タカと天使の文通

三谷玲

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天降る天使の希い

凍の月 その二 ♡

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 ソルーシュがこんなにはっきりと蒼鷹を誘うことははじめてだ。
 どうしていいかわからない。とにかく寝台の上へと蒼鷹を押し倒すと、その帯を解いた。

「どうした?」
「そういう、きぶんです。だめですか?」
「だめというわけではないが……あ、っ」

 不思議に思う蒼鷹の陰茎を取り出すと、当然まだそこには熱も硬さもなかった。
 やわらかい感触を弄ぶように揉んでみる。
 蒼鷹がやにわに声をあげ、気を良くしたソルーシュは更に力を強めた。
 ぎゅっと締め付けてから、力を緩め、左右に振ると少しずつ芯を持ち始めてきた。

――いつも、どうされてるんだっけ?

 自身がされているときのことを思い出して、先端に口づけた。
 ふっくらした唇に、むにっと押し付けるとぴくりと反応を示した。

「ソルーシュ……?」

 蒼鷹の困惑した声が、ソルーシュをむきにさせた。
 そのまま口を開いて陰茎を一気に咥えた。

――これをこすればいいんだよね……?

 酒のせいで思考は曖昧なソルーシュが、思いのままにその分厚い唇で、陰茎を激しく扱いた。

「まて、ソルーシュっ! あ、っ……! おいっ!」

 拙すぎる動きに、微かに当たる歯。蒼鷹は思わず声を荒げ、ソルーシュの頭をつかみ、無理矢理引き抜いた。

――これではだめ? それじゃあ……。

 口淫を拒まれたソルーシュは、今度は自ら寝衣を脱ぎ、その肢体を惜しげもなくさらけ出した。
 膝立ちになり、その中心に身体を落とそうとしたが、当然、勃ち上がっていないそれが入るわけがない。
 様子のおかしいソルーシュを見守っていた蒼鷹だったが、ソルーシュがぺたりと座り込み、目からボロボロと涙を零し始めたところで、静かに腰を起こし、その頬に手を当てた。

「ソルーシュ、私を見なさい」

 嫌だと首を振るソルーシュだが蒼鷹の手は容赦なく、顔を固定し、鋭い瞳で覗き込まれた。

「何がそんなに悲しいのだ? 誰かになにか言われたのか?」

 蒼鷹の腕ごと首を振った。

――なにが、かなしい……?

 紅牡丹のように華やかなわけではない。
 舜櫂のように知識があるわけではない。
 峰涼や、墨夏みたいに蒼鷹を支えることもできず、紅希のように将来を期待されているわけではない。
 結局ここでも自分が役に立たない人間であることが、ソルーシュは悲しかった。

「ワタ、シ……、やくたたず、いや……っ……。てがみ……あにうえ、に」
「役立たずなんてことはない、ソルーシュがいてくれるだけで私は――」
「だめ。王妃、……する。お仕事」
「王も王妃も飾りみたいなものだ。居てもいなくても国は回る」
「そうよう、仕事、大変……。ワタシは、何も……」

 しゃくりあげながら、とぎれとぎれに言葉を紡ぐソルーシュに、蒼鷹がひとつひとつ答えるが、ソルーシュの心は晴れない。
 滂沱に落ちる涙は、何度拭っても蒼鷹の手を濡らした。
 冷えていく身体に、蒼鷹はひとつ、王妃の仕事を思い出した。

「なら、次の月の冬至祭の支度をするか? 紅牡丹がいつものように仕切る予定だったが、アレに教えさせよう」
「とうじ?」

 知らない言葉に、ソルーシュの涙が止まった。

「あぁ。昼が一番短い日を無事に過ごせたことを祝う儀式だ」
「します、ワタシ、しますっ! 蒼鷹の、役に立ちたいです」

 蒼鷹の上でソルーシュは飛び跳ねて喜んだ。
 喜ぶ姿はかわいいものだが、身体の中心で揺れるモノにもつい目が行ってしまう蒼鷹は、苦笑した。

「そんなことをしなくても、十分役に立っているのだがな」

 小さなつぶやきははしゃぐソルーシュには届かなかった。どんなことをするのか、自分は何をすればいいのか、矢継ぎ早に聞いてくるソルーシュの問に答えていく。
 さっきまで悲しみにくれていたソルーシュが笑顔になる。一通り話終えると、蒼鷹が真面目な顔をした。

「ただ……あまり紅牡丹といっしょに居てほしくないのが本音だ」
「なにもありませんよ?」
「なにかあったら即刻紅牡丹を後宮から追い出してやる」

 むしろ、蒼鷹と舜櫂は……と頭をよぎるが、ソルーシュはそれを呑み込んだ。

――今はなにもないのだから。
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