花嫁ゲーム

八木愛里

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22　最終ゲーム③

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「……モナークさま」
　
　私は彼に話しかけた。彼は「なんだ？」と返事をする。
　
「花嫁ゲームが始まったばかりのときに『いくつかのゲームに勝ち抜いた一名が、モナークさまと結婚する資格を与えられます』と支配人から言われましたね？」

　私の問いかけに、モナークさまは首を傾げる。
　
「その通りだが……」
　
　それを聞いて、私はしばらく黙ったあと口を開いた。
　
「……そうですか。じゃあ最後の一人になった私はモナークさまとの結婚の資格を手に入れたということで間違いないですか？」

　私の質問に、モナークさまは目を丸くした。

「そんな言いがかりは通りませんよ！」
「クロガネ、黙れ」
　
　支配人が話に割ってこようとしたが、モナークさまが制止した。
　
「お前はネルが最後の一人になれば良いと思っていたから、あのルールを提示したんだ。そうだろう？」
　
　モナークさまが尋ねると、支配人は「そうです」と頷いた。
　
「ちまたでは花嫁ゲームの優勝者を予想して賭け事をするのが流行っているらしいな。それで、お前はネルを勝たせて賭け金を山分けしようとしてたんだ」
　
　モナークさまは淡々と説明した。支配人は唇を嚙む。どうやら図星だったようだ。
　
「だから、ネルが勝ち残るように誘導していたのね……」
　
　私は支配人を睨みながら言う。彼は「くっ」と悔しそうな声を出した後「そうだ！その通りだよ！」と言った。

「私は金が欲しかったんだ！そのためにはネルが勝ち残る必要があった！　だが、彼女はもういない。だから……っ！」
　
「だから？」とモナークさまが聞き返すと、支配人は「ひっ」と怯えたような声を出した。

「ネルが敗退したから許してくれって言うのか？」
「そうだ！　だから、もう許してくれ……頼む」
　
　支配人は懇願するようにモナークさまに向かって言った。だが、彼の願いを聞き入れられることはなかった。
　
「ダメだ」
　
　モナークさまは短く答えると、パチンと指を鳴らした。すると、執事たちが一斉に動き出し、あっという間に支配人を取り囲んだ。そして彼らは手に持っているナイフを一斉に突き付けた。
　
「なっ……何をするつもりだ！」
　
　支配人が叫ぶが、誰も答えない。ただ静かに彼を見ているだけだった。

「クロガネ」
　
　モナークさまに名前を呼ばれると、彼はビクッと体を震わせた。そしてゆっくりと顔を上げる。
　
「……はい？」と返事をする彼に向かって、モナークさまは言った。
　
「お前のような人間は嫌いだ」
「……っ！」
　
　クロガネは言葉を失い、顔面蒼白になった。
　
「潔く死ね」

　モナークさまは冷たく言い放つ。そしてパチンと指を鳴らした。ナイフが支配人の首元に突き刺さると、彼は苦しそうに呻いた。執事たちはクロガネの首を一瞬で切り落とすと、素早く死体を処理する。見事な手さばきだった。
　
　モナークさまは静かに立ち上がると、私に向かって言った。
　
「これで邪魔者はいなくなったな」

　私はゆっくりと立ち上がる。モナークさまは私を見つめながら言った。
　
「さて、アカネ。君だけが勝者になったわけだが……」
　
　彼はニヤリと笑うと言った。
　
「君は何を望む？」
　
　モナークさまからそう聞かれ、私は仮面の奥の彼に向かって言った。
　
「じゃあ……結婚する資格を与えられたのだから、その仮面は外してほしいわね」
「仮面を外せ……だと？」
　
　モナークさまは驚いたような声を出したが、私は構わず続けた。
　
「そうよ。だって、結婚相手の顔も知らないなんておかしいでしょう？」
「それはそうだが……」

　彼は口ごもる。私はさらに畳みかけるように言った。
　
「それにね、私はあなたのことをもっと知りたいの」
「……っはは！」
　
　突然笑い始めたモナークさまに、私は戸惑う。彼はしばらく笑ったあと、私を見て言った。

「……わかった。君の言う通りにしよう」
　
　彼はそう言うと、自分の仮面に手を伸ばした。そしてゆっくりと仮面を剝がす。
　露になった彼の顔を見た私は息を吞んだ。

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