129 / 262
第三章
[ 125 ] 湿地帯
しおりを挟む
翌日朝早くファプロの武器屋に集合した僕らはユンガと合流して、ヘーレ洞窟を目指した。
「ヘーレ洞窟まではどれくらいなんですか?」
「んー、山なりに歩いたら三時間くらいだよ」
僕とシュテルンさん、ルヴィドにミルト、ユンガに受付嬢のラッセを加えた六人で向かうことになった。ユンガは店で待ってるように言ったけど、「おっさんに会えるチャンスに行かないなんて、そんな選択肢はねぇよ!」との事で強引についてきた。
ラッセに至っては、一応ギルドとしてはヘーレ洞窟のモンスター討伐依頼は断ってるとの事だったので、無断での立ち入りは良く無いと今朝ギルドは向かったら、マスターから「ガーハハハハ! 倒せるモンなら倒してくれるとありがてぇな!」と簡単に許可が降りた。ただ、心配だからとラッセについて行くように命令が下った。
「湿地帯など行きたくありませんが、マスターの命令とあれば仕方ありません。アンポンタン」
相変わらず口が悪い……。マスターの監視下から外れたからなのか、礼儀正しさもなくなってしまった。見た目は清楚系で綺麗な顔立ちなのに……。
ちなみに、ユンガ自体は水魔法練度★2らしいけど、あまり魔法には興味はなく、特に練度とかどうでも良いと言っていた。
「ところでファブロさんってどんな人なんですか?」
「どんな人? うーん、見た目は普通のおっさんだぜ?」
ユンガの普通のおっさんの基準がわからないから、なんとも言えないけど……普通のおっさんらしい。
「ヘーレ洞窟に向かう前に何か言ってなかった?」
「そうだな……。確か『石が俺を求めてる』って出て行ったかな……?」
ん? どこかで聞いたセリフだな。どこだったかな。
「そいえば、あの店の内装……懐かしさが……。あ!!」
思い出した。ナッシュのギルドだ。あそこと外装と内装がファブロの店は同じなんだ。確かマスターが武器屋の店主から借りたとか言ってたな……。で、店主は「石が俺を求めてる」ってどこかに行ったっきり帰ってこないとかなんとか……。
「あのファブロさんって昔ナッシュに住んでませんでした?」
「うーん、自分の過去のことはあんまり喋ってらない人だけど、リッカム料理が好きって言ってたかな」
リッカム? リッカム……。確かナルリッチさんの店のメニューにそんな料理があって、深い谷でしか育たないけど、自家栽培に成功したとか言ってたかもしれない。
「確かなナッシュに、リッカム料理を出す店があるので、ナッシュから来てそうですね」
「そうなんかー。今度聞いてみるか」
話しながら歩いていると、だんだん風景が変わってきた。まず地面がジメジメと水分を含むようになってきて、少し霧が出てきた。鳥の鳴き声も少なくなり、しーんとした静寂が訪れる。
「あれ、ラッセさんどうしました?」
「申し訳ございません。これ以上進みたくありません」
「どういう……」
「ジメジメが酷くなってきました。これ以上は服が汚れるから無理です。鈍感」
綺麗好きみたいだし、でもマスターからはラッセさんが監視役としてって話なので、着いてきてもらわないと……。
「ジオグランツ」
「きゃあ! な、なにを! この変態!」
「ご、ごごめんなさい!」
ラッセさんを浮かせて引っ張っていけば、洋服が汚れることもないと思って浮かせたら、スカートが捲り上がってしまった。
「ロイエ様、見ましたわね? どすけべ」
「いや、あの……見たというか見えちゃったというか……すみません」
「後日、責任を取って頂きますから、覚悟してください。バカ」
「はい……」
いくら請求されるのか、手持ちのお金で足りるかな……。
「ロイエ君待ってください」
浮いたラッセさんに紐に握ってもらい歩いていると、ルヴィドさんからストップがかかった。
「この先の道、あそこから地面の色が違います。毒の可能性がありますね」
「毒?」
見ると湿地帯が紫色に染まっている。見るからに毒ですと言わんばかりの色で、誰でも入るのを躊躇する色だ。
「あれ? 昔俺がきた時はこんな色じゃなかったぜ?」
「そうですね。ここは普通の湿地帯のはずですが……」
ユンガもシュテルンの記憶でもここは毒沼ではないらしい。しかし実際この色は毒にしか見えない。
「うーん、本来なら湿地帯を突っ切るのが早いけど、山を迂回する?」
シュテルンの提案はもっともだが、僕らにはあまり時間がない。
「バルカン村に向かった時の方法で行きますか」
「あ、そうですね」
その提案で、近くの木を切るとユンガが持っていた道具で繋いでもらい木の絨毯を作ってもらった。
