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21.ヒーラー騒動
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その日、僕、オリヴィア、ジルーの3人は、マーフォーク族の村の1つにいた。
オリヴィアは、倒したゴブリンの右耳を切り取ると、ジルーは慣れた様子で袋に入れていく。
「これで23匹目だね」
「精霊の話では、まだ森の北側にいるようです」
「なら、今度は僕がやろう」
今度は僕がレフトソード投げでゴブリンを倒していき、合わせて34匹のゴブリンを撃退した。
全ての耳を差し出すと、その村の長は満足そうに頷いた。
「これだけたくさんのゴブリンを倒してくれたか……当分の間は静かに農作業ができそうだ!」
「満足して頂けたのなら頑張った甲斐があります。また何かお困りのことがございましたら、ぜひお声をおかけください」
こうして僕たちは、舟に乗ってギルドへと戻りはじめた。
「カイト君も、だいぶ手慣れた感じになってきたね」
「確かに少し慣れたかもしれないけど、レベルが思ったよりも上がらなくなってきたな」
そう。最初のクエストだと一気にレベルも上がったが、今回はそれ以上にゴブリンを倒してもレベルは7止まりだった。やはりRPGのレベルと一緒で、レベルが上がると必要経験値が増えて上がりづらくなるのだろう。
ジルーはと言えば、どこかゆっくりした感じで答えた。
「それでも順調に強くなっているんだから心配はないと思うよ。泳ぎとか舟の操り方とか、そういう基礎をじっくりとやっていこう」
「僕が若ければそれもいいんだけど、今年で35だからね」
そう伝えると、ジルーは目をぱっちりと開いた。
「え……冗談でしょ?」
「本当だよ、背中見る?」
ジルーはじっと僕の顔を眺めてきた。
「……どう見ても、この前に訓練場を卒業したばかりの兄ちゃんにしか見えないよ」
その言葉を聞いたオリヴィアも苦笑しながら言った。
「私も最初は、何かの冗談かと思いました。でも、東からやってきた人たちって若作りで、顔を見ただけじゃ年齢はわかりませんから」
「ああ、確かに……」
そんな話をしていたら、頭上からバサバサと羽音が聞こえてきた。
「あ、ジルー!」
「ん……? あ、誰かと思えば……アピゲイル!」
どうやら僕たちのすぐ前で、空中で静止している有翼人の少女はアピゲイルという名前らしい。
彼女は僕たちに微笑みかけると、すぐにジルーを見た。
「ジルー、街の中心部が凄いことになっているよ」
「え? 何かあったの?」
ジルーがキョトンとした様子で聞くと、アピゲイルはおもしろがる様子で言った。
「世間知らずな感じのお嬢さんが冒険者街に来たんだけど、その人……寄りにもよってヒーラーでね。そんな人がインディゴメイルズのギルド員に話しかけちゃったから大変!」
話を聞いてみて、僕は苦笑せざるを得なかった。
どうやらその世間知らずのお嬢さんは、たまたまスカウトに来たインディゴメイルズの男性に、自分はヒーラーだと他に人間にも聞こえるように言ってしまったのだという。
インディゴメイルズのギルド員は、貴重なヒーラーを自分たちのギルドに誘おうとしたが、そこに邪魔者が現れたというワケである。
「ちなみに、その邪魔者は期待通りレッドトマホークの連中だよ!」
その話を聞いたジルーもオモシロがった。
「冒険者街の最大勢力と2番手の戦いかぁ……おもしろーい! どっちが勝ったの?」
「それが、取り合いになったところで、3番手のシャドーアローズまで参戦したから、もう大混乱!」
さすがにそこまで話がややこしくなると笑えない。
「っていうか、その女の子って……大丈夫なの? ケガとかしてるんじゃ……」
アピゲイルは、僕を見て話の続きを言った。
「まだ続きはあるよ。そこに今度はね……他の中小ギルドの面々までヒーラーお嬢さんを奪おうとしたから、ますますワケがわからないことになったんだよ」
思わずオリヴィアを見ると、青ざめた顔をしていた。
彼女は幸いにもしっかりしているから、誰にもヒーラーだと悟られることはなかったが、何かの拍子に気付かれたら、僕やスティレットも巻き込まれる形で強奪騒ぎに巻き込まれていたかもしれない。
いや、スティレットもユニコーンなので、きっと冒険者街は恐ろしいことになっただろう。
舟がギルドへと着いたとき、フロンティア・トリトンズには別の有翼人も来ており、彼はフェリシティーと話をしていた。
「……というわけで、私が見聞きしただけでも死者11名。重傷者やけが人は合わせて100人以上出ているようだ」
「そ、それは……大惨事になりましたね」
「あ、カールギルド長!」
アピゲイルが話しかけた人物は、立派なタカの翼を持つ男性だった。
どうやら彼は、有翼人のギルド【ボレアスウインド】のギルド長らしく、威厳というか威圧感を周囲に放っていた。
カールはフェリシティーに言った。
「まあ君のことだから抜かりはないと思うが、ヒーラーを加えたという噂は冒険者街にも広がっている。十分に警戒してくれ」
