15 / 41
13.取潰しとガーディアス帝国の侵攻
しおりを挟む
私こと皇太子妃の暗殺未遂事件から数日後。
シットーの生家は取潰しとなり、暗殺未遂事件の主犯であるシットーは、十字架に括り付けられて刑を執行されていました。
あまりに生々しすぎるので、私は途中で吐いてしまって途中退出することになりましたが、例の刑の執行は言葉に表せないほど恐ろしいものです。
「だ、大丈夫か……レナよ?」
「おえええええ……ううううう……」
皇太子に口を拭ってもらったあと、私は質問しました。
「例の刑……ということは、シットー嬢は口を割らなかったのですか?」
「いいや。取り調べで自供させたのだが、調べてみるとデタラメばかりを口にしていることがわかり、より父上の怒りを買ったのだ」
なんとなく、シットーの雰囲気を考えれば、そう行動するのはわかる気がします。
自分が助かるために、思いついた貴族の名を手当たり次第に口にしたのでしょう。木を隠すなら森の中というべきでしょうか。中には本当に加担していた人のいたのかもしれませんが、無関係な人間が混じっていたら、聞いている方は全部がデタラメと感じるはずです。
気分が落ち着いたので、皇太子と話していると国王がやってきました。
「先祖代々に及ぶ忠義をかんがみて、一族は追放処分で済ませたが……刑が軽かっただろうか?」
「そんなことはありません! むしろ厳しすぎて吐いてしまったくらいです」
「貴殿は優しいからな……だが、主が許しても、ワシは許さん!」
恐ろし気な顔で、処刑場の方向を睨んでいた国王でしたが、私を見るとにっこりと笑いました。処刑の後だったので、王の笑顔はえんま様が笑っているように感じてしまいます。
「今後は、レナ殿に危険が及ばないように十分に注意する。今回の件……申し訳ない」
「そ、そんな……勿体ないお言葉です!」
こうして、この日は部屋とへ戻りましたが、数日後に御城に向かって早馬に乗った騎士がやってきました。
なんとなく火急の知らせだとわかりましたが、少しすると皇太子も王の間に呼ばれて行きます。いったい、何があったのでしょうか。
1時間ほどすると、皇太子は戻って来て言います。
「隣国のガーディアス帝国が攻めてきた。これから父上と共に出立しなければならない」
遂に戦争がはじまるのですか。私は唾を飲んでから答えます。
「わ、わかりました……ご武運をお祈りいたします」
「留守の際に何かあれば、メアリーたち侍女を頼ってくれ」
その話を聞いた侍女長メアリーは、しっかりと敬礼しました。
「皇太子妃のことは、我らにお任せください」
あの暗殺未遂事件以来、メアリーたちは怪しい人物が侍女に成りすましていないか、とても厳しくチェックしていますし、いざとなったらスピカ号もいるから大丈夫でしょう。
「私もいるから、安心して戦ってきてくれ」
「貴殿が一番心配なのだがな……色々な意味で……」
「どういう意味だ!」
少し私たちと慣れ合うと、皇太子は出陣の準備をはじめました。
国王や皇太子は騎士たちを率いて御城から出陣していきます。城下町には多くの人々が集まって声援を上げ、私たちも御城から見送ります。
「メアリーさん、ガーディアス帝国とは……どのような国なのですか?」
「ガーディアスは西に位置する大国です。我が国とは曽祖父の代から戦争を続けています。ガーディアスの征服こそ我が王国の悲願です」
「国土の広さや人口などはどうなのでしょう? 我が国よりも大きいのですか?」
「それは……どうなのでしょうね? 長年に渡って敵対関係にあるので、私もわかりません」
メアリーの意外な答えに、私は思わず生唾を呑みました。
戦争というモノに詳しくはないのですが、相手の兵力や兵の質がわからない状態で戦うというのは、とても危ないことなのではないかと思うのです。
「スピカオブアムアス……」
「なんだ?」
「ガーディアス帝国は、どれくらいの大きさかわかる?」
「そうだな……空から見た感じでは、このアーヴィランドの1.7倍から2倍ほどか」
その言葉を聞いたメアリーは表情を崩しました。
「そ、そうなのですか……国土が大きな国は……確かにありますね」
「人口は……幾つだろうな。都市の数で言えば、ここの王都クラスの都市が……向こうは2つ。それとは別に帝都はここの1.5倍くらい。それ以外の地方都市が……14個ほどか」
その言葉を聞いて、私は身体中の血の気が引いていくのを感じました。
このアーヴィランド王国は、人口50万人の都市1つ、10万人の地方都市が7つという規模の国です。人口は農村部も合わせて500万……多く見積もっても700万人程度でしょう。
ガーディアス帝国は、人口75万人の都市が1つ、50万人の都市が2つ、それ以外の10万人規模の地方都市が14個です。
これだと人口は1000万人……いえ1500万人いてもおかしくありません。
つまりスピカ号の情報に誤りがなければ、皇太子たちは、人口や国土が倍近い相手と戦わなければならないことになります。
