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第三章
[ 144 ] ギルドカード更新
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「では、カードをお預かりします」
「あ……あああ、あの!」
「なにか?」
「え、いやあの……」
ダメだ。突っ込めば墓穴を掘るだけだ。それに、僕が回復術師だとわかったところで、騎士団に突き出してもアウスさんなら揉み消してくれる可能性が高い。いやアウスさん以外に情報が渡ったらまずいのか……。
ラッセさんが僕のギルドカードを道具にセットして、なにやらガシャコンしている。出来上がったカードを見られる前に、奪い取ればいいのか?どうしよう。
「あの、ロイエさん」
「は、はい……」
下を向いて作業をしていたらラッセさんが、少し小声で話しかけてきた。顔が見えない分、余計に怖い。いやいつも無表情だけど……。
「大丈夫です。兄から聞いていますから」
「え……」
それってつまり……助かった? 兄からと言うことは、僕が回復術師だと彼経由で元々知っていたのか……。
「はい、こちらが更新したギルドカードです。お返しします」
「ど、どうも……」
ランク:E
名前:ロイエ
性別:男
属性:重力、短距離系、練度★三、適正★八
発行:ナッシュギルド アテル・ロイテ
ランク以外は変わってない。回復魔法についても追記されてない。よかった。ほっと胸を撫で下ろした。
「あれ? 君も重力魔法使いなの?!」
「え? ええ」
後ろから、先ほどの冒険者の女の子が僕のギルドカードを覗き込んできた。ぐいっと肩を掴まれて覗き込まれたからか、女の子特有のふわっと良い香りが鼻をくすぐり、ドキッとした。
「へぇ、同じ街に二人も重力魔法使いがいるなんて珍しいわね」
「そうなんですか?」
「そりゃそうよー! 重力魔法ってのは人工の1%くらいしかいないんだからー! レアよレア!」
人工の1%だと結構いそうだけど、確かにあまり見ないな。地域や性別、年齢別に属性による分布などを調べたら面白いかもしれないと、ふと思った。
「で! あんたランクEなら話は早いわ!私とこの依頼を一緒にやりましょう! 本当は土魔法使いがベストなんだけど、まぁ贅沢は言ってられないわ」
「そう、ですね。希少鉱石の採取だと確かに土魔法使いがいた方が早いですね」
「いないもんはしかたないわ! ラッセ! 二人で受けるわ! 報酬は半分よ! このあとすぐ出発するわ!」
やるともなんとも言ってないのに、受けることも報酬も出発時間まで全部決まってしまった。悪気はないんだろうけど、はちゃめちゃな人だ。
「ロイエさん、良いんですか?」
「……そう、ですね。今日はこのあと予定ないので大丈夫ですよ。砂漠都市だけあってずっと晴れてますし」
「よし! 決まりね!」
とんとん拍子に話が進み、ラッセさんが依頼の受付手続きをしてくれた。どうやら依頼主は東側の武器屋街のとある店の鍛治師らしい。
「東側の武器屋『シュタール』の鍛治職人、ミネルさんからの依頼です。依頼内容に変更がないかの確認と、ギルドカードの提示を依頼主はお願いします」
ラッセさんに東側の地図を見せてもらい、大まかの場所がわかった。てっきりファブロさんが出した依頼かと思ったけど、どうやら違うようだ。
「よし! 必要な情報は集めたわね! 行くわよー!」
「はい、行きましょうか」
ギルドを出て東側は向かうと、昼過ぎな事もあり街が一番賑わっていて、人通りも多い。
「ところでその肩の鳥は何? 飼ってるの?」
「ええ、懐かれているというか、憑かれているというか……」
「名前は?」
「ピヨです」
「ピヨ」
僕の肩に留まってるピヨが、羽を広げて会釈した。
おい、普通の鳥はそんなことしないし、それ何を言われたかわかってる反応になっちゃうじゃないか……。
「か、可愛いー!」
「ありがとピヨ」
「え? ……今、喋った? この子」
「あ、いえ、僕が口真似で……あ、ありがとピヨ」
「何バカ言ってんのよ。この鳥……、モンスターかもしれないわ」
「違うピヨー。ピヨはモンスターじゃないピヨー!」
「完全に喋ってるじゃないの!」
