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第三章
[ 140 ] 幽霊屋敷
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「地図によるとここですね」
「本で読んだ通りの雰囲気だな……素晴らしい」
僕らが着いた頃、完全に日は落ちて西側の外れということもあり人通りもなく。手入れされていない草木が伸びきっており、木は枯れてフクロウは鳴く……。完璧なシチュエーションだった。
「……アダサーベ「ちょっとおおーー!」ン」
ミアさんに繋がった紐を思いっきり引っ張った。
バチバチ……。ゴォオオオン!! ドガーン!
轟音と共に放たれた雷の閃光が、館の屋根の近くの樹木に着弾し爆発し燃えた。
「なんだ?」
「なんだ? じゃないですよ! 館は破壊しないって約束じゃないですか!」
「……ふむ。そうだったか?」
店長に館を破壊するのだけは勘弁してくれと、泣いて頼まれた。僕以外止める人がいないから全力でミアの暴走を止めるしかない。
「あの中に超巨大幽霊がいるんだぞ? 外から狙った方が早いだろう」
「落ち着いて聞いてくださいね? ミアさんが貸してくれた本は少しだけ読みましたが、あれは王都にある没落貴族の館の話ですよね。ここはデザントなので、超巨大幽霊はいないと思います」
少し考え込むと、ミアはハッとした顔をした。実際にはほとんど表情は変わっていないが、僕にはわかった。
「つまり、ここには超巨大幽霊がいないのか?」
「え、ええ......話を聞く限りいないかなと」
「いないなら用はない。俺は帰る」
「いやいやいや、いないかわかりませんけど、店長が踏み入れると強い突風が吹き荒れたって言ってたじゃないですか」
「そうだな」
「ここには新種の小さな幽霊がいるかもしれませんし、姿を見る前に消し飛ばしたら勿体無いですよ」
「……なるほど、なら入ってみるか」
「はい……」
疲れる……。この人と一緒にいるといらないフォローが多い……。僕はミアさんに繋がった紐に引っ張られて、館の入り口へと向かった。
「確かに何か魔力を感じますね……」
「ああ、確実に何かいるな」
鍵を使って玄関のドアを開けると、カチャと簡単に開いた。魔力ランタンに火を灯して、ドア越しに室内を見た感じだと何年も使っていないのか埃が凄そうだ……。
「よし、行くぞ」
「あ、ちょ、待っ」
呼び止めた時には既に時遅し、ミアを先頭に屋敷の中に引っ張られるように入ってしまった。
「……?」
「突風が吹き荒れると聞いたが、こないぞ」
「ですね……」
やはり店長の見間違いだったのだろうか? しかし、先ほどは館の中から魔力反応を感じたのは確かだ。
「ふむ、見た限り確かに超巨大幽霊はいないみたいだな……」
ミアはガックリと肩を落とし、見た目でわかるほど落ち込んだ。やる気なくなって館ごと破壊するのを、阻止しなければ……。
「ミアさん、屋敷は二階建てですので、まずは一階から見てみましょうか」
「ここで待ってるから探して来い」
「え……」
「調査はお前の仕事だと言ったはずだ。幽霊が出たら絶対に殺さずに俺に知らせろ」
確かに調査などは僕がやるって話だったけど……。仕方ないか、あちこち壊されるよりかはマシだ。
「わかりました。では何かいたら呼びますね」
残しても連れてきても不安だが、ミアをエントランスに残すと僕は二階は後にして、まずは一階の部屋を端から調べていくことにした。
キッチン、客室、風呂、埃が舞わないようにそっと歩きながら調べたが、特にこれと言って怪しいものはない。一階最後の部屋、書斎へ足を踏み入れた時だった。
ガガガガガー!
調べようと部屋に入ったら、突然棚が滑って動いた……。
「え……。ポ、ポルターガイスト?」
昔、テレビで見たことがある。幽霊が使う超能力の一つだ。物体を浮かせたり動かしたりする能力だが、まさか本当に幽霊が?
いやいや、そんなバカな……。家が古いから傾いてたんだろう……。僕はそっと部屋を出てエントランスへ戻ることにした。
エントランスで本を読んでるミアさんを確認して、少し安堵すると、二階の部屋を確認するために螺旋階段を上がった。上がりきる瞬間、いきなり突風が吹いて飛ばされた。
「うわ! ジオグランツ!」
咄嗟に重力を操って着地したが、いまのは店長が言っていた突風?!明らかに敵意のある風だった。二階に誰かいるのか?!
「ミアさん! 二階に誰かいます!」
「なんだと?! 幽霊か?!」
嬉しそうなミアさんが脅威の身体能力で柱を掴み、棚を蹴り二階へ飛び上がると、今度はミアさんに向けて突風が吹いた。しかし、これまた絶妙なバランス能力で着地。
「っと……」
「二階に誰かいました?」
「いや、誰もいなかった」
「え、じゃあ……あの風は誰が?!」
見えない敵に困惑していると、突然僕とミアさんの体を何かが締め付けた。
「な!? 金縛り?!」
いや、これは食らったことがある!
「……アレストルムだな」
「風魔法の……」
「ふん!」
ミアさんが気合いで風の拘束魔法を振り解いた。なんてでたらめな人だ……。どうやって振り解いたんだ?!
「そこだな……。アダサーベン」
唱えた瞬間、雷の閃光が二階へと飛び、館に風穴を開けた。
「避けたか……ならば逃げ場など無くしてれる。クラウンクロイツ・オルト「やめてピヨー!」
「ん? 待ってください! ミアさん! 何か今、声が……」
ミアさんが魔法の発動を止めると同時に、パタパタと小鳥が飛んで二階の手すりに降り立った。
「降参ピヨ。家を壊さないで欲しいピヨ」
小鳥が……喋ってる!?