シットーの生家は取潰しとなり、暗殺未遂事件の主犯であるシットーは、十字架に括り付けられて刑を執行されていました。
あまりに生々しすぎるので、私は途中で吐いてしまって途中退出することになりましたが、例の刑の執行は言葉に表せないほど恐ろしいものです。
「だ、大丈夫か……レナよ?」
「おえええええ……ううううう……」
皇太子に口を拭ってもらったあと、私は質問しました。
「例の刑……ということは、シットー嬢は口を割らなかったのですか?」
「いいや。取り調べで自供させたのだが、調べてみるとデタラメばかりを口にしていることがわかり、より父上の怒りを買ったのだ」
なんとなく、シットーの雰囲気を考えれば、そう行動するのはわかる気がします。
自分が助かるために、思いついた貴族の名を手当たり次第に口にしたのでしょう。木を隠すなら森の中というべきでしょうか。中には本当に加担していた人のいたのかもしれませんが、無関係な人間が混じっていたら、聞いている方は全部がデタラメと感じるはずです。
気分が落ち着いたので、皇太子と話していると国王がやってきました。
「先祖代々に及ぶ忠義をかんがみて、一族は追放処分で済ませたが……刑が軽かっただろうか?」
「そんなことはありません! むしろ厳しすぎて吐いてしまったくらいです」
「貴殿は優しいからな……だが、主が許しても、ワシは許さん!」
恐ろし気な顔で、処刑場の方向を睨んでいた国王でしたが、私を見るとにっこりと笑いました。処刑の後だったので、王の笑顔はえんま様が笑っているように感じてしまいます。
「今後は、レナ殿に危険が及ばないように十分に注意する。今回の件……申し訳ない」
「そ、そんな……勿体ないお言葉です!」
こうして、この日は部屋とへ戻りましたが、数日後に御城に向かって早馬に乗った騎士がやってきました。
なんとなく火急の知らせだとわかりましたが、少しすると皇太子も王の間に呼ばれて行きます。いったい、何があったのでしょうか。
1時間ほどすると、皇太子は戻って来て言います。
「隣国のガーディアス帝国が攻めてきた。これから父上と共に出立しなければならない」
遂に戦争がはじまるのですか。私は唾を飲んでから答えます。
「わ、わかりました……ご武運をお祈りいたします」
「留守の際に何かあれば、メアリーたち侍女を頼ってくれ」
その話を聞いた侍女長メアリーは、しっかりと敬礼しました。
「皇太子妃のことは、我らにお任せください」
あの暗殺未遂事件以来、メアリーたちは怪しい人物が侍女に成りすましていないか、とても厳しくチェックしていますし、いざとなったらスピカ号もいるから大丈夫でしょう。
「私もいるから、安心して戦ってきてくれ」
「貴殿が一番心配なのだがな……色々な意味で……」
「どういう意味だ!」
少し私たちと慣れ合うと、皇太子は出陣の準備をはじめました。
国王や皇太子は騎士たちを率いて御城から出陣していきます。城下町には多くの人々が集まって声援を上げ、私たちも御城から見送ります。
「メアリーさん、ガーディアス帝国とは……どのような国なのですか?」
「ガーディアスは西に位置する大国です。我が国とは曽祖父の代から戦争を続けています。ガーディアスの征服こそ我が王国の悲願です」
「国土の広さや人口などはどうなのでしょう? 我が国よりも大きいのですか?」
「それは……どうなのでしょうね? 長年に渡って敵対関係にあるので、私もわかりません」
メアリーの意外な答えに、私は思わず生唾を呑みました。
戦争というモノに詳しくはないのですが、相手の兵力や兵の質がわからない状態で戦うというのは、とても危ないことなのではないかと思うのです。
「スピカオブアムアス……」
「なんだ?」
「ガーディアス帝国は、どれくらいの大きさかわかる?」
「そうだな……空から見た感じでは、このアーヴィランドの1.7倍から2倍ほどか」
その言葉を聞いたメアリーは表情を崩しました。
「そ、そうなのですか……国土が大きな国は……確かにありますね」
「人口は……幾つだろうな。都市の数で言えば、ここの王都クラスの都市が……向こうは2つ。それとは別に帝都はここの1.5倍くらい。それ以外の地方都市が……14個ほどか」
その言葉を聞いて、私は身体中の血の気が引いていくのを感じました。
このアーヴィランド王国は、人口50万人の都市1つ、10万人の地方都市が7つという規模の国です。人口は農村部も合わせて500万……多く見積もっても700万人程度でしょう。
ガーディアス帝国は、人口75万人の都市が1つ、50万人の都市が2つ、それ以外の10万人規模の地方都市が14個です。
これだと人口は1000万人……いえ1500万人いてもおかしくありません。
つまりスピカ号の情報に誤りがなければ、皇太子たちは、人口や国土が倍近い相手と戦わなければならないことになります。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
14
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる