求:回復術師 〜絶対見捨てない為に、僕が今できる事〜

猫鈴うみゃ

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第三章

[ 157 ] 二人の決闘

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 何がどうしてこうなったのか、レオラとロゼさんが決闘することになってしまった。いや僕が悪いんだけど。

「罪な男ですね。ロイエさん」
「ラッセさん、二人を止められませんか?」
「無理ですね、恋する乙女は無敵なのですよ」
「でも……」
「怪我してもロイエさんが治せるから良いじゃありませんか」

 それはそうだけど、そもそも二人に決闘なんてして欲しくない……。

「レオラさん! 負けた方が身を引く! いいですわね?!」
「それはロイエが決めることだよ。でも、ロゼさんが負けたら妄想婚約の話は破棄してもらうから」

 ギルドの裏にある訓練場に移動して、二人の決闘が行われた。ブリュレもラッセさんも乗る気で止める人はいない。

「あの! 一度話し合ってみては!」
「ロイエは黙ってて、これは女同士の戦いなんだから」
「ロイエさんのファーストキスの仇は打ちます!」

 ロゼさんが羽織っていた上着を脱ぐと、拳には魔石を嵌め込んだ籠手のようなものを装備しており、よく見ると履いている靴にも魔石が嵌められている。ロゼさんは元々魔石の研究者だ。ただの飾りとは思えない。

「ずいぶん物々しい装備してるのね」
「見せかけだけではないことをお見せします」
「よーし、ロイエがいるから思いっきりやらせてもらうよ」

 いつのまにか審判として二人の間に立っているブリュレが開始の合図を送った。

「それでは! どちらかが負けを認めたら終了! 始め!」

「速攻で終わらせるよ! ジオグランツ!」

 まず仕掛けたのはレオラだ。遠距離系の重力魔法使いである彼女にとって、開始時のお互いの立ち位置が既に適切な間合いだ。

 レプティルクックの時のように、重力で刺して拳で叩くレオラの必勝戦法だったが、予想外のことが起きた。

「え……」
「確かに、速攻で終わってしまいますわよ」

 重力魔法に捕まる前に、ロゼさんがありえない速度で移動してレオラの背後を取った。

「くっ! ジオフォルテ!」

 繰り出されるロゼさんの右ストレートを、自身を軽くすることで咄嗟に避けたレオラ。その表情は困惑一色だ。

「あ、あなた、氷魔法使いよね。今の移動速度はフリューネル並みだったわよ?!」
「ふふ、油断していると簡単に終わってしまいますわよ!」

 ロゼさんが左の拳を地面に突き立てると、レオラの真下から地面が盛り上がり砂の盾が出現した。予想外の攻撃に反応が遅れて咄嗟に回避するもレオラは右腕を負傷した。

「これは……ザントシルド!?」

 直撃を免れたのはレプティルクックとの戦闘経験がレオラを救ったからだ。でなければ今の不意打ちで勝負は付いていただろう。

 しかし、さっきからフリューネルにザントシルドと、氷魔法使いのはずのロゼさんがどうやって……。思考を巡らす暇もなく、レオラがザントシルドの攻撃を受けている間にロゼさんは間合いを詰めていた。

「これで終わりですわ!」

 ロゼさんが繰り出す右ストレート。

「レオラ! その拳を受けちゃダメだ!」

 借金ナックルで受けるつもりだったレオラは、僕の声に反応して咄嗟に回避へ切り替えたが、間に合わず右肩に攻撃を受けてしまった。

 その瞬間、ロゼさんの右手からはヴェルアの炎が現れてレオラの右手を焼いた。

「くああぁああ!」

 フリューネルによる移動速度、拳から繰り出されるザントシルドとヴェルア。ミルトじゃないんだ。ロゼさんが氷以外の魔法を使えるはずがない……。何かカラクリが……。

「さぁ! 降参してくださいませ!」
「はぁはぁ。ぜ……絶対嫌だ! ジオグランツ!」

 詠唱を聞いて、ロゼさんが再度フリューネルで高速移動し先ほどと同じようにレオラの背後へ移動した……が、その動きを読んでいたレオラは、詠唱に合わせて距離を取るとすぐに魔法を発動させた。

「ジオグランツ・ツヴァイ・ジオフォルテ!」
「ぅ!!」

 レオラ最大の魔法が、見事にロゼさんを捕らえた。

「ぐっ!! そんな、連続詠唱は出来ない……はず、くぅ」
「ふぅ……。ああ、さっきの? 詠唱してないよ。重力魔法は見えないからね。はったりも武器なんだ」
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