「本で読んだ通りの雰囲気だな……素晴らしい」
僕らが着いた頃、完全に日は落ちて西側の外れということもあり人通りもなく。手入れされていない草木が伸びきっており、木は枯れてフクロウは鳴く……。完璧なシチュエーションだった。
「……アダサーベ「ちょっとおおーー!」ン」
ミアさんに繋がった紐を思いっきり引っ張った。
バチバチ……。ゴォオオオン!! ドガーン!
轟音と共に放たれた雷の閃光が、館の屋根の近くの樹木に着弾し爆発し燃えた。
「なんだ?」
「なんだ? じゃないですよ! 館は破壊しないって約束じゃないですか!」
「……ふむ。そうだったか?」
店長に館を破壊するのだけは勘弁してくれと、泣いて頼まれた。僕以外止める人がいないから全力でミアの暴走を止めるしかない。
「あの中に超巨大幽霊がいるんだぞ? 外から狙った方が早いだろう」
「落ち着いて聞いてくださいね? ミアさんが貸してくれた本は少しだけ読みましたが、あれは王都にある没落貴族の館の話ですよね。ここはデザントなので、超巨大幽霊はいないと思います」
少し考え込むと、ミアはハッとした顔をした。実際にはほとんど表情は変わっていないが、僕にはわかった。
「つまり、ここには超巨大幽霊がいないのか?」
「え、ええ......話を聞く限りいないかなと」
「いないなら用はない。俺は帰る」
「いやいやいや、いないかわかりませんけど、店長が踏み入れると強い突風が吹き荒れたって言ってたじゃないですか」
「そうだな」
「ここには新種の小さな幽霊がいるかもしれませんし、姿を見る前に消し飛ばしたら勿体無いですよ」
「……なるほど、なら入ってみるか」
「はい……」
疲れる……。この人と一緒にいるといらないフォローが多い……。僕はミアさんに繋がった紐に引っ張られて、館の入り口へと向かった。
「確かに何か魔力を感じますね……」
「ああ、確実に何かいるな」
鍵を使って玄関のドアを開けると、カチャと簡単に開いた。魔力ランタンに火を灯して、ドア越しに室内を見た感じだと何年も使っていないのか埃が凄そうだ……。
「よし、行くぞ」
「あ、ちょ、待っ」
呼び止めた時には既に時遅し、ミアを先頭に屋敷の中に引っ張られるように入ってしまった。
「……?」
「突風が吹き荒れると聞いたが、こないぞ」
「ですね……」
やはり店長の見間違いだったのだろうか? しかし、先ほどは館の中から魔力反応を感じたのは確かだ。
「ふむ、見た限り確かに超巨大幽霊はいないみたいだな……」
ミアはガックリと肩を落とし、見た目でわかるほど落ち込んだ。やる気なくなって館ごと破壊するのを、阻止しなければ……。
「ミアさん、屋敷は二階建てですので、まずは一階から見てみましょうか」
「ここで待ってるから探して来い」
「え……」
「調査はお前の仕事だと言ったはずだ。幽霊が出たら絶対に殺さずに俺に知らせろ」
確かに調査などは僕がやるって話だったけど……。仕方ないか、あちこち壊されるよりかはマシだ。
「わかりました。では何かいたら呼びますね」
残しても連れてきても不安だが、ミアをエントランスに残すと僕は二階は後にして、まずは一階の部屋を端から調べていくことにした。
キッチン、客室、風呂、埃が舞わないようにそっと歩きながら調べたが、特にこれと言って怪しいものはない。一階最後の部屋、書斎へ足を踏み入れた時だった。
ガガガガガー!
調べようと部屋に入ったら、突然棚が滑って動いた……。
「え……。ポ、ポルターガイスト?」
昔、テレビで見たことがある。幽霊が使う超能力の一つだ。物体を浮かせたり動かしたりする能力だが、まさか本当に幽霊が?
いやいや、そんなバカな……。家が古いから傾いてたんだろう……。僕はそっと部屋を出てエントランスへ戻ることにした。
エントランスで本を読んでるミアさんを確認して、少し安堵すると、二階の部屋を確認するために螺旋階段を上がった。上がりきる瞬間、いきなり突風が吹いて飛ばされた。
「うわ! ジオグランツ!」
咄嗟に重力を操って着地したが、いまのは店長が言っていた突風?!明らかに敵意のある風だった。二階に誰かいるのか?!
「ミアさん! 二階に誰かいます!」
「なんだと?! 幽霊か?!」
嬉しそうなミアさんが脅威の身体能力で柱を掴み、棚を蹴り二階へ飛び上がると、今度はミアさんに向けて突風が吹いた。しかし、これまた絶妙なバランス能力で着地。
「っと……」
「二階に誰かいました?」
「いや、誰もいなかった」
「え、じゃあ……あの風は誰が?!」
見えない敵に困惑していると、突然僕とミアさんの体を何かが締め付けた。
「な!? 金縛り?!」
いや、これは食らったことがある!
「……アレストルムだな」
「風魔法の……」
「ふん!」
ミアさんが気合いで風の拘束魔法を振り解いた。なんてでたらめな人だ……。どうやって振り解いたんだ?!
「そこだな……。アダサーベン」
唱えた瞬間、雷の閃光が二階へと飛び、館に風穴を開けた。
「避けたか……ならば逃げ場など無くしてれる。クラウンクロイツ・オルト「やめてピヨー!」
「ん? 待ってください! ミアさん! 何か今、声が……」
ミアさんが魔法の発動を止めると同時に、パタパタと小鳥が飛んで二階の手すりに降り立った。
「降参ピヨ。家を壊さないで欲しいピヨ」
小鳥が……喋ってる!?
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