「ご助言。感謝いたします」
カールはギルドから出ると、さっそうと飛び立っていった。
【空中で制止するアピゲイル】
オリヴィアは、倒したゴブリンの右耳を切り取ると、ジルーは慣れた様子で袋に入れていく。
「これで23匹目だね」
「精霊の話では、まだ森の北側にいるようです」
「なら、今度は僕がやろう」
今度は僕がレフトソード投げでゴブリンを倒していき、合わせて34匹のゴブリンを撃退した。
全ての耳を差し出すと、その村の長は満足そうに頷いた。
「これだけたくさんのゴブリンを倒してくれたか……当分の間は静かに農作業ができそうだ!」
「満足して頂けたのなら頑張った甲斐があります。また何かお困りのことがございましたら、ぜひお声をおかけください」
こうして僕たちは、舟に乗ってギルドへと戻りはじめた。
「カイト君も、だいぶ手慣れた感じになってきたね」
「確かに少し慣れたかもしれないけど、レベルが思ったよりも上がらなくなってきたな」
そう。最初のクエストだと一気にレベルも上がったが、今回はそれ以上にゴブリンを倒してもレベルは7止まりだった。やはりRPGのレベルと一緒で、レベルが上がると必要経験値が増えて上がりづらくなるのだろう。
ジルーはと言えば、どこかゆっくりした感じで答えた。
「それでも順調に強くなっているんだから心配はないと思うよ。泳ぎとか舟の操り方とか、そういう基礎をじっくりとやっていこう」
「僕が若ければそれもいいんだけど、今年で35だからね」
そう伝えると、ジルーは目をぱっちりと開いた。
「え……冗談でしょ?」
「本当だよ、背中見る?」
ジルーはじっと僕の顔を眺めてきた。
「……どう見ても、この前に訓練場を卒業したばかりの兄ちゃんにしか見えないよ」
その言葉を聞いたオリヴィアも苦笑しながら言った。
「私も最初は、何かの冗談かと思いました。でも、東からやってきた人たちって若作りで、顔を見ただけじゃ年齢はわかりませんから」
「ああ、確かに……」
そんな話をしていたら、頭上からバサバサと羽音が聞こえてきた。
「あ、ジルー!」
「ん……? あ、誰かと思えば……アピゲイル!」
どうやら僕たちのすぐ前で、空中で静止している有翼人の少女はアピゲイルという名前らしい。
彼女は僕たちに微笑みかけると、すぐにジルーを見た。
「ジルー、街の中心部が凄いことになっているよ」
「え? 何かあったの?」
ジルーがキョトンとした様子で聞くと、アピゲイルはおもしろがる様子で言った。
「世間知らずな感じのお嬢さんが冒険者街に来たんだけど、その人……寄りにもよってヒーラーでね。そんな人がインディゴメイルズのギルド員に話しかけちゃったから大変!」
話を聞いてみて、僕は苦笑せざるを得なかった。
どうやらその世間知らずのお嬢さんは、たまたまスカウトに来たインディゴメイルズの男性に、自分はヒーラーだと他に人間にも聞こえるように言ってしまったのだという。
インディゴメイルズのギルド員は、貴重なヒーラーを自分たちのギルドに誘おうとしたが、そこに邪魔者が現れたというワケである。
「ちなみに、その邪魔者は期待通りレッドトマホークの連中だよ!」
その話を聞いたジルーもオモシロがった。
「冒険者街の最大勢力と2番手の戦いかぁ……おもしろーい! どっちが勝ったの?」
「それが、取り合いになったところで、3番手のシャドーアローズまで参戦したから、もう大混乱!」
さすがにそこまで話がややこしくなると笑えない。
「っていうか、その女の子って……大丈夫なの? ケガとかしてるんじゃ……」
アピゲイルは、僕を見て話の続きを言った。
「まだ続きはあるよ。そこに今度はね……他の中小ギルドの面々までヒーラーお嬢さんを奪おうとしたから、ますますワケがわからないことになったんだよ」
思わずオリヴィアを見ると、青ざめた顔をしていた。
彼女は幸いにもしっかりしているから、誰にもヒーラーだと悟られることはなかったが、何かの拍子に気付かれたら、僕やスティレットも巻き込まれる形で強奪騒ぎに巻き込まれていたかもしれない。
いや、スティレットもユニコーンなので、きっと冒険者街は恐ろしいことになっただろう。
舟がギルドへと着いたとき、フロンティア・トリトンズには別の有翼人も来ており、彼はフェリシティーと話をしていた。
「……というわけで、私が見聞きしただけでも死者11名。重傷者やけが人は合わせて100人以上出ているようだ」
「そ、それは……大惨事になりましたね」
「あ、カールギルド長!」
アピゲイルが話しかけた人物は、立派なタカの翼を持つ男性だった。
どうやら彼は、有翼人のギルド【ボレアスウインド】のギルド長らしく、威厳というか威圧感を周囲に放っていた。
カールはフェリシティーに言った。
「まあ君のことだから抜かりはないと思うが、ヒーラーを加えたという噂は冒険者街にも広がっている。十分に警戒してくれ」
「ご助言。感謝いたします」
カールはギルドから出ると、さっそうと飛び立っていった。
【空中で制止するアピゲイル】
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