スキル売りのダークホース ~お代は人生の最後に頂くビジネスです。さて、本日のお客様は……?~

スィグトーネ

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3.エルフの少女との出逢い

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「わかった。前向きに検討したい!」
 そう伝えると、ウマは真顔で頷いた。
「君の望みは……愛らしい彼女だね?」
「うん。どうせ異世界に行くのなら、僕……エルフが好きなんだ」

 そう伝えると、ウマはうんうんという感じで頷く。
「エルフ……トンガリ耳が特徴的なニンフの末裔だね」
「あと、僕はこの歳だから、カップルになるのなら若返りとかあるといいな」

 自分の希望を次々と言っていくと、ウマは一つ一つ丁寧に応対してくれた。
 まず異世界への転移。次にお相手となるエルフの少女と出逢う。僕の年齢は18歳くらい。僕は格闘技や剣道は習っていないから、弾数が無制限のマジックハンドガンを支給。
「……なるほど。特殊能力を付けるにも限界があるんだね」
「うん、君を無敵にすると、ハンドガンなしでも年齢を32歳までしか下げられなくなる」
「じゃあ、索敵能力みたいなのを付けると……どうかな?」

「……では半径300メートルの敵意を感知できる能力を付けて21歳くらいの年齢……ということでどうだろう?」
「じゃあ、それで行こう!」
「わかった。では……目を瞑って」
「ああ!」

 僕は言われた通りに目を瞑ると、ウマは異世界転移を行ってくれているようだ。
 どうしてそんなことがわかるのかと言えば、目を瞑って少しすると身体への重力のかかり方が変わった感じがしたからだ。

 少しすると、ウマの声が聞こえてきた。
「じゃあ、そろそろ転移が終わるけど……ひとつアドバイスするね」
「なんだ?」
「君の目の前に、エルフの少女がいるけど……モンスターに襲われているんだ。そのハンドガンで応戦してカッコよく救い出して欲しい」

 なるほど。
 ピンチの少女を助けるなんて、ファンタジーらしい話だと思う。
 僕は頷くと、すぐに手元のハンドガンに手を当てた。

――――――――
――――
――


 間もなく目を開けると、僕の前には雄大な広葉樹林が広がっていた。
 見渡す限り、木ばかりが生えており薄暗く、肉眼では細かいところまではよく見えなかった。

 だけど、次の瞬間……僕の目は赤い光を捉えていた。
 どうやらこれが敵意を見るという特殊能力のようだ。ウマの話によるとヘイトセンスというらしく、少し離れた獣だけでなく、小動物の敵意まで赤い光で見ることができる。

 そして目を少し凝らしただけで、無数の赤い光の中でも特に危険なモノがわかった。
 人サイズの敵意は怯えており、獣サイズの敵意は炎のように燃え上がっている。
「……あれか!」

 僕は走りながら現場へと突入すると、ちょうど獣が少女に食い掛かろうとしていた。
 ハンドガンを構えると、獣は僕を睨んで飛びかかってきたので、最初の一撃で獣の腹部を貫き、二撃目で足に命中し、ダメ押しの射撃が獣の眉間に命中していた。
「……ふー」

 獣は崩れるように横倒しになると、襲われそうになっていた少女は、恐る恐るという感じに僕を見てくる。
「あ、あの……?」
「危ないところだったね。ケガはないかい?」
 なるべく優しく話しかけると、この少女は頬を赤らめて恥ずかしそうに視線を逸らしていく。
「は、はい……危ないところを助けていただき、ありがとうございます」

 彼女はゆっくりと僕を見てきた。
「変わった……恰好ですね。どこから来たのですか?」

 ああ、そう言えば僕は、仕事帰りに飲みに連れ出されたので、会社の制服と安全靴という冒険者世界では、あまりに目立つ格好をしている。
 これは……さすがに彼女たちから見れば、異様な格好だよな。
「あ、ああ……これは東方の民族衣装のようなものだよ」
「そうなのですね。でも……この森を歩くには向いていないと思います」

 彼女は少し恥ずかしそうな顔をしながらも、僕を見た。
「もし……よろしければ、私の家に寄りませんか?」
「え? いいのかい? 君って嫁入り前の女の子だよね? 僕なんかが行って……」
「大丈夫ですよ。わたし……独り暮らししているんです」

 独り暮らしと聞いて、何だか現代的な女の子だなと感じた。
 僕の中のエルフのイメージと言えば、妖精の隠れ里のようなところに集団で住んでいて、彼女くらいの歳の少女なら、親元で生活していそうな感じだ。
 何だか、彼女がどんな生活をしているのか興味が出てきた。
「わかった。そういうことならお言葉に甘えようかな?」

 そう伝えると、そのエルフの少女の表情はパッと明るくなった。
 こんな可憐な少女から心から歓迎されていると思うと、何だかとても嬉しく思えてくる。
「では、ご案内させていただきます」

 彼女は、草で編まれたカゴの中に、地面に落ちていた野草や山菜などを入れると僕を案内してくれた。
 何だかエルフが隣にいると、森の中だと言うのに舗装された道を歩いているくらい、安定して歩くことができる。

 そのうえ、下草や木もすり抜けていくので、とても歩きやすい。
 彼女と一緒に旅でもできれば、凄く楽しいだろうな。

【エルフの少女「変わった……恰好ですね。どこから来たのですか?」】
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