世紀末な転移先で覇王に捕まりました〜この世界で生き抜くなんて無理っ!絶対無理っ!〜

三谷玲

文字の大きさ
60 / 70

.遠征なんて無理っ!絶対無理っ! 10

「ダメだ」

 狩りから帰ってきたハオは、着替えの手を止めた。手にしていた獣の頭巾がふっとんだ。
 幸い、また窓ガラスを割ることにはならず、サイが受け止めた。

「なんでダメなんだよ! ちょっとギイの里帰りに付き合うだけだろ」

 ギイに聞いたら文字が書かれたものがまだ村に残ってるかもしれないという。荒れたままの故郷は寂しいからと、明日、村を見に行くという。
 それに俺も連れて行ってもらうと言っただけだ。

「ダメなものはダメだ。危険すぎる」
「もうダワラの人たちはいないんだろ? それに俺だってたまには外に出たい!」
「ダワラだけが脅威ではない。獣や野党に襲われたらどうする!」
「ギイはめったにそんなこと起きないって」
「めったに起きないだけで、まったくないわけではない。とにかく、ギイとふたりで出掛けるなんて認められない」

 認めるとか認めないとか、俺の自由はどこいった?
 なんで俺の行き先をハオに決められなきゃなんねぇんだよ。
 
「俺はお前の所有物じゃないからな! 認めてもらわなくたって行くから」

 最初からハオに言わずに出掛けたらよかったんだ。
 ギイは昼に出るって行ってたから、ハオがいないすきに出てけばいい。
 そうだ! そうしよう!
 そう決意した俺に非情な言葉が聞こえてくる。

「サイ。明日の警護は厳重にしておけ」
「かしこまりました」
「あーーー! なんでだよっ! ズルいぞ!」
「マナを守るためだ。当たり前だろう?」

 ハオはこの話はもう終わりだと魔王のイスにどすんと座り、ふんぞり返る。くそ偉そうな態度がよりいっそう俺を腹立たせる。
 アーツにあるかもしれないんだ。転移者の残したなにかが。
 それを読めば、この世界がなにかわかるかもしれない。
 そしたら俺のこのざわざわした気持ち悪さに、答えが出る、はずだ。

「知りたいん、だよ……。ここがどこで、俺はなんのために、いるのか」

 知ってどうなるかはわからない。
 だけど、知らないままハオに囲われてるだけなんて、イヤなんだよ。

「なにも泣くことはないだろう?」

 知らず涙が出ていた。
 袖で雑に拭っても、また涙がこぼれてきた。
 悔しい。
 おそらくハオが言うとおり危険なんだろう。
 ヤギの頭見ただけで、チビるほど怖かった。あんなのと遭遇したら、俺なんてあっという間に食われそう。ヤギが肉食かどうかは知らないけど。
 最初の荒野だって行けども行けども建物も木すらなくて、死にかけた。
 わかってる。

 ぐずぐず泣く俺の身体が、ふわっと浮いた。

「な、なにするんだよっ! 離せ! どうせバカにしてるんだろ! なんも知らないくせにって」

 俺を抱えたハオは、またイスに座り直した。そうすると俺はハオの膝に座ることになって、まるで子どもみたいだ。
 ハオのバカ力に勝てるわけもないのに、腕を伸ばして抵抗した。

「そうではない」

 ハオが手の甲で、俺の頬を拭っていく。

「明日は無理だが、明後日なら俺が連れて行ってやる。だから、泣くな……。マナが泣くと、俺も苦しい」
「……え? 行っちゃダメなんじゃないの?」
「ギイとふたりで行くのを禁じただけだ。マナを守るのも、マナを喜ばせるのも、俺の役目だ」

 アーツに行ける……?
 感極まった俺は思わずハオに抱きついていた。

 
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科 空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する 高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体 それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった 至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する 意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク” 消える教師 山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー

異世界に勇者として召喚された俺、ラスボスの魔王に敗北したら城に囚われ執着と独占欲まみれの甘い生活が始まりました

水凪しおん
BL
ごく普通の日本人だった俺、ハルキは、事故であっけなく死んだ――と思ったら、剣と魔法の異世界で『勇者』として目覚めた。 世界の命運を背負い、魔王討伐へと向かった俺を待っていたのは、圧倒的な力を持つ美しき魔王ゼノン。 「見つけた、俺の運命」 敗北した俺に彼が告げたのは、死の宣告ではなく、甘い所有宣言だった。 冷徹なはずの魔王は、俺を城に囚え、身も心も蕩けるほどに溺愛し始める。 食事も、着替えも、眠る時でさえ彼の腕の中。 その執着と独占欲に戸惑いながらも、時折見せる彼の孤独な瞳に、俺の心は抗いがたく惹かれていく。 敵同士から始まる、歪で甘い主従関係。 世界を敵に回しても手に入れたい、唯一の愛の物語。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。

腐男子♥異世界転生

よしの こひな
BL
ある日、腐男子で新卒サラリーマン・伊丹トキヤの自室にトラックが突っ込む。 目覚めたトキヤがそこで目にしたのは、彼が長年追い続けていたBL小説の世界――。しかも、なんとトキヤは彼が最推しするスパダリ攻め『黒の騎士』ことアルチュール・ド・シルエットの文武のライバルであり、恋のライバルでもあるサブキャラの「当て馬」セレスタン・ギレヌ・コルベールに転生してしまっていた。 トキヤは、「すぐそばで推しの2人を愛でられる!」と思っていたのに、次々と原作とは異なる展開が……。 ※なろうさん、Caitaさん、PIXIVさんでも掲載しています。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。