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天降る天使の希い
雨の月 その一
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長兄であるアミールへの手紙を書き終えると、ソルーシュはアービと名付けた鷹を呼び寄せた。
鷹はソルーシュの肩に乗ると甘えるように頬ずりをした。
「アービ、遠いから気をつけて行ってくるんだよ?」
正式にソルーシュが主人となった鷹は、しとしとと小雨が降り注ぐ黒い森のその先へと飛び立っていくのを確認してから、ソルーシュは扉を閉めた。
細い格子が透かしになっている木の扉の感触に、改めて自分が賢高という異国にいることを実感した。
手紙で聞いた木の家は、もっと簡素なものを思い浮かべていた。
故国トルナヴィエで木の家と言えば、庶民、それも浮浪者と呼ばれるような貧困層の家のことを言う。
水の少ないトルナヴィエで木は貴重だ。大木と呼ばれるものは王侯貴族でなければ手に入れることはできない。
一般的な庶民であれば自ら日干し煉瓦を作り、家を建てるが浮浪者にはそれすらも手に入れることはできない。
木材としての価値はなく、実もつかないような低木の細木を集め、蔓で繋ぎ、その葉で覆うだけの家とも呼べないものを、ソルーシュはよく知っていた。
城についてから一週間、異例の速さでソルーシュと蒼鷹は婚姻した。
儀式が簡素なものだったのは、蒼鷹が中継ぎの王であり、新婦が男だったためである。決して、早く王妃と共寝がしたくて、王が急がせたわけではない、多分。
城内の祭礼殿での儀式も終わり、後宮の入り口、朱麗門に蒼鷹と並び立つとその先には想像以上に華やかな建物が見えた。
故国では見たこともないような、等間隔に並んだ太い柱は朱に塗られ、、白い漆喰をさらに白く見せた。
雲ひとつない濃い青空を切り取るように、朱の甍は日を浴びて光輝いていた。
立ち尽くすソルーシュに、蒼鷹は『どうだ? 気に入ったか?』と問いかけた。
『レンガとは全然違いますね。それに……ここだと蒼鷹が目立ちます』
旅の途中で真っ白な国を訪れた際、自分たちが目立っていたことを思い出した。
確かにここならどのような派手な色を着ていても目立つことはないだろうが、むしろ長い黒髪に黒い袍をまとった蒼鷹は、くっきりと浮き出るほどに目立つ気がした。
『目立たぬように黒を着ていたんだが……逆効果だったか』
『そうですね。でも、とても似合ってるのでワタシは好きです』
眉を顰めて黒地に黒い刺繍を施した大袖を振る蒼鷹を、ソルーシュは眩しい気持ちで見つめた。
『そうか。なら良い』
蒼鷹は振っていた手をそのまま、ソルーシュに向けた。
きょとんとしたソルーシュに蒼鷹は『妻は夫の手に引かれて新居に入るしきたりなんだ』と目を細めた。
雨に濡れた朱の甍は、ソルーシュに初めての夜を思い起こさせた。ぞわりとした感覚が背を抜けて、ソルーシュは大きくかぶりを振った。
賢高に来てから一ヶ月、婚姻し、後宮の主となって二週間が過ぎようとしていた。
鷹はソルーシュの肩に乗ると甘えるように頬ずりをした。
「アービ、遠いから気をつけて行ってくるんだよ?」
正式にソルーシュが主人となった鷹は、しとしとと小雨が降り注ぐ黒い森のその先へと飛び立っていくのを確認してから、ソルーシュは扉を閉めた。
細い格子が透かしになっている木の扉の感触に、改めて自分が賢高という異国にいることを実感した。
手紙で聞いた木の家は、もっと簡素なものを思い浮かべていた。
故国トルナヴィエで木の家と言えば、庶民、それも浮浪者と呼ばれるような貧困層の家のことを言う。
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一般的な庶民であれば自ら日干し煉瓦を作り、家を建てるが浮浪者にはそれすらも手に入れることはできない。
木材としての価値はなく、実もつかないような低木の細木を集め、蔓で繋ぎ、その葉で覆うだけの家とも呼べないものを、ソルーシュはよく知っていた。
城についてから一週間、異例の速さでソルーシュと蒼鷹は婚姻した。
儀式が簡素なものだったのは、蒼鷹が中継ぎの王であり、新婦が男だったためである。決して、早く王妃と共寝がしたくて、王が急がせたわけではない、多分。
城内の祭礼殿での儀式も終わり、後宮の入り口、朱麗門に蒼鷹と並び立つとその先には想像以上に華やかな建物が見えた。
故国では見たこともないような、等間隔に並んだ太い柱は朱に塗られ、、白い漆喰をさらに白く見せた。
雲ひとつない濃い青空を切り取るように、朱の甍は日を浴びて光輝いていた。
立ち尽くすソルーシュに、蒼鷹は『どうだ? 気に入ったか?』と問いかけた。
『レンガとは全然違いますね。それに……ここだと蒼鷹が目立ちます』
旅の途中で真っ白な国を訪れた際、自分たちが目立っていたことを思い出した。
確かにここならどのような派手な色を着ていても目立つことはないだろうが、むしろ長い黒髪に黒い袍をまとった蒼鷹は、くっきりと浮き出るほどに目立つ気がした。
『目立たぬように黒を着ていたんだが……逆効果だったか』
『そうですね。でも、とても似合ってるのでワタシは好きです』
眉を顰めて黒地に黒い刺繍を施した大袖を振る蒼鷹を、ソルーシュは眩しい気持ちで見つめた。
『そうか。なら良い』
蒼鷹は振っていた手をそのまま、ソルーシュに向けた。
きょとんとしたソルーシュに蒼鷹は『妻は夫の手に引かれて新居に入るしきたりなんだ』と目を細めた。
雨に濡れた朱の甍は、ソルーシュに初めての夜を思い起こさせた。ぞわりとした感覚が背を抜けて、ソルーシュは大きくかぶりを振った。
賢高に来てから一ヶ月、婚姻し、後宮の主となって二週間が過ぎようとしていた。
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