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29.ストーンゴーレムの強さ
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武術大会2回戦。インディゴメイルズとの中堅戦。
もう後の無いインディゴメイルズは、選手の中で最も霊力の強い戦士を送り出してきた。
霊力の放出量は、うちのチームで言えば竜人アルマンと同等くらいだろうか。
エルフのシャーロットは、そのインディゴメイルズの中堅を見ると、何と戦士が立つ位置に着いた。
その位置取りには対戦相手や観客さえも、度肝を抜かれたようである。僕も正直に言って、彼女が何を考えているのかわからない。
弓使いや魔法使いが戦士に勝つには、普通はアウトレンジから攻撃するしかない。接近されて戦士有利の間合いにされればまず勝ち目はないからである。
「では、中堅戦……はじめ!」
インディゴメイルズの中堅は、シャーロットを睨むと突進するように攻めかかってきた。魔法使いなのに戦士の位置まで出てきて挑発されたと思ったのだろう。
一方でシャーロットは素早く身を翻すと、そのままリングの壊れた場所まで走り、そこに手を付いた。
その1つの動きで、僕はハッとされられた。
これは次鋒戦で対戦相手が壊した場所だ。リングの一部をゴーレム化するには、かなりの労力が必要だが、すでに砕けている場所があるのなら話は違ってくる。
インディゴメイルズの中堅が向かってきたとき、シャーロットはストーンゴーレムをリングの破損部分から作り出していた。
それは紛れもなくウマの姿をしており、観客たちは驚きを持ってストーンゴーレムを指さしていた。
「あ、あれ……ウマじゃねえか!」
「ほ、本当だ!」
「もしかして、あのエルフが勇者か!?」
「いや、わかんねーぞ、控えにもウマがいたじゃん!」
インディゴメイルズの中堅は、ストーンゴーレムに攻撃を加えるも、あまりダメージはないようだ。
ストーンゴーレムは体当たりや噛みつきで、インディゴメイルズの中堅に次々とダメージを与えていく。更にシャーロットは壊れたリングに手を当てて、次のゴーレムの制作を進めていた。
中堅が果敢に攻めてゴーレムを半壊させたときには、すでに次のゴーレムが完成して中堅に攻めかかる状況となっていた。
シャーロットはだいぶ削られたリングに手を当て、3台目のゴーレム作成を始めた。
この戦いは長期戦となりタイムアップとなったが、インディゴメイルズの中堅とシャーロットの状況で、分があるのはどちらかは明らかだ。
判定の結果、2対1でシャーロットは勝利を勝ち取り、僕たちは何とか3回戦にコマを進めることができた。
――3試合中2試合が判定勝ちか……なかなか難しい試合が続いたね
リッカシデン号が脳内テレパシーを送ってくると、僕も「そうだね」と言いながら頷いた。
だけど、この段階で負傷退場が無く、ロドルフォとフリーダを温存できているのは大きい。次の3回戦の相手はどんなチームなのだろう。
リングの修繕は30分ほどで終わったため、僕たちが観客席に着いたときには、ちょうどいいタイミングで試合がはじまろうとしていた。
片方はシード枠を持っている田舎勇者チーム。もう片方は大手ギルドの代表チームだ。
僕の前の席に腰掛けていたシャーロットは、腕を組みながら言う。
「ここで大事なのは、田舎勇者チームの誰が勇者なのかを見定めることなのよ」
「うんわかる……それで、こちらの勇者が誰かを悟らせないことも大事だよね」
シャーロットはよく出来ましたと言いたそうに微笑んでいた。
なるほど。だから彼女はさっきの試合で、ゴーレムをウマの形状にして出したわけか。
リングの上では挨拶も終わり、各チームの先鋒以外が自分たちのベンチに戻っていく。
田舎勇者チームの戦法はウェアウルフの戦士。相手チームの戦法もウェアウルフの戦士だ。
奇しくも、同系統の戦士でバッティングしたわけだが、優れているのはどちらだろう。
「では、始めてください!」
両選手は一歩も引かない戦いを始めたが、おや、田舎勇者チームの先鋒選手のほうが、強い霊力を纏っている。
どうやら、相手チームの先鋒と田舎勇者チームの先鋒は、知り合いらしく、相手チームの先鋒は悔しそうに呟いていた。
「くそ、こいつ……いつの間に、こんなに強く!」
先鋒戦は3分強で決着がつき、勇者チームが勝利。
続いては次鋒戦。田舎勇者チームは軽装戦士。一方大手ギルドは重武装での対決になった。
次鋒戦もフタを開けてみれば、田舎勇者チームに分があるモノとなった。
よく見てみると、勇者チームの軽装戦士も、霊力ブーストを受けているらしく、素早い身のこなしで大手ギルドの戦士を翻弄している。
この試合は判定となったが、3ー0で田舎勇者チームの勝利。
すぐに中堅戦へと移った。
中堅戦は、どちらも弓使いという遠距離対決となった。
どうやら、大手ギルドはベテランの戦士を起用したらしく、序盤は大手ギルド優勢ですすんだ。
しかし尻上がりに、田舎勇者チームの女弓使いは調子をとりもどし、こちらも判定となったが、主審と片方の副審が引き分け。残る副審の一人が田舎勇者チームの旗を挙げたので、田舎勇者チームがストレート勝ちとなった。
「なんだか、私たちの試合を再現されているような……嫌な試合運びだったね……」
シャーロットが言うと、マーチルも頷いた。