「ヘーレ洞窟まではどれくらいなんですか?」
「んー、山なりに歩いたら三時間くらいだよ」
僕とシュテルンさん、ルヴィドにミルト、ユンガに受付嬢のラッセを加えた六人で向かうことになった。ユンガは店で待ってるように言ったけど、「おっさんに会えるチャンスに行かないなんて、そんな選択肢はねぇよ!」との事で強引についてきた。
ラッセに至っては、一応ギルドとしてはヘーレ洞窟のモンスター討伐依頼は断ってるとの事だったので、無断での立ち入りは良く無いと今朝ギルドは向かったら、マスターから「ガーハハハハ! 倒せるモンなら倒してくれるとありがてぇな!」と簡単に許可が降りた。ただ、心配だからとラッセについて行くように命令が下った。
「湿地帯など行きたくありませんが、マスターの命令とあれば仕方ありません。アンポンタン」
相変わらず口が悪い……。マスターの監視下から外れたからなのか、礼儀正しさもなくなってしまった。見た目は清楚系で綺麗な顔立ちなのに……。
ちなみに、ユンガ自体は水魔法練度★2らしいけど、あまり魔法には興味はなく、特に練度とかどうでも良いと言っていた。
「ところでファブロさんってどんな人なんですか?」
「どんな人? うーん、見た目は普通のおっさんだぜ?」
ユンガの普通のおっさんの基準がわからないから、なんとも言えないけど……普通のおっさんらしい。
「ヘーレ洞窟に向かう前に何か言ってなかった?」
「そうだな……。確か『石が俺を求めてる』って出て行ったかな……?」
ん? どこかで聞いたセリフだな。どこだったかな。
「そいえば、あの店の内装……懐かしさが……。あ!!」
思い出した。ナッシュのギルドだ。あそこと外装と内装がファブロの店は同じなんだ。確かマスターが武器屋の店主から借りたとか言ってたな……。で、店主は「石が俺を求めてる」ってどこかに行ったっきり帰ってこないとかなんとか……。
「あのファブロさんって昔ナッシュに住んでませんでした?」
「うーん、自分の過去のことはあんまり喋ってらない人だけど、リッカム料理が好きって言ってたかな」
リッカム? リッカム……。確かナルリッチさんの店のメニューにそんな料理があって、深い谷でしか育たないけど、自家栽培に成功したとか言ってたかもしれない。
「確かなナッシュに、リッカム料理を出す店があるので、ナッシュから来てそうですね」
「そうなんかー。今度聞いてみるか」
話しながら歩いていると、だんだん風景が変わってきた。まず地面がジメジメと水分を含むようになってきて、少し霧が出てきた。鳥の鳴き声も少なくなり、しーんとした静寂が訪れる。
「あれ、ラッセさんどうしました?」
「申し訳ございません。これ以上進みたくありません」
「どういう……」
「ジメジメが酷くなってきました。これ以上は服が汚れるから無理です。鈍感」
綺麗好きみたいだし、でもマスターからはラッセさんが監視役としてって話なので、着いてきてもらわないと……。
「ジオグランツ」
「きゃあ! な、なにを! この変態!」
「ご、ごごめんなさい!」
ラッセさんを浮かせて引っ張っていけば、洋服が汚れることもないと思って浮かせたら、スカートが捲り上がってしまった。
「ロイエ様、見ましたわね? どすけべ」
「いや、あの……見たというか見えちゃったというか……すみません」
「後日、責任を取って頂きますから、覚悟してください。バカ」
「はい……」
いくら請求されるのか、手持ちのお金で足りるかな……。
「ロイエ君待ってください」
浮いたラッセさんに紐に握ってもらい歩いていると、ルヴィドさんからストップがかかった。
「この先の道、あそこから地面の色が違います。毒の可能性がありますね」
「毒?」
見ると湿地帯が紫色に染まっている。見るからに毒ですと言わんばかりの色で、誰でも入るのを躊躇する色だ。
「あれ? 昔俺がきた時はこんな色じゃなかったぜ?」
「そうですね。ここは普通の湿地帯のはずですが……」
ユンガもシュテルンの記憶でもここは毒沼ではないらしい。しかし実際この色は毒にしか見えない。
「うーん、本来なら湿地帯を突っ切るのが早いけど、山を迂回する?」
シュテルンの提案はもっともだが、僕らにはあまり時間がない。
「バルカン村に向かった時の方法で行きますか」
「あ、そうですね」
その提案で、近くの木を切るとユンガが持っていた道具で繋いでもらい木の絨毯を作ってもらった。
0
あなたにおすすめの小説
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる