チート能力【九尾の力】が、異世界でどこまで通用するのか試してみる ~ナインテール・アタッカー~

スィグトーネ

文字の大きさ
33 / 46

32.全面対決

しおりを挟む
 コボルドのアジトには正面口と裏口があるため、僕たちは2手に分かれることにした。
 正面口はウェアウルフの隊長と、ワータイガー、ワーカウ、ヒューマンの弓使い2人の合わせて5人。そして僕たち裏口突入組にも、ウェアウルフとワータイガーの戦士1人ずつを付けてくれた。
「君たちの目標は、あくまで捕まった人々の救出だ。身の危険を感じたらすぐに撤収してくれ」
「わかりました。1秒でも早く目的を達成できるように頑張ります」
 僕たち別動隊が裏口へと向かうなか、一足先に隊長率いる正面突破パーティーが攻撃を仕掛けた。洞窟の入り口には複数のコボルドが守りについていたが、隠れ里の獣人隊の戦闘力は圧倒的だった。
「……2対1でいいのか?」
「ナ、ナンダト!?」
「バ、バカナァ!」
 一般コボルドやクリーチャーコボルドでは、3人がかりでないと隠れ里の戦士とは互角に戦えなかったようだ。2対1だと、40秒ほどで押し負けていき、1対1の状況では10秒と持たない。
 彼らはたったの5人で、10以上いたコボルド守備隊を蹴散らした。
「よし、このままどんどん敵戦力を削るぞ!」
「承知!」
 彼らがコボルドたちを倒すと、アジトの奥からは次々と新手のコボルド隊が現れた。
 しかし、偵察している管狐の報告では、固有特殊能力で出されたクリーチャーコボルドばかりが増え、自分で考えて動ける一般コボルドの数が少なくなっている様子だ。

 僕たちもまた、裏口の見張りをしていたコボルドたちを撃破すると、その勢いのまま洞窟内部を突き進み、ジルーとマーチルが吊り下げられている地点へと到達した。
「早速、助けるのか?」
 仲間のワータイガーの戦士が聞いてくると、僕は手で静止してからマーチルに話しかけた。
「……マーチル、管狐は?」
「…………」
「怖い思いをさせてごめんなさい。いま何とかしますね」
 そういうセリフと共に手が近づくと、マーチルは牙を剥いて一気に噛みついてきた。
 体を大きく動かしたので、次の瞬間にはマフラー代わりの布が落ちていき、彼女の首には『操りの首輪』がしっかりとついている。
 僕はそれを見ながら、女ヒューマンが言っていた首輪は1つだけというのは、見事なブラフだったとしみじみ理解した。
「よくあるんだよね。本当は便利なアイテムとかを2・3個持っているんだけど、使いたくないから持ってないと答えるヤツ」
「実は私も、その言い訳を使ったことがあります。便利ですよね……あれ」
「にゃ……にゃああぁあ!」
 実はマーチルが噛んだのは人間の腕ではなく、フォセットがスライムを変形して作った偽物の手だったのである。
 隣でぶら下がっているジルーも、目を白黒させながら「ワワワワン!?」と疑問形の鳴き声を上げた。
「フォセットは、絶対マナ感覚の持ち主だよ? 何時間も同じスライムを張り付けていたら……説得されると思った方がいい」
「まあ、この仔は、指導も行き届いていましたから時間がかかりましたけどね」
「悪いけど、2人はもうしばらくぶら下がってて」
「わ、ワワワワワン! ワワ~~~ン!!」
 味方に吠え面をかかれると変な気分になるが、下手に解放して暴れられるよりはよほどいいだろう。

 2人を放置して先に進むと、近くにいたウェアウルフの戦士は不思議そうに聞いてきた。
「ところで、一つわからんことがあるのだが?」
「なんでしょう?」
「敵がジルー殿の首輪を外してマーチル殿に付ける……ということもあり得たはず。どうして2つあると?」
 その質問にはフォセットが答えた。
「ジルーの性格を考えると、マーチルだけが操られていたら、絶対に何かしらのジェスチャーをしてくれます」
「機転の利く彼女が操られていたから、僕たちも手を焼いたんですよ」
「なるほど……つまりあの光景は、2人そろって操られていないと、あり得ないということか……」
「おい、見てくれ!」
 助太刀してくれているウェアウルフとワータイガーは、険しい表情で奥を睨んだ。
「……フォセット、君を豪い目に遭わせたのは、あの女か?」
 フォセットと一緒に奥を見ると、そこには黒幕である女ヒューマンがいた。反対側の入り口にはウェアウルフ隊長率いる正面突入隊の姿もあり、僕たちは表と裏から挟撃する形になっている。
「お前は完全に包囲されている……降伏せよ!」
「……冗談じゃないわ!」
 女ヒューマンは叫ぶと、周囲に何体ものコボルドを出してきた。
「予め言っておくけど、入り口を守っていた雑魚連中と一緒にしないことね。パラメータを戦闘力に……極振りさせてもらったから」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ハイエルフ少女と三十路弱者男の冒険者ワークライフ ~最初は弱いが、努力ガチャを引くたびに強くなる~

スィグトーネ
ファンタジー
 年収が低く、非正規として働いているため、決してモテない男。  それが、この物語の主人公である【東龍之介】だ。  そんな30歳の弱者男は、飲み会の帰りに偶然立ち寄った神社で、異世界へと移動することになってしまう。  異世界へ行った男が、まず出逢ったのは、美しい紫髪のエルフ少女だった。  彼女はエルフの中でも珍しい、2柱以上の精霊から加護を受けるハイエルフだ。  どうして、それほどの人物が単独で旅をしているのか。彼女の口から秘密が明かされることで、2人のワークライフがはじまろうとしている。 ※この物語で使用しているイラストは、AIイラストさんのものを使用しています。 ※なかには過激なシーンもありますので、外出先等でご覧になる場合は、くれぐれもご注意ください。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記

ノン・タロー
ファンタジー
 ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。  これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。 設定 この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。 その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処理中です...