けっきょく勇者が誰なのかも解らず、不気味な状態のまま僕たちは宿に帰らなければならなかった。
もう後の無いインディゴメイルズは、選手の中で最も霊力の強い戦士を送り出してきた。
霊力の放出量は、うちのチームで言えば竜人アルマンと同等くらいだろうか。
エルフのシャーロットは、そのインディゴメイルズの中堅を見ると、何と戦士が立つ位置に着いた。
その位置取りには対戦相手や観客さえも、度肝を抜かれたようである。僕も正直に言って、彼女が何を考えているのかわからない。
弓使いや魔法使いが戦士に勝つには、普通はアウトレンジから攻撃するしかない。接近されて戦士有利の間合いにされればまず勝ち目はないからである。
「では、中堅戦……はじめ!」
インディゴメイルズの中堅は、シャーロットを睨むと突進するように攻めかかってきた。魔法使いなのに戦士の位置まで出てきて挑発されたと思ったのだろう。
一方でシャーロットは素早く身を翻すと、そのままリングの壊れた場所まで走り、そこに手を付いた。
その1つの動きで、僕はハッとされられた。
これは次鋒戦で対戦相手が壊した場所だ。リングの一部をゴーレム化するには、かなりの労力が必要だが、すでに砕けている場所があるのなら話は違ってくる。
インディゴメイルズの中堅が向かってきたとき、シャーロットはストーンゴーレムをリングの破損部分から作り出していた。
それは紛れもなくウマの姿をしており、観客たちは驚きを持ってストーンゴーレムを指さしていた。
「あ、あれ……ウマじゃねえか!」
「ほ、本当だ!」
「もしかして、あのエルフが勇者か!?」
「いや、わかんねーぞ、控えにもウマがいたじゃん!」
インディゴメイルズの中堅は、ストーンゴーレムに攻撃を加えるも、あまりダメージはないようだ。
ストーンゴーレムは体当たりや噛みつきで、インディゴメイルズの中堅に次々とダメージを与えていく。更にシャーロットは壊れたリングに手を当てて、次のゴーレムの制作を進めていた。
中堅が果敢に攻めてゴーレムを半壊させたときには、すでに次のゴーレムが完成して中堅に攻めかかる状況となっていた。
シャーロットはだいぶ削られたリングに手を当て、3台目のゴーレム作成を始めた。
この戦いは長期戦となりタイムアップとなったが、インディゴメイルズの中堅とシャーロットの状況で、分があるのはどちらかは明らかだ。
判定の結果、2対1でシャーロットは勝利を勝ち取り、僕たちは何とか3回戦にコマを進めることができた。
――3試合中2試合が判定勝ちか……なかなか難しい試合が続いたね
リッカシデン号が脳内テレパシーを送ってくると、僕も「そうだね」と言いながら頷いた。
だけど、この段階で負傷退場が無く、ロドルフォとフリーダを温存できているのは大きい。次の3回戦の相手はどんなチームなのだろう。
リングの修繕は30分ほどで終わったため、僕たちが観客席に着いたときには、ちょうどいいタイミングで試合がはじまろうとしていた。
片方はシード枠を持っている田舎勇者チーム。もう片方は大手ギルドの代表チームだ。
僕の前の席に腰掛けていたシャーロットは、腕を組みながら言う。
「ここで大事なのは、田舎勇者チームの誰が勇者なのかを見定めることなのよ」
「うんわかる……それで、こちらの勇者が誰かを悟らせないことも大事だよね」
シャーロットはよく出来ましたと言いたそうに微笑んでいた。
なるほど。だから彼女はさっきの試合で、ゴーレムをウマの形状にして出したわけか。
リングの上では挨拶も終わり、各チームの先鋒以外が自分たちのベンチに戻っていく。
田舎勇者チームの戦法はウェアウルフの戦士。相手チームの戦法もウェアウルフの戦士だ。
奇しくも、同系統の戦士でバッティングしたわけだが、優れているのはどちらだろう。
「では、始めてください!」
両選手は一歩も引かない戦いを始めたが、おや、田舎勇者チームの先鋒選手のほうが、強い霊力を纏っている。
どうやら、相手チームの先鋒と田舎勇者チームの先鋒は、知り合いらしく、相手チームの先鋒は悔しそうに呟いていた。
「くそ、こいつ……いつの間に、こんなに強く!」
先鋒戦は3分強で決着がつき、勇者チームが勝利。
続いては次鋒戦。田舎勇者チームは軽装戦士。一方大手ギルドは重武装での対決になった。
次鋒戦もフタを開けてみれば、田舎勇者チームに分があるモノとなった。
よく見てみると、勇者チームの軽装戦士も、霊力ブーストを受けているらしく、素早い身のこなしで大手ギルドの戦士を翻弄している。
この試合は判定となったが、3ー0で田舎勇者チームの勝利。
すぐに中堅戦へと移った。
中堅戦は、どちらも弓使いという遠距離対決となった。
どうやら、大手ギルドはベテランの戦士を起用したらしく、序盤は大手ギルド優勢ですすんだ。
しかし尻上がりに、田舎勇者チームの女弓使いは調子をとりもどし、こちらも判定となったが、主審と片方の副審が引き分け。残る副審の一人が田舎勇者チームの旗を挙げたので、田舎勇者チームがストレート勝ちとなった。
「なんだか、私たちの試合を再現されているような……嫌な試合運びだったね……」
シャーロットが言うと、マーチルも頷いた。
けっきょく勇者が誰なのかも解らず、不気味な状態のまま僕たちは宿に帰らなければならなかった。
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