求:回復術師 〜絶対見捨てない為に、僕が今できる事〜

猫鈴うみゃ

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第一章

[ 054 ] リーラヴァイパー戦

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「ロイエ! ハリルベルの方の大型へ重力魔法! こっちはオレが足止めする!」

 クルトさんの咄嗟の判断で、僕はハリルベルの方へ駆け寄り、ボスリーラヴァイパーに魔法をかける。

「ジオグランツ!」

 ズンッ!と、ボスリーラヴァイパーの地面が凹む。ジオグランツを最大に重くする事で、奴の体重は今二倍ほどになっている。が、それでもギリギリ抑えられている程度の拘束力しかない。

「ザントシルド!」

 クルトさんが、新たに現れたボスリーラヴァイパーへ土魔法練度★一の砂の盾を出現させ、入って来れないように入り口を封鎖する。

「ハリルベル! オレとロイエが抑えてる間に残りの小型を頼む!」
「うぷ……はい!」

 もう魔力が枯渇寸前のハリルベルは、身体に鞭打ち剣を握りしめると、奥にいた三匹のリーラヴァイパーへ斬りかかる。

 入り口のボスリーラヴァイパーは砂の盾をガジガジと齧っているが、滲み出た毒で徐々に溶け始めている。長くは持たないだろう。

「ハリルベル! 動けるのは君しかいない! まずはロイエの抑えてる大型を倒してくれ!」

「は、はい!」

 小型の攻撃パターンを把握したハリルベルは、危なげなく三匹の小型を倒すと、最後のブルーポーションを飲み干し、魔法を唱えた。

「ふぅ……アングリフ」

 火魔法練度★二であるアングリフは、自身の攻撃力を強化する。先ほどの牽制で放ったヴェルア・オルトの火力でさえ火力不足だと悟ったのだろう。硬い皮膚を持つボスリーラヴァイパーには、もうこの方法しかハリルベルには有効な攻撃手段は無かった。

「はぁあああああ!」

  僕の抑えてるボスリーラヴァイパーへ、ハリルベルが剣を振り上げた時、それは起こった。

「シャォアアアアア!」

 砂の盾に抑えられていた入り口のボスリーラヴァイパーが暴れ、砂の盾が破壊された。その勢いでクルトさんの腕に噛みつくと、ブンブンと振り回しこっちへ投げ飛ばしてきた。

「ぐはっ!」
「ク、クルトさん!」

 回復してあげたいが、ジオグランツの手を緩めるわけにはいかない。有効範囲からも動くわけにはいかない。ハリルベルが剣を下ろしてクルトさんに駆け寄ると、噛まれた左手から既に壊死が始まっていた。

「ぐ……!  ハリルベル! オレの腕を斬れ!」
「そんな……」
「早くしろ! 手遅れになる!」
「くっ! ぅぁあああああ!」

  ハリルベルは剣を振り下ろしクルトさんの左腕を切断した。切り離された腕は、壊死を続けて紫色になって朽ちた。

「ぐっ! ……はぁはぁ」

 クルトさんは、震える手でポーチからレッドポーションを取り出すが、ポーションは割れていた。

「 くそっ。ハリルベル……。オレが入り口の大型を抑えるから君たちは逃げろ……」
「ク、クルトさん……俺に考えがあります……」

「シャァアアアアアア!」

 ジオグランツの重力に慣れてきたのか、僕の抑えているボスリーラヴァイパーが立ちあがろうとしている。

 くそ! なんとかしないと入り口の奴がやってくる! 早くクルトさんを回復させないと! こんなやつに構ってる暇はないのに!

「……なら、それしか無いな」

 ボスリーラヴァイパーが暴れるせいで、二人の会話が聞こえなかった。入り口のボスリーラヴァイパーもこっちへ迫ってきている。

「ロイエ! 俺たちが入り口の大型をなんとか倒すから、君はその隙に逃げろ! 君の脚力なら一人で逃げられるはずだ!」
「ハリルベル?! ……何を!」

 僕の返事を待たずに、二人は作戦を開始してしまった。

 ハリルベルの持つ剣をクルトさんが受け取ると、クルトさんは最後の力を振り絞り、入り口で暴れてるボスリーラヴァイパーへ向かって駆け出した。

「クルトさん! そんな体で!」

 その隙に、ハリルベルは砂の兵士が使っていた剣を拾いクルトさんの後を追って、入り口へ駆け出した。

「シャラララララァ!」
「うぉおおおおお!」

 クルトさんは、正面から迫り来るボスリーラヴァイパーの尻尾攻撃をスライディングで回避すると、比較的柔らかい尻尾に剣を突き刺した。

「フェルスアルトファーラー・オルト!」

 ピッタリとしがみついたクルトさんごと、ボスリーラヴァイパーの尻尾から徐々に、砂や石が集まってくる。

 近距離が得意なクルトさんが放った練度★四の魔法は、メキメキとボスリーラヴァイパーをチョココロネのように包み込んだ。

「ジャ、ジャラララララァ?!」

 ボスリーラヴァイパーが暴れるが、オルトで強化された魔法は強固で、石は剥がれ落ちない。

「 ハリルベル! やれ!」

 クルトさんの叫ぶと、ハリルベルは剣をボスリーラヴァイパーの頭に突き刺し、魔法を唱えた。

「ヘルブランランツェ!」

 瞬間、ヴェルアとは比べ物にならない程の熱量を帯びた青い炎の槍が、石で固められたボスリーラヴァイパーを……クルトさんごと貫いた。
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