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13.取潰しとガーディアス帝国の侵攻

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 私こと皇太子妃の暗殺未遂事件から数日後。
 シットーの生家は取潰しとなり、暗殺未遂事件の主犯であるシットーは、十字架に括り付けられて刑を執行されていました。

 あまりに生々しすぎるので、私は途中で吐いてしまって途中退出することになりましたが、例の刑の執行は言葉に表せないほど恐ろしいものです。
「だ、大丈夫か……レナよ?」
「おえええええ……ううううう……」


 皇太子に口を拭ってもらったあと、私は質問しました。
「例の刑……ということは、シットー嬢は口を割らなかったのですか?」
「いいや。取り調べで自供させたのだが、調べてみるとデタラメばかりを口にしていることがわかり、より父上の怒りを買ったのだ」

 なんとなく、シットーの雰囲気を考えれば、そう行動するのはわかる気がします。
 自分が助かるために、思いついた貴族の名を手当たり次第に口にしたのでしょう。木を隠すなら森の中というべきでしょうか。中には本当に加担していた人のいたのかもしれませんが、無関係な人間が混じっていたら、聞いている方は全部がデタラメと感じるはずです。


 気分が落ち着いたので、皇太子と話していると国王がやってきました。
「先祖代々に及ぶ忠義をかんがみて、一族は追放処分で済ませたが……刑が軽かっただろうか?」
「そんなことはありません! むしろ厳しすぎて吐いてしまったくらいです」
「貴殿は優しいからな……だが、主が許しても、ワシは許さん!」

 恐ろし気な顔で、処刑場の方向を睨んでいた国王でしたが、私を見るとにっこりと笑いました。処刑の後だったので、王の笑顔はえんま様が笑っているように感じてしまいます。
「今後は、レナ殿に危険が及ばないように十分に注意する。今回の件……申し訳ない」
「そ、そんな……勿体ないお言葉です!」


 こうして、この日は部屋とへ戻りましたが、数日後に御城に向かって早馬に乗った騎士がやってきました。
 なんとなく火急の知らせだとわかりましたが、少しすると皇太子も王の間に呼ばれて行きます。いったい、何があったのでしょうか。

 1時間ほどすると、皇太子は戻って来て言います。
「隣国のガーディアス帝国が攻めてきた。これから父上と共に出立しなければならない」

 遂に戦争がはじまるのですか。私は唾を飲んでから答えます。
「わ、わかりました……ご武運をお祈りいたします」
「留守の際に何かあれば、メアリーたち侍女を頼ってくれ」

 その話を聞いた侍女長メアリーは、しっかりと敬礼しました。
「皇太子妃のことは、我らにお任せください」

 あの暗殺未遂事件以来、メアリーたちは怪しい人物が侍女に成りすましていないか、とても厳しくチェックしていますし、いざとなったらスピカ号もいるから大丈夫でしょう。
「私もいるから、安心して戦ってきてくれ」
「貴殿が一番心配なのだがな……色々な意味で……」
「どういう意味だ!」


 少し私たちと慣れ合うと、皇太子は出陣の準備をはじめました。
 国王や皇太子は騎士たちを率いて御城から出陣していきます。城下町には多くの人々が集まって声援を上げ、私たちも御城から見送ります。

「メアリーさん、ガーディアス帝国とは……どのような国なのですか?」
「ガーディアスは西に位置する大国です。我が国とは曽祖父の代から戦争を続けています。ガーディアスの征服こそ我が王国の悲願です」
「国土の広さや人口などはどうなのでしょう? 我が国よりも大きいのですか?」
「それは……どうなのでしょうね? 長年に渡って敵対関係にあるので、私もわかりません」


 メアリーの意外な答えに、私は思わず生唾を呑みました。
 戦争というモノに詳しくはないのですが、相手の兵力や兵の質がわからない状態で戦うというのは、とても危ないことなのではないかと思うのです。
「スピカオブアムアス……」
「なんだ?」
「ガーディアス帝国は、どれくらいの大きさかわかる?」
「そうだな……空から見た感じでは、このアーヴィランドの1.7倍から2倍ほどか」

 その言葉を聞いたメアリーは表情を崩しました。
「そ、そうなのですか……国土が大きな国は……確かにありますね」
「人口は……幾つだろうな。都市の数で言えば、ここの王都クラスの都市が……向こうは2つ。それとは別に帝都はここの1.5倍くらい。それ以外の地方都市が……14個ほどか」


 その言葉を聞いて、私は身体中の血の気が引いていくのを感じました。
 このアーヴィランド王国は、人口50万人の都市1つ、10万人の地方都市が7つという規模の国です。人口は農村部も合わせて500万……多く見積もっても700万人程度でしょう。

 ガーディアス帝国は、人口75万人の都市が1つ、50万人の都市が2つ、それ以外の10万人規模の地方都市が14個です。
 これだと人口は1000万人……いえ1500万人いてもおかしくありません。


 つまりスピカ号の情報に誤りがなければ、皇太子たちは、人口や国土が倍近い相手と戦わなければならないことになります。
 
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