求:回復術師 〜絶対見捨てない為に、僕が今できる事〜

猫鈴うみゃ

文字の大きさ
133 / 262
第三章

[ 129 ] 洞窟の異変

しおりを挟む
「うわー! 見てくれよー! 少し掘るだけで鉱石がこんなに!」

 ユンガは鉱石が掘れることに歓喜していた。昔は鍛治師が大勢押し寄せたという洞窟だ。現在は立ち入り禁止になっているとはいえ、やはりここに眠る資源は壮大なモノらしい。

「持ち帰り禁止だぞ」
「ちぇー」
「ほかの鍛治師には立ち入り禁止にしているのに、君だけに許可は出せない」

 そりゃそうだ。みんなが入りたいのを我慢してるのに……。まぁファブロさんは我慢しないで無断侵入したみたいだけど……。

 さらに歩みを進めると、どんどんと暑くなってきた。

「暑いですね……」
「そうだね。湿地帯はひんやりしていたのに、洞窟の奥は暑いな」
「あぢー」

 ラッセさんは一人だけ涼しい顔をしている。我慢強いのか、その洋服に特殊な効果でもあるのか……。

「ラッセさん、俺たちにもシェンバウムをお願いします」
「シェンバウムってなんですか?」
「氷魔法練度★2の魔法だよ。体に氷の結晶を纏うことでこういった暑さを無効化出来るんだ」
「へぇーって、それは便利ですね」
「仕方ありませんね。シェンバウム・オルト・ヴェルト」

 キラキラとした結晶が、僕らの周りを回り始めた。

「あ、全然違う……すごく涼しくなりました!」
「だろ?」
「あとで請求しますから」
「……はい」

 暑さが和らぐと進む速度も全然違った。僕たちはレプティルクックを処理しつつ、さらに進むと道幅が広がり少し開けた場所に出た。

「左右からの奇襲に注意しましょう」

 注意喚起しながらランタンを掲げると、広場の真ん中には非活性化したフィクスブルートが佇んでいた。非活性化しているということは既に魔力を奪われているのか。

「ナッシュにあったやつより少し大きいね」
「シュテルンさん! あれ!」

 フィクスブルートの奥に白銀の鎧を着た、二つの白骨死体を見つけた。

「なぜこんなところに王国騎士が……」
「階級や所属はどうですか?」
「無いな……。本来はこの位置に記載されているはずだが……」

 十中八九、星食いだろう。フィクスブルートの魔力を吸ったはいいけど、レプティルクックの群れにやられた可能性があるな。

「あ、こっちは書いてある。調査班 リーグル」

 やっぱり調査班か。星食いは何故か魔力を抜き取る際に調査班を連れてくる。何か意味があるのだろうけど。

「何か他に落ちてないですかね?」
「なにか? うーん、特になさそうだけど」

 魔吸石が落ちてるはずだけど、確かに何も無い……。誰かが持ち去ったのだろか?誰が?

「ラッセさん、後でこの事はマスターと騎士団は報告をお願いします」
「了解しました。兄にも伝えておきましょう」

 フィクスブルートを通り過ぎ、さらに進むと今度はだんだんと道が狭くなってきた。

 今まで通ってきた道は自然にできたか、はるか昔に誰かが掘ったような道だっだが、ここからは最近に掘られたような荒さがある。

「シュテルンさんこれって」
「ああ、ここ半年かそこらで掘った感じだね」
「待ってください。あれは?」

 見ると道端には無数の魔石が落ちている。それも一個や二個ではない。数十単位で落ちている。しかも綺麗に壁に沿ってだ。

「シュテルンさん、この壁に無数にある釘を刺した跡みたいなのは、なんでしょうか?」
「なんだろうね。穴の下に魔石が落ちてるけど……。モンスターをこの壁に突き……刺したのかな」

 わからないことを考えても仕方ない。さらに洞窟を一時間ほど進むと、魔石は増え……足の踏み場すら無いほどだった。

「異常ですよ……。仮にこれ全部レプティルクックだとしたら、マスターが逃げ出すもの頷けますし、練度★6パーティが絶滅したのもわかります」
「そうだね……この量は無理だ。軽く千は超えてるぞ……」

 しばらく進むと、片足だけ取られたレプティルクックが、半死状態で壁に羽を打ちつけたれているのを見つけた。

「これって……」
「誰かが脚を食べた?」

 殺すと魔石になってしまうモンスターを、あえて半殺しにして死なない程度にして食べる……。狂気の沙汰だ……。

「……カンカン」

 その時、洞窟の奥の方から、何かを叩くような音が聞こえた。

「鍛治の音だ!」

 手掘りで掘られた洞窟の先に進むと、今までで一番広ち空間が現れた。マグマが流れる明るい部屋の中で、何かを必死に叩く人影が見えた。

「おっさーーん!」
「ん? 誰じゃ?」

 振り返ったのは、熱した剣を叩く……毛むくじゃらのおじさんだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...