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32.全面対決
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コボルドのアジトには正面口と裏口があるため、僕たちは2手に分かれることにした。
正面口はウェアウルフの隊長と、ワータイガー、ワーカウ、ヒューマンの弓使い2人の合わせて5人。そして僕たち裏口突入組にも、ウェアウルフとワータイガーの戦士1人ずつを付けてくれた。
「君たちの目標は、あくまで捕まった人々の救出だ。身の危険を感じたらすぐに撤収してくれ」
「わかりました。1秒でも早く目的を達成できるように頑張ります」
僕たち別動隊が裏口へと向かうなか、一足先に隊長率いる正面突破パーティーが攻撃を仕掛けた。洞窟の入り口には複数のコボルドが守りについていたが、隠れ里の獣人隊の戦闘力は圧倒的だった。
「……2対1でいいのか?」
「ナ、ナンダト!?」
「バ、バカナァ!」
一般コボルドやクリーチャーコボルドでは、3人がかりでないと隠れ里の戦士とは互角に戦えなかったようだ。2対1だと、40秒ほどで押し負けていき、1対1の状況では10秒と持たない。
彼らはたったの5人で、10以上いたコボルド守備隊を蹴散らした。
「よし、このままどんどん敵戦力を削るぞ!」
「承知!」
彼らがコボルドたちを倒すと、アジトの奥からは次々と新手のコボルド隊が現れた。
しかし、偵察している管狐の報告では、固有特殊能力で出されたクリーチャーコボルドばかりが増え、自分で考えて動ける一般コボルドの数が少なくなっている様子だ。
僕たちもまた、裏口の見張りをしていたコボルドたちを撃破すると、その勢いのまま洞窟内部を突き進み、ジルーとマーチルが吊り下げられている地点へと到達した。
「早速、助けるのか?」
仲間のワータイガーの戦士が聞いてくると、僕は手で静止してからマーチルに話しかけた。
「……マーチル、管狐は?」
「…………」
「怖い思いをさせてごめんなさい。いま何とかしますね」
そういうセリフと共に手が近づくと、マーチルは牙を剥いて一気に噛みついてきた。
体を大きく動かしたので、次の瞬間にはマフラー代わりの布が落ちていき、彼女の首には『操りの首輪』がしっかりとついている。
僕はそれを見ながら、女ヒューマンが言っていた首輪は1つだけというのは、見事なブラフだったとしみじみ理解した。
「よくあるんだよね。本当は便利なアイテムとかを2・3個持っているんだけど、使いたくないから持ってないと答えるヤツ」
「実は私も、その言い訳を使ったことがあります。便利ですよね……あれ」
「にゃ……にゃああぁあ!」
実はマーチルが噛んだのは人間の腕ではなく、フォセットがスライムを変形して作った偽物の手だったのである。
隣でぶら下がっているジルーも、目を白黒させながら「ワワワワン!?」と疑問形の鳴き声を上げた。
「フォセットは、絶対マナ感覚の持ち主だよ? 何時間も同じスライムを張り付けていたら……説得されると思った方がいい」
「まあ、この仔は、指導も行き届いていましたから時間がかかりましたけどね」
「悪いけど、2人はもうしばらくぶら下がってて」
「わ、ワワワワワン! ワワ~~~ン!!」
味方に吠え面をかかれると変な気分になるが、下手に解放して暴れられるよりはよほどいいだろう。
2人を放置して先に進むと、近くにいたウェアウルフの戦士は不思議そうに聞いてきた。
「ところで、一つわからんことがあるのだが?」
「なんでしょう?」
「敵がジルー殿の首輪を外してマーチル殿に付ける……ということもあり得たはず。どうして2つあると?」
その質問にはフォセットが答えた。
「ジルーの性格を考えると、マーチルだけが操られていたら、絶対に何かしらのジェスチャーをしてくれます」
「機転の利く彼女が操られていたから、僕たちも手を焼いたんですよ」
「なるほど……つまりあの光景は、2人そろって操られていないと、あり得ないということか……」
「おい、見てくれ!」
助太刀してくれているウェアウルフとワータイガーは、険しい表情で奥を睨んだ。
「……フォセット、君を豪い目に遭わせたのは、あの女か?」
フォセットと一緒に奥を見ると、そこには黒幕である女ヒューマンがいた。反対側の入り口にはウェアウルフ隊長率いる正面突入隊の姿もあり、僕たちは表と裏から挟撃する形になっている。
「お前は完全に包囲されている……降伏せよ!」
「……冗談じゃないわ!」
