しっかり者のエルフ妻と行く、三十路半オッサン勇者の成り上がり冒険記

スィグトーネ

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2.神の存在証明バックステータス

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 僕は信じられないと思っていた。
 鎖さえも紙のように切り裂いた自慢のナイフが折れ、刃先が空中で舞っている。

 その直後に岩のバケモノと目が合うと、腕のようなモノを振り下ろされ、僕はモロに弾き飛ばされていた。
 なんだこの威力は……野球バットで殴られるよりも凶悪じゃないか!

 更に僕は背中を鉄格子に打ち付けると、終わった……と思ったが、意外にもダメージは大したことはなかった。
 骨も折れてないし、背中を打ち付けた痛みも少ない。

 どういうことだと思ったら、オリヴィアが僕に向けて手をかざしていた。
大地の防壁アースシールド!!】


 そうか、彼女が機転を利かせて魔法で防御してくれていたのか!
 僕は再び立ち上がるとオリヴィアを守るために、岩のバケモノとオリヴィアの間に立った。
「カイトさん! アビリティで出す剣は何秒も出していると威力が下がります!」
「わかった!」

 僕はナイフを出すと、再び岩のバケモノに向かっていった。
 コイツの動きは鈍重だから簡単に側面を取れるが、僕のナイフを用いても刃先が奥まで通らない。
「やはり、動き回る相手を切り伏せるのは……簡単にはいかないか」
「下がって!」

 オリヴィアの指示に従って、僕は道を開けると、今度はオリヴィアが岩のバケモノに手をかざした。
「ファイアショットッ!」

 オリヴィアの手のひらからは、何発もの炎球が発射されると、次々と岩のバケモノにぶつかっていったが、体勢を崩すだけで深刻なダメージは与えられなかった。
 だけど、チャンスと言わんばかりにオリヴィアは叫んだ。
「今です!」

 僕はオリヴィアと共に、体勢を崩した岩のバケモノを通り抜け、そのまま地下牢エリアを後にした。


 洞窟の中へと出た僕とオリヴィアは、息を切らせながらも周囲を睨んでいた。
「まだ、あのバケモノ……いるのかな?」
「わかりませんが、思ったよりも警備は手薄そうです」

 視線を上げると、オリヴィアの背中に数字や、見慣れないが意味の分かる文字が書かれていた。

【オリヴィア 女 年齢18歳 種族:エルフ クラス:賢者 レベル23 
HP 258/ 258 LP 4/4 MP 362/ 392】


「この数字……なんだい?」
 そう質問したら、オリヴィアは驚いた表情をした。
「御存じないのですか? これは……神の存在証明、バックステータスです」

「なんだいそれは? 初めて見た」
 そう質問するとオリヴィアは「背中を見せてもらってもいいですか?」と言ってきた。

「……カイト クラス……!?」
 僕の背中にも何か書かれているのか、と思っているなか、オリヴィアは続きを言った。

【カイト 男 年齢35歳 種族:ヒューマン クラス:一般人 レベル1
HP 236/ 300 LP 5/5 MP 236/ 248】


 どうやら、僕の背中にも書いてあるようだ。
 オリヴィアは僕の背中に触れると、更に何かを見ている。
「…………」
「…………」
「何かわかった?」

 そう質問するとオリヴィアは答えた。
「勉強になりました……ありがとうございます」
 彼女は丁寧に僕のシャツを元に戻した。


「とりあえず、マッピング魔法を使います」
「あ、ああ……お願い」
 オリヴィアがマッピング魔法を使うと、僕の脳裏にも、この階層がどんな構造をしているのかが記憶として流れ込んできた。更に凄いことに、どこにどんな宝物があるのかもわかる。

「服とロッド、それにお金も持ち出しましょう」
「向こうにガーディアン、それにそこの影に警報トラップがあるから気を付けよう」
「はい」

 オリヴィアはローブなどを手に入れると、僕は後ろを向いた。
「……お待たせしました」

 振り返ると、オリヴィアは緑色のローブを身に纏い、魔法少女という格好に変わっていた。
「魔法使いという感じの姿だね!」
「急いで次に行きましょう」
「うん」

 他にもお金の入った革袋や食糧などを手に入れると、僕らはガーディアンの監視をかい潜りながら洞窟を出た。オリヴィアの力が無ければ、ここを無傷で出ることなど不可能だっただろう。

「何とか表に出ることができたね」
「そうですね」

 オリヴィアは僕の左手を握ると言った。
「助かったのはカイトさんのおかげです」

 彼女の暖かく柔らかい手に握られると、何だか照れくさく思えた。
 考えても見れば女の子に手を握られたことなんて初めてだ。突然、異世界に連れてこられたけど、悪いことばかりではないと思えた。
「役に立てたのなら嬉しいよ」
「カイトさんはこの辺りの土地は不慣れですよね。よろしければ……お供しましょうか?」


 オリヴィアにそう言ってもらえるのは心強い。
 僕もすぐに頷きたかったが、どうも一つだけ気になることがある。それは首に残っている鎖付きの首輪だ。これで隣を歩かれると、僕がヤバい趣味を持っている人間に見える。
「そうしてくれるとありがたいけど、その前に首輪……外してくれない?」

 そう伝えると、オリヴィアは困った顔をした。
「これは、魔女に付けられた奴隷の首輪です。外すとどんなトラップがあるかわかりません。危ないので……」


 僕はじっとオリヴィアの首輪を眺めた。
 彼女はかなり警戒しているようだが、僕から見ればそれほど邪気を感じない。どうにか外せないのだろうか。

 試しに手で触れてみると「カシャン」という音と共に、オリヴィアの首から外れて地面に落ちていた。
「え……?」
「何だか拍子抜けだったね」

 あまりに見掛け倒しだったので笑ってしまいそうだったが、オリヴィアは顔面蒼白という様子で僕を眺めていた。
 急にどうしたのだろうと思ったら、オリヴィアは声を荒げた。

「すぐに背中を見せてください!」








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