に吸い込まれ、眺めてしまっていた。初めての感覚だった。
 これが僕の歯車が動き出した。いや、狂いだした瞬間だったのかもしれない。
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