チート能力【九尾の力】が、異世界でどこまで通用するのか試してみる ~ナインテール・アタッカー~

スィグトーネ

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12.ゴブリン討伐

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 ゴブリンの巣穴は、報告の通り森の中にあった。
 見張りをしているゴブリンも、ちょうど居眠りをしており、その手前の広場には人間や動物のモノと思われる骨が散らばっている。
 隣で眺めていたジルーは、目を細めた。
「あそこに散らばっている骨……まだ新しいね」
「ゴブリンは、巣穴の近くにいる生き物なら、人間でも襲って食料にします」
 フォセットは、険しい表情のまま僕を見た。
「旗色が悪ければ撤退もあり得ます。絶対に捕まらないでください」
「肝に銘じておくよ」
 そう答えたら、フォセットは指先を舐めてから風の流れを確認していた。
 そして音を立てずに弓を引き絞り、音もなく矢を放った。矢は風を切るように進んでいき、居眠りをしていたゴブリンの頭に命中。そのままゴブリンは倒れた。

 今の攻撃を合図に、僕、ジルー、マーチル、ラックドナの4人が素早く走り抜けた。
 まずマーチルは、ネコ族の俊敏な動きで岩に飛び乗ると、そのままよじ登っていき、洞窟の割れ目から中へと突入した。続いてジルーも木の枝に飛び移って、岩の隙間からゴブリンの巣穴へと攻め入る。
 僕とラックドナは、正面からゴブリンの洞窟に入ると、そこにはゴブリンでも少し体格の良い連中が、5人ほどたむろしていた。
「ゴ……ブ?」
 ラックドナがショートボウで1匹を射抜くと、残った4匹のゴブリンたちは、慌てた様子で武器を手にした。
 僕もまた、気を引き締めて管狐に攻撃指令を出す。ターゲットはロングボウを手にしたゴブリン。奴が矢を構えるよりも早く倒したいと思ったら、出てきた管狐は1匹だった。
 だけど、今までよりも体が一回り大きく、動きも素早い管狐だ。
「ごびゅ!?」
 管狐は、ゴブリンのアゴに体当たりを見舞い、転倒すると同時に喉元に噛みついて一気に仕留めてみせた。だけど、他のゴブリンたちが管狐に攻撃を加えようとしている。
「そこっ!」
 運が良いことに、入り口から飛んできた矢がゴブリンの背中に刺さり、管狐は攻撃を受けずに済んだ。援護してくれたのはフォセットらしく、彼女は次の矢を番えて、2匹目のゴブリンを打ち抜いている。
 ラックドナもナイフに持ち替えて、残ったゴブリンたちを攻め立てている。かなりこちらが優位な状況だ。
『……!』
 だけどいま、管狐を通して妙な動きをするゴブリンの一団が見えた。敵は本来なら壊滅寸前の味方のフォローをすべきなのに、別方向に進んでいる。逃げる雰囲気でもないし、ジルーやマーチルが戦っている方角とも違う。
「……まさか」
 僕はすぐに2匹目の管狐を飛ばすと、岩陰に待機させた。
 そして岩に耳の部分を密着させていると、ゴブリンたち4匹の足音が聞こえてくる。その反響音も変わった。恐らく表に出たのだろう。
「動いた」
 それから5秒ほどで、先ほどのゴブリン一行が動きを見せた。
 どうやら連中は、フォセットの背後に回り込み、一気にこちらの退路を断って形勢逆転しようとしていたのだろう。フォセットは驚いていたが、そんなゴブリンたちも、僕の管狐の攻撃に驚くことになった。
「ぎゃあっ!?」
 管狐はまず、岩に体当たりをして敵部隊の頭上に岩を落とし、敵が頭上を見上げたところで、岩を伝って後方から忍び寄り、ゴブリンの弓使いを背後から襲った。
 同時に、大きめの管狐もゴブリンの奇襲を察知して引き返し、フォセットと管狐でゴブリン小隊を挟み撃ちにする状況になった。
「よし、ラックドナ……いったん、フォセットを!」
「はい!」
 僕とラックドナは、いったん入り口付近まで後退し、体勢を立て直すことにした。
 僕が近づいたことで管狐たちの戦闘力も上がり、ゴブリン小隊を無事に退けることができたが、その直後にマーチルが洞窟の割れ目から飛び出てきた。
「ゴブリンたちの反応が早い! 今回はこれまでにしよう!」
「そうですね!」
 フォセットが指示を出すと、後から出てきたジルーが煙玉のようなモノを投げつけ、僕たちはその間に撤収した。

 メンバーが一息ついたのは、森を抜けて街外れまで撤収してからだった。
 ゴブリンを刺激した状態で森の中で休憩すれば、思わぬ攻撃を受けるからだが、さすがに全速力で走ったので、息が上がってしまった。
「ぜぇ……ぜぇ……」
 ジルーは不満そうに僕を見つめてくる。
「もう、ソラ君……ゴブリンの巣穴を攻めているときはかっこよかったのに、体力なさすぎだよ!」
「ごめん。確かに、管狐の扱いだけじゃなくって……僕自身の体力も鍛えないとね」
 思ったことを伝えると、ジルーはうんうんと頷きながら言った。
「そうだね。これから毎朝一緒にかけっこしよ!」
「待ってくださいジルー。あまり朝から過剰な運動をすると筋肉が痛んでしまいます。トレーニングなら夕方に行ってください」
「はーい」
 フォセットは、僕に視線を向けた。
「今日のゴブリン討伐……私もまだまだだと感じました。機転を利かせて頂きありがとうございます」
「いや、役に立てたのならよかったよ。それに収穫もあったんだ。管狐の視野でモノを見たりすることもできた」
 そう伝えると、彼女も嬉しそうに微笑んでくれた。
「そ、それは……それは凄いことです!」
 その話を聞いていたジルーたちは、驚いた様子で僕やフォセットを見てきた。
「そ、それって……まさか、あの可愛い白キツネ全部が、ソラ君ってこと!?」
 それはさすがに盛りすぎと思っていたら、フォセットが訂正してくれた。
「いえいえ、さすがにそこまではわかりません。あくまで使い魔それぞれが自立行動をしていることが解っただけです」
 その話を聞いていたラックドナは、にっこりと笑った。
「それでも凄いです!」

 ゴブリン討伐には失敗してしまったが、何かと勉強になる戦いだった。
 特に、使い魔たちの見聞きしたモノを確認できることがわかったのが最大の収穫だろう。
「じゃあ、ソラ君……明日から走り込みしようね!」
「う、うん……お手柔らかに……」


【ラックドナ ワーラクーン17歳 女性】

固有特殊能力A:ステルス(レア度B:★★☆☆):気配・においを消し、敵に探知されづらくなる
固有特殊能力B:器用な指先(レア度D:★☆):弓矢やクロスボウが命中しやすくなる
固有特殊能力C:
実戦経験    C ★★
作戦・判断   C ★★★
勇猛さ     C ★★☆☆
近接戦闘力   C ★★
魔法戦闘力   E
投射戦闘力   C ★★★☆
防御力     C ★★★
機動力     C ★★★
索敵能力    C ★★★

 フォセット隊の偵察役・潜入担当。
 普段は後方から弓矢を用いて戦うことの多い人物。性格は温厚で慎重だが、仲間が危機に瀕したら多少の無茶は辞さないようだ。
 固有特殊能力ステルスを使用すると、現段階でも、ラックドナが目の前にいても、彼女から話しかけられるか、こちらからラックドナを意識して探さないと気付かないというレベル。
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