喋りながらパタパタと僕の頭の上で飛び回るピヨに、もう隠し立てする事は不可能だった。
「あ……あああ、あの!」
「なにか?」
「え、いやあの……」
ダメだ。突っ込めば墓穴を掘るだけだ。それに、僕が回復術師だとわかったところで、騎士団に突き出してもアウスさんなら揉み消してくれる可能性が高い。いやアウスさん以外に情報が渡ったらまずいのか……。
ラッセさんが僕のギルドカードを道具にセットして、なにやらガシャコンしている。出来上がったカードを見られる前に、奪い取ればいいのか?どうしよう。
「あの、ロイエさん」
「は、はい……」
下を向いて作業をしていたらラッセさんが、少し小声で話しかけてきた。顔が見えない分、余計に怖い。いやいつも無表情だけど……。
「大丈夫です。兄から聞いていますから」
「え……」
それってつまり……助かった? 兄からと言うことは、僕が回復術師だと彼経由で元々知っていたのか……。
「はい、こちらが更新したギルドカードです。お返しします」
「ど、どうも……」
ランク:E
名前:ロイエ
性別:男
属性:重力、短距離系、練度★三、適正★八
発行:ナッシュギルド アテル・ロイテ
ランク以外は変わってない。回復魔法についても追記されてない。よかった。ほっと胸を撫で下ろした。
「あれ? 君も重力魔法使いなの?!」
「え? ええ」
後ろから、先ほどの冒険者の女の子が僕のギルドカードを覗き込んできた。ぐいっと肩を掴まれて覗き込まれたからか、女の子特有のふわっと良い香りが鼻をくすぐり、ドキッとした。
「へぇ、同じ街に二人も重力魔法使いがいるなんて珍しいわね」
「そうなんですか?」
「そりゃそうよー! 重力魔法ってのは人工の1%くらいしかいないんだからー! レアよレア!」
人工の1%だと結構いそうだけど、確かにあまり見ないな。地域や性別、年齢別に属性による分布などを調べたら面白いかもしれないと、ふと思った。
「で! あんたランクEなら話は早いわ!私とこの依頼を一緒にやりましょう! 本当は土魔法使いがベストなんだけど、まぁ贅沢は言ってられないわ」
「そう、ですね。希少鉱石の採取だと確かに土魔法使いがいた方が早いですね」
「いないもんはしかたないわ! ラッセ! 二人で受けるわ! 報酬は半分よ! このあとすぐ出発するわ!」
やるともなんとも言ってないのに、受けることも報酬も出発時間まで全部決まってしまった。悪気はないんだろうけど、はちゃめちゃな人だ。
「ロイエさん、良いんですか?」
「……そう、ですね。今日はこのあと予定ないので大丈夫ですよ。砂漠都市だけあってずっと晴れてますし」
「よし! 決まりね!」
とんとん拍子に話が進み、ラッセさんが依頼の受付手続きをしてくれた。どうやら依頼主は東側の武器屋街のとある店の鍛治師らしい。
「東側の武器屋『シュタール』の鍛治職人、ミネルさんからの依頼です。依頼内容に変更がないかの確認と、ギルドカードの提示を依頼主はお願いします」
ラッセさんに東側の地図を見せてもらい、大まかの場所がわかった。てっきりファブロさんが出した依頼かと思ったけど、どうやら違うようだ。
「よし! 必要な情報は集めたわね! 行くわよー!」
「はい、行きましょうか」
ギルドを出て東側は向かうと、昼過ぎな事もあり街が一番賑わっていて、人通りも多い。
「ところでその肩の鳥は何? 飼ってるの?」
「ええ、懐かれているというか、憑かれているというか……」
「名前は?」
「ピヨです」
「ピヨ」
僕の肩に留まってるピヨが、羽を広げて会釈した。
おい、普通の鳥はそんなことしないし、それ何を言われたかわかってる反応になっちゃうじゃないか……。
「か、可愛いー!」
「ありがとピヨ」
「え? ……今、喋った? この子」
「あ、いえ、僕が口真似で……あ、ありがとピヨ」
「何バカ言ってんのよ。この鳥……、モンスターかもしれないわ」
「違うピヨー。ピヨはモンスターじゃないピヨー!」
「完全に喋ってるじゃないの!」
喋りながらパタパタと僕の頭の上で飛び回るピヨに、もう隠し立てする事は不可能だった。
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