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小さな訪問客
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落ち着いた物腰に似合わず、亜希は活発な性質らしい。ぼんやりと庭を眺めるばかりの幸菜に、「もしよろしければ、下りてみませんか」ともちかけた。考え込まないようにという配慮もあるのかもしれない。
「いいんですか?」
「はい。お体の調子がよろしければ」
亜希はまだ幸菜が腰を痛めていると思い込んでいるようだ。付け加えられた言葉からそう感じた。
「……じゃあ、出てみたいです。手を貸してもらえますか?」
一人で立っていては、もし彰久の目に止まった時が怖い。
幸菜の下心など知るはずもなく、亜希は「勿論です」と笑顔で受け入れた。
亜希が手を引いてくれているとはいえ、それでも敷居を跨ぐのには勇気がいった。逃げるつもりはないのに生まれる躊躇いは、幸菜の演技に拍車をかけた。
幸菜が無理をしていると思ったらしい亜希に「今日は縁側までにしておきましょう」と言われ、用意された座布団に腰を下ろす。
少し近づいただけでも、庭はまた印象を変えた。木肌や枝ぶりがよく見えるからか、力強さや逞しさを感じさせる。
幸菜が腰を下ろした近くの木の枝に、小鳥が羽休めに降りてきた。名前は知らないが、ころころとして愛らしい姿に心が和む。止まってくれないかと指を伸ばしてみたが、小鳥はたちまち飛び去ってしまった。
「残念でしたね」
「はい……。せめて、近くにいてほしかったなぁ……」
寂しそうに肩を落とす幸菜に、亜希は苦笑しながら慰めの言葉をかける。動物はみんなそんなものだと言いかけたところで、前触れもなくと植え込みが物音を立てた。
亜希の表情が途端に険を帯びる。何かが潜んでいるらしい茂みをきつく睨みつけ、誘(おび)き出すように足元の石を投げつけた。
驚いたように飛び出してきたのは猫だった。灰がちな毛色の、小さな仔猫。
じっと見つめてくるそれに、幸菜はそっと手を伸ばしてみた。仔猫は警戒してか中々動かなかったが、しばらく待ってみると寄ってきて、するりと手に懐いた。
くるくると喉を鳴らす小さな体を両手で抱き上げた。目線があった仔猫は「にゃあ」と一鳴きしてからというもの、されるがままになっている。
恐る恐る、膝の上に降ろしてみた。仔猫はふにふにと確かめるような仕草をしてから、ころんと丸まった。
「きみは傍にいてくれるんだね」
嬉しそうにはにかんで、膝上の毛並みを撫でる。生まれて間もないのか、薄汚れていてもふわふわとした手触りを保っていた。
「何か、この仔のご飯になる物を分けてもらえませんか?」
お願いします、と亜希を見上げる。
亜希は物言いたげにしていたが、やがて諦めたように溜息をついた。
「魚とは限りませんが、何か見繕って参ります」
その間しっかり働くのですよ、と仔猫に言いつける亜希に、幸菜がぱっと顔を輝かせた。
「ありがとうございます!」
満面の笑みで礼を言われ亜希は面食らっていたが、すぐにまた渋々の体を装った。
少々お待ちくださいませ、と去っていく彼女の足取りが軽いのを、幸菜はしかと見届けた。
「いいんですか?」
「はい。お体の調子がよろしければ」
亜希はまだ幸菜が腰を痛めていると思い込んでいるようだ。付け加えられた言葉からそう感じた。
「……じゃあ、出てみたいです。手を貸してもらえますか?」
一人で立っていては、もし彰久の目に止まった時が怖い。
幸菜の下心など知るはずもなく、亜希は「勿論です」と笑顔で受け入れた。
亜希が手を引いてくれているとはいえ、それでも敷居を跨ぐのには勇気がいった。逃げるつもりはないのに生まれる躊躇いは、幸菜の演技に拍車をかけた。
幸菜が無理をしていると思ったらしい亜希に「今日は縁側までにしておきましょう」と言われ、用意された座布団に腰を下ろす。
少し近づいただけでも、庭はまた印象を変えた。木肌や枝ぶりがよく見えるからか、力強さや逞しさを感じさせる。
幸菜が腰を下ろした近くの木の枝に、小鳥が羽休めに降りてきた。名前は知らないが、ころころとして愛らしい姿に心が和む。止まってくれないかと指を伸ばしてみたが、小鳥はたちまち飛び去ってしまった。
「残念でしたね」
「はい……。せめて、近くにいてほしかったなぁ……」
寂しそうに肩を落とす幸菜に、亜希は苦笑しながら慰めの言葉をかける。動物はみんなそんなものだと言いかけたところで、前触れもなくと植え込みが物音を立てた。
亜希の表情が途端に険を帯びる。何かが潜んでいるらしい茂みをきつく睨みつけ、誘(おび)き出すように足元の石を投げつけた。
驚いたように飛び出してきたのは猫だった。灰がちな毛色の、小さな仔猫。
じっと見つめてくるそれに、幸菜はそっと手を伸ばしてみた。仔猫は警戒してか中々動かなかったが、しばらく待ってみると寄ってきて、するりと手に懐いた。
くるくると喉を鳴らす小さな体を両手で抱き上げた。目線があった仔猫は「にゃあ」と一鳴きしてからというもの、されるがままになっている。
恐る恐る、膝の上に降ろしてみた。仔猫はふにふにと確かめるような仕草をしてから、ころんと丸まった。
「きみは傍にいてくれるんだね」
嬉しそうにはにかんで、膝上の毛並みを撫でる。生まれて間もないのか、薄汚れていてもふわふわとした手触りを保っていた。
「何か、この仔のご飯になる物を分けてもらえませんか?」
お願いします、と亜希を見上げる。
亜希は物言いたげにしていたが、やがて諦めたように溜息をついた。
「魚とは限りませんが、何か見繕って参ります」
その間しっかり働くのですよ、と仔猫に言いつける亜希に、幸菜がぱっと顔を輝かせた。
「ありがとうございます!」
満面の笑みで礼を言われ亜希は面食らっていたが、すぐにまた渋々の体を装った。
少々お待ちくださいませ、と去っていく彼女の足取りが軽いのを、幸菜はしかと見届けた。
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