女ヒューマンは叫ぶと、周囲に何体ものコボルドを出してきた。
「予め言っておくけど、入り口を守っていた雑魚連中と一緒にしないことね。パラメータを戦闘力に……極振りさせてもらったから」
正面口はウェアウルフの隊長と、ワータイガー、ワーカウ、ヒューマンの弓使い2人の合わせて5人。そして僕たち裏口突入組にも、ウェアウルフとワータイガーの戦士1人ずつを付けてくれた。
「君たちの目標は、あくまで捕まった人々の救出だ。身の危険を感じたらすぐに撤収してくれ」
「わかりました。1秒でも早く目的を達成できるように頑張ります」
僕たち別動隊が裏口へと向かうなか、一足先に隊長率いる正面突破パーティーが攻撃を仕掛けた。洞窟の入り口には複数のコボルドが守りについていたが、隠れ里の獣人隊の戦闘力は圧倒的だった。
「……2対1でいいのか?」
「ナ、ナンダト!?」
「バ、バカナァ!」
一般コボルドやクリーチャーコボルドでは、3人がかりでないと隠れ里の戦士とは互角に戦えなかったようだ。2対1だと、40秒ほどで押し負けていき、1対1の状況では10秒と持たない。
彼らはたったの5人で、10以上いたコボルド守備隊を蹴散らした。
「よし、このままどんどん敵戦力を削るぞ!」
「承知!」
彼らがコボルドたちを倒すと、アジトの奥からは次々と新手のコボルド隊が現れた。
しかし、偵察している管狐の報告では、固有特殊能力で出されたクリーチャーコボルドばかりが増え、自分で考えて動ける一般コボルドの数が少なくなっている様子だ。
僕たちもまた、裏口の見張りをしていたコボルドたちを撃破すると、その勢いのまま洞窟内部を突き進み、ジルーとマーチルが吊り下げられている地点へと到達した。
「早速、助けるのか?」
仲間のワータイガーの戦士が聞いてくると、僕は手で静止してからマーチルに話しかけた。
「……マーチル、管狐は?」
「…………」
「怖い思いをさせてごめんなさい。いま何とかしますね」
そういうセリフと共に手が近づくと、マーチルは牙を剥いて一気に噛みついてきた。
体を大きく動かしたので、次の瞬間にはマフラー代わりの布が落ちていき、彼女の首には『操りの首輪』がしっかりとついている。
僕はそれを見ながら、女ヒューマンが言っていた首輪は1つだけというのは、見事なブラフだったとしみじみ理解した。
「よくあるんだよね。本当は便利なアイテムとかを2・3個持っているんだけど、使いたくないから持ってないと答えるヤツ」
「実は私も、その言い訳を使ったことがあります。便利ですよね……あれ」
「にゃ……にゃああぁあ!」
実はマーチルが噛んだのは人間の腕ではなく、フォセットがスライムを変形して作った偽物の手だったのである。
隣でぶら下がっているジルーも、目を白黒させながら「ワワワワン!?」と疑問形の鳴き声を上げた。
「フォセットは、絶対マナ感覚の持ち主だよ? 何時間も同じスライムを張り付けていたら……説得されると思った方がいい」
「まあ、この仔は、指導も行き届いていましたから時間がかかりましたけどね」
「悪いけど、2人はもうしばらくぶら下がってて」
「わ、ワワワワワン! ワワ~~~ン!!」
味方に吠え面をかかれると変な気分になるが、下手に解放して暴れられるよりはよほどいいだろう。
2人を放置して先に進むと、近くにいたウェアウルフの戦士は不思議そうに聞いてきた。
「ところで、一つわからんことがあるのだが?」
「なんでしょう?」
「敵がジルー殿の首輪を外してマーチル殿に付ける……ということもあり得たはず。どうして2つあると?」
その質問にはフォセットが答えた。
「ジルーの性格を考えると、マーチルだけが操られていたら、絶対に何かしらのジェスチャーをしてくれます」
「機転の利く彼女が操られていたから、僕たちも手を焼いたんですよ」
「なるほど……つまりあの光景は、2人そろって操られていないと、あり得ないということか……」
「おい、見てくれ!」
助太刀してくれているウェアウルフとワータイガーは、険しい表情で奥を睨んだ。
「……フォセット、君を豪い目に遭わせたのは、あの女か?」
フォセットと一緒に奥を見ると、そこには黒幕である女ヒューマンがいた。反対側の入り口にはウェアウルフ隊長率いる正面突入隊の姿もあり、僕たちは表と裏から挟撃する形になっている。
「お前は完全に包囲されている……降伏せよ!」
「……冗談じゃないわ!」
女ヒューマンは叫ぶと、周囲に何体ものコボルドを出してきた。
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