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龍之介(現世)の休日の過ごし方

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 僕は現実世界に残っている東龍之介だ。
 今日は仕事も休みの日だから、久しぶりに羽を伸ばそうと思う。

 とはいっても、僕には彼女もいなければ、熱中しているような趣味も、出かけたくなるような場所もない。
 そう言う男が何をしはじめるのかと言えば、たいていの場合はスマートフォンを片手にネットサーフィンである。


 僕はまず、婚活スレや、その纏め動画などを見て、「あーなるほど……」と頷いていた。
 そこには40代無職で貯金無しの女性が、婚活に苦戦しているために、ネット上の住人にアドバイスを求めるスレッドが立っていた。
 そして、いざネット上の住人がアドバイスを言うと、質問主の女性はそういう話を聞きたいんじゃないと反発していたのだ。

 口論になった理由は簡単で、無職の女性は「働きたくないから結婚したい」と主張し、ネット上の住人は「質問主のスペックだと、せめて働いていなければ結婚は難しい」と現実を突きつける話をしている。
 つまり、平行線のまま話は終わってしまうというわけだ。

 そんな様子を見ながら、僕はうんうんと頷いた。
「こういう奴は絶対に家事もしないよな。やっぱりこの状況で働かないというのは問題がある」


 後から考えれば、いくら休日とはいえ、こんな無駄なことに時間を使っているのだから、僕自身にも見事にブーメランが突き刺さっているわけだが、僕は身体にそんなものが刺さっていることなど気にも留めずに次のネタを探した。

 調べたのは、サッカーの順位表である。
「うわ……また引き分けかよ……やる気あるのかこいつら?」

 団体名こそ上げないが、僕は密かに応援しているチームがある。
 そのチームは最近は不調が続いていて、このままでは降格圏まで落ちてしまいかねないのだ。Jリーグというのは、一度下位に落ちてしまうと、有力選手が別のサッカーチームに引き抜かれることも多く、弱体化して負け込んでいき、更に下位へと転落することも珍しくない。
「つまんねーから、サッカーはこれくらいでいいや」


 その更に次に、僕が調べたのは競馬だ。
 昔は競馬場の窓口まで行かなければ、馬券を買えなかったらしいが、今ではネットやスマートフォンでも馬券は買える時代なんだ。
 応援している騎手やウマもいるから、僕は本当にレースを楽しみ気持ちで、500円ほどかけてみた。

「…………」
「…………」
 応援しているウマが、ずっと馬群の後方にいるけど、こいつは追い込みウマだ。最後の最後の土壇場でごぼう抜きにしていく駿馬だから大丈夫!

「…………」
「…………」
 ……のはずだったんだけど、末脚が伸び切らずに結果は……6着。
 だーもう、○○騎手のへたくそ! コイツはこの前も馬群に埋もれてたし、マジで最悪だ!!


 もし1着になったら、ステーキでも食おうと思ってたけど、500円をドブにでも落とした気分だ。
 今夜の晩飯は、カップ麺と炊飯器の中に残っているご飯だけで済ませるとするか。はぁ……。

 こうなったらあれだ。ストレスや欲求不満もマックスだし、あれでも見よう。例のサイトでも。
 そして僕はパソコンの画面を切り替えると、いかがわしいサイトへとアクセスした。見れるのはもちろんあーんな画像や、こーんな画像が盛りだくさんである。

 そうして当然ながら、コンピューターウイルスに入られ、今度は身代金を要求されるというわけだ。
 もちろん僕が、こんな連中の要求に従うわけがない。データが初期化されてしまったが、どうせ匿名掲示板といかがわしいサイトを覗くことしか使っていないPCだ。何の問題もない。
「まあ本当は、そんなお金を払っている余裕もないんだけどね……もうこんな時間だし、寝よ」



 床に就くと、夢枕の中で女神さまが姿を見せた。
「龍之介……あなたの1日を見せて頂きましたが……一体、何をしているのですか?」
「え? 何って、明日からまた頑張って働くための充電」
「あの……ですね。これからの時代は、どんなことがあるかわからないのですから、今のうちに少しでも資格の勉強とかをして、武器を少しでも作っておきなさい」

「ええ~~?」
 渋い顔をしながら難色を示すと、女神様は更に強い口調で言ってきた。
「だいたい、貯金も40万円しかないじゃありませんか。いくら3万5000円のアパートに住んでいると言っても、水道光熱費や食費を考えればそんなに持ちませんよ」
 彼女は眉根をつり上げた。
「無駄遣いしてないで、もっと貯金なさい!」


 こうして堕落した生活を送っている僕は、見事に女神さまにダメンズ指導を受けることになったのだった。
「でも、僕のような頭の悪い奴に取れる資格なんて……」
「取れるモノをピックアップしておきますから、余裕があるうちに、や・り・な・さ・い!」

【夢枕に立った女神様】

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