求:回復術師 〜絶対見捨てない為に、僕が今できる事〜

猫鈴うみゃ

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第四章

[ 230 ] ヘクセライ入り

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「ここがヘクセライか……」
 
 ナッシュでミアさんからその存在を聞いてから、1年近くの年月が経った。ずっと来たいと思っていてやっと来れた……。

 リュカさんの協力で船を港に付けると、フリーレン商会に雇われた冒険者として街へ入った。

「リュカさん、ヘクセライの案内を頼みたいんですけど」
「いいですよ」

 もし戦闘になったら地形を知らない僕らは圧倒的に不利だ。街の周りの情報なども知っておきたい。

「案内するのは、ロイエさんと……あれ?ロゼさんは?」
「ああ、彼女はヘクセライには降りないんです」
「そうですか。となると、えーと。そちらのお二人は」

 リュカさんが、船から降りようと支度をしている店長とテトラさんへ視線を向けると、それに気付いた2人は逃げ出した。

「あ、私? 私はテキトーに遊んでくるねー!」
「料理の匂いが俺を呼んでるぜー!」

 我が道をゆく、勝手にどこかへ走り出してしまった。2人の波長は似てるのかもしれない。

「えっと、ロイエさん、ハリルベルさんは?」
「え? あ、うん。誰それ」
「いやいやいや! 誰それじゃないですよ! ハリルベルさんですよ!」
「あー、ハリルベルね。えーと、ちょっと喧嘩してて顔を合わせたくないって言われちゃってね。別行動でお願いします……」

 言い訳が苦し過ぎる……。でもリュカさんとシルフィを合わせるわけにはいかない。なんとかハリルベルと合流して、王都へ向かわないと……。

 その為にはここから王都までの移動手段や距離の確認、それと王都のギルドが頼れないから王都で潜伏するために協力者の確保が必須だ。

「こっそり話せる場所ってあります?」
「それなら私の研究室へ行きましょうか」

 リュカさんがどこまで情報を把握しているのか確認しないと……。ただ、会った印象からは何も知らされてなさそうだ。

 僕は船長に別れの挨拶をすると、船を離れリュカさんとヘクセライの街へと踏み入れた。

――ヘクセライの街並みは、ナッシュと似ていてレンガ作りの建物が多い。ただ……他の街より近代的、といえばよいのか、ヘクセライはあちらこちらに魔具が設置されていた。

「あ、珍しいですよね。あれは灯りの魔具です。魔法研究所でコントロールしていて、日が落ちたら街中が明るくなります」
「へぇ、これは?」

  僕は床を移動する変化バケツを指差した。ロボット掃除機なのかな? すごく似てる……。

「それは街を掃除してくれる魔具ですよ。最近やっと段差なども避けてくれるようになって、街の清掃効率がグッとあがりました」

 へぇ、楽しいなーこの街。あちこちを魔具で補っている。なんで他の街では見かけないんだろう。

「ロイエさんの考えていることはわかりますよ。他の街では魔具を扱える技術者が足りてないんですよ」
「なるほど……使えなければ意味ないですもんね」

 さすが魔法研究所があるだけのことはある。しかし王都も警戒するほどの施設は、この町ではどのような扱いなのだろうか。
 
「あの、ヘクセライってのは、どんな街なんですか?」
「この街はですね。元々王都にある魔法研究所の職員が作った街なんですよ」

 新しい情報が出たきた。王都にも魔法研究所があるのか?

「王都の魔法研究所を追い出された人たちで作った街。それがヘクセライです」
「なるほど……。それで敵対しているんですね」
「ええ、こちらの研究成果は王の物であるというのが、あちらの主張ですね」

 確かに前世でも有名な車製造メーカーから、優秀なエンジニアが引き抜かれて、他の国の技術が進歩する話はよく聞く。

「なので、この街の税金の使い道はほとんどが街の利便性向上や、新しい研究の費用に充てられます」
「そうなんだ……」

 それで食べ物はナッシュやフォレスト、デザントからの輸入が多いというわけか……。

 ここに来る前は、ヘクセライですぐに襲撃や衝突があるかなと思っていたけど、見たところ街は平穏そのもので、争いの気配も殺気も感じない

 早めにリュカさんと話をして、現状の共有をしなければ……。
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