求:回復術師 〜絶対見捨てない為に、僕が今できる事〜

猫鈴うみゃ

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第二章

[ 085 ] 市長アルノマール

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「ナッシュに何かあったんですか?」
「昨日の夜のことだ。ナッシュが王国騎士団によって封鎖された。現在、クソジジイとナッシュの市長が参考人として事情聴取を受けている」
「なんで……」
「強力な情報提供があったにも関わらず、密告者も当の本人もいないからだろう。まぁ気にするな、あんなジジイをどうこうしようなんて連中では無い」

 これだ。最近感じる違和感。……市長の言い分だと王国騎士団は法に則って仕事をしているだけで、それほど悪い連中には聞こえない。それに僕が遭遇した黒髪の騎士も、そんなに悪い印象はなかった。

 しかし、リュカさんの話では回復術師で人体実験をしてるとの情報もあるし、リュカさんが嘘を言ってるとも思えない……。どちらが本当の彼らなんだ……。

「市長は、王国騎士団と仲が良いんですか?」
「市長だからな、街は国の下に存在する組織だぞ? あたいが知る騎士団は至って真面目な奴らだ。納得いかないなら自分で判断するんだな」

 市長の言い分はもっともだ。市長がいうには恐らく回復術師のことに関しては真偽不明。ただそれ以外の仕事となると、真っ当な騎士団だということだろう。

「お前の事情はある程度聞いてるが、お前これからどうするつもりだ?」

 ブリュレがいるから明確に言わないだけで、僕が回復術師であることは把握しているのか。となると、フォレストに回復術師が逃げたと偽情報を流したのは市長か。

「今日は宿を取ってあるのでフォレストに滞在して、明日にはここを出てヘクセライを目指そうと思います」
「なるほどな。揉め事が起きる前にこの街から去ってもらえるなら願ったりだ」
「ご迷惑はおかけしません」

 フンと鼻息を荒くすると、市長は「先ほどの働きの礼だ」と、僕らに金貨を一枚ずつ配ると仕事の邪魔だと追い出された。

「強烈な人だったね……」

 風船になった二人を連れながら市役所の中を歩いていると、ハリルベルが話せるくらい回復してきた。

「ロイエありがと……少し良くなってきた。それと思い出したよ。冒険者アルノマールと言えば、巨大なドラゴンを一人で倒したとか逸話が絶えない人だ。フォレストのギルドマスターになったと聞いていたけど、いつのまにか市長になっていたのか……」
「アルノマールさんが市長になったのは先月ですよ。ここにいるヘクセライの研究員から聞いた話だと、先月のモンスター騒動で前市長が死亡。その結果ギルドマスターだったアルノマールが市長へ。ギルドマスターの席にAランク冒険者のルーエさんが就任したとのことです」

 それでギルドでは、ガンツという僕に絡んできた人や受付のプリンさんまでもが、マスターではなく昔の名残でルーエさんと呼んでいたのか……。

「おーい、もう降ろしてくれー」

 顔面蒼白だったブリュレも、魔力が少し戻ってきたので、ジオグランツを解除して下ろしてあげた。

「ふぅ、話はよくわかんねぇけど、ヘクセライ行くなら俺も連れてってくれよ」
「どうしてですか?」
「ミア様がいるらしいんでな。会いに行きてぇのさ」

 そういえば、ミアは会った時からヘクセライを目指していると言っていたな……。迷子になったナッシュへ着いてしまったらしいけど。

「ロゼさんの馬車は、あくまでナッシュからフォレストへの貿易品を運ぶための物ですし、これ以上危険に晒すわけにはいきません」
「……あれ? リュカさん……ロゼさんは?」
「そういえば……いませんね。一緒に避難誘導をしていたんですが……」

 シルバービーの襲撃で騒ついている市役所市内を見回しても、それらしき人はどこにもいない。

 結局、樹上の街アストの中を手分けして探したが、最終リフトの時間になってもロゼさんは見つからなかった。
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