戦力外よりみち勇者のパカパカ冒険記 ~微妙と言われた僕の能力は、ロマンあふれる代物でした~

スィグトーネ

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19.ウマ勇者、遭難の危機!

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 今回の戦闘で晴れてレベル10となった僕は、初めて近接戦闘力にボーナスポイントを使うことにした。
 そういえば、初めて魔法戦闘力にポイントを振ったら、リッカシデン号が喋りはじめたし、狙撃戦闘力に振ってみたら背中に翼が生えてきたのを思い出した。
 近接戦闘力に振ると、どんなことが起こるのだろう。

 早速試してみると、見た目はあまり変化はなかった。
 ふむ……魔法や狙撃に比べて、近接戦は地味なのだろうか。そう思っていると、僕の霊力が身体をコーティングし、特に腕周りの霊力が強くなっていることに気が付いた。
「こ、これって……!」

 試しに調理用に持っていたナイフを左手で持ってみると、僕の霊力が刃先に馴染んで、その威力が上昇していることがわかった。
 もしかして霊力って、服とか武器とかの性能を上げる効果があるのだろうか。

 僕がキョロキョロとしていると、シャーロットが話しかけてきた。
「どうやら勇者さまも、霊力の使い方がわかったようね」
「もしかして、みんな……こういうことをしていたのかい?」
 質問すると、彼女は頷いた。
「まあ、貴方みたいに、簡単に上達した人は初めてだけどね」
「そうなの?」
「ええ普通は、今のあなたのように使いこなすだけでも、2・3年は下積み修業をしないといけないくらいよ」

 まさか、僕のボーナスポイントって、1ポイントが普通の冒険者の1年分の経験を得るということか。だとしたら……かなり優遇されている。


 この調子でレベルアップすれば、ロドルフォやリッカシデン……には及ばなくても、フリーダと互角に戦えるくらいに強くなれるかもしれない。
 まだまだレベルアップしたい。思いながら周囲を見渡すと、おや……僕は一体、どの方角を見ているのだろう。

 わからなかったので、仲間に聞いてみることにした。
「どっちの方角がクレバスだっけ?」
 そう質問すると、シャーロットも困り顔になって周囲を見渡した。
「そういえば、どこからきたんだっけ?」
「…………」
「…………」
「…………」
 ベルタやマーチルに質問してみても、見当がつかないらしく、僕は恐るべきことに気が付いた。

 これ、ひょっとして、遭難したのではないだろうか?


 マーチルはすぐに、スィグワロス号を見た。
「ね、ねえ……帰り道、アンタならわかるでしょ?」
『……ヒヒーン』
 確かにウマの嗅覚は人間の1000倍あるらしいが、スィグワロス号では人間の言葉を理解できないようだ。

 そうなると、この中で、鼻が効きそうなのはマーチルだろう。
「マーチル。僕たちのニオイを辿って、街まで戻る事とか……」
「ごめん。あたしの鼻って、そんなに良くないのよ」
「シャーロットは?」
「私達が歩いたくらいでは、マナも本当に些細な変化しかしないわね」
 ベルタを見ても、申し訳無さそうな顔をするしかないようだ。つまり、もう手詰まりということか?


 いやいや、出来ませんでは済まされないぞ。何か手はないのだろうか。
 仲間には一通り聞いてしまったし、僕自身にも解決できそうな力はない。
 僕は再びスィグワロス号を見た。
「ねえ、もし……話が理解できるのなら、首を振るくらいの反応はして欲しい」
『…………』
「本当に困っているんだ……」

 もしかしたら、このウマもユニコーンかもしれない。
 一途の望みにかけながら真剣にお願いしてみると、スィグワロス号はなんと……
『ヒヒーン♪』
 変顔をしてきた。

 一同がしばらく黙り込むと、マーチルは頭を掻きながら言う。
「この仔に、期待するだけ時間のムダだよ。牧場の半額セールで売れ残って、7割引で買ったウマだもん」
「惜しいなぁ、体格は立派なのに……」
「うん。いろいろとツッコミどころ満載な仔なの……」


 こ、こうなってしまったら……最後の手段だ。
 後で色々と言われるのが嫌だから黙っていたが、リッカシデン号なら、ヒントくらいはくれるかもしれない。
 意識を彼に向けてみた。
「…………」
『…………』
「…………」
『………ぐ~す~』

「…………」

 シャーロットは、恐る恐るという感じで聞いてきた。
「ねえ、おウマさまは何て……?」
「……ぐ~す~ぐ~す~」
 僕の答えを聞き、ベルタやシャーロットの表情が曇っていく。
「つまり、これくらいのことは自分たちで解決しなさい……ということですか……」
「そう……なるね……」

 迷ったのなら【帰還石】を使えばいいじゃないかと思う人もいるだろう。だけどあれは、クレバス内部から、1階層の入り口まで戻る代物だから、今は持っていない。
 これ、一体……どうすればいいんだ!?
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