世紀末な転移先で覇王に捕まりました〜この世界で生き抜くなんて無理っ!絶対無理っ!〜

三谷玲

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.遠征なんて無理っ!絶対無理っ! 2

「これはチーダ、こちらはダワラ。似ていますよね?」

 サイはそう言って俺の書いた地図と前に見せてもらった歴史書を並べる。
 確かに似てる。
 歴史書のほうはカーブのまったくない直線だけで書かれているけど、たしかに「チ」は「チ」に見えなくもない。漢字の「干」みたいだけど。

「ってことは、カタカナなのか! もしかして、ユウに教わった?」
「さぁどうでしょう? それよりも昔のものもありますし」
「なら、その前とかその前の前のアンダーウォーカーが教えたのかもな!」

 あらためてサイの歴史書を開いてみる。
 読める! 読めるぞ!
 見覚えはあると思ったけど、カタカナとはなぁ。
 後半のサイが書き足したものを読むと「ハオ」とか「マナ」って言葉が出てきた。

「お、おう……。俺のことも書かれるのか」
「もちろんです。後世に伝えなければならないいけませんからね」

 教科書に載る人の気持ちがわかった。
 むっちゃ、恥ずかしいな。
 ぱらりとめくると「沐浴」のページがあった。ただの風呂なのに仰々しい言葉が並んでいる。
 身を清めるだとか、覇者とアンダーウォーカーの絆を深めるために必要、とか。いやいや、そんなんじゃないから。
 と読んでいたら、特に重要なこととして書かれている文字を見て俺はバンと本を閉じた。

「っておいっ! 沐浴の儀式のところに要らんこと、書いてんじゃねぇよ! 子種はいらねぇから!」

 あのとき、ハオに煽られてふたりで射精したことを、がっつり書かれていた。
 くそ、サイめっ!
 違うってわかってて書いてやがる。
 投げつけてやろうと思って振り上げた瞬間、高いところからすっと取り上げられてしまった。

「取り扱いには気をつけてくださいよ。これは私たち覇者の右腕にとっては大事な宝物なんですから」
「お前があんな事、書くからいけないんだろっ!」
「クククッ」

 笑ってごまかしやがった! ああムカつく!

「そんなことより、この地図は役に立ちそうです」
「そう? 実際見てきたわけじゃねぇし、距離感もよくわかんないから合ってるかわかんねぇけどな。どうせなら、行ってみたいなぁ」

 俺が知ってるのはこの城だけ。それもめちゃくちゃ限られた範囲しか知らない。
 ここから見える景色だって全貌とはほど遠い。
 伊能忠敬になりたいわけじゃないけど、想像で描く地図は心もとない。

「外に出たいんですか?」
「ずっと部屋の中にいたら飽きるじゃん。それにもし追い出されたときに、どこに行けばいいかも知っておきたいしな」
「追い出すなんてことは万が一にもありませんよ。そうですか。アンダーウォーカーは外には出たがらない生き物だと聞いていたので、驚きました」
「それはたぶんユウだけじゃないか? 女の子だし、危険なところには行きたがらないだろ」

 って、俺だって危険なところは勘弁して欲しいけど。

「なら、今日ハオ様と一緒にお出かけになればよかったですね。そこの窓の素材を掘り起こしに行っているんですよ」
「ああ、ハオが割ったやつか。素材を掘り起こすの? 地面の下にあるってこと?」
「えぇ。地下にはさまざまなものが埋まっているんです。女の園の天井に使われている透明の板もそのひとつですよ。そういった地下で発見された、我々には計り知れないものを、アンダーウォーカーの叡智と呼んでいます」
「アンダーウォーカーの叡智、ねぇ……」

 あの天井が一体なんで出来てるのか、俺にもわかんねぇよ。ガラスじゃなくて透明で、しかも強度があるものって……アクリル板? 巨大水槽とかで使うような。
 オーパーツってやつかもな。
 実は発達した超古代文明が滅亡して、その上に人が住みついたっていう。

 まさかな。
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