狐の声劇台本置場

小狐門(ごんぎつねもん)

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悪魔関連【ファンタジー】

だから僕は知りたかったんだ【三人用台本(男:不問=1:2)・10分程度】

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だから僕は、知りたかったんだ




ユーリ・ブラウソン(台詞:41) 男
 感情を表に出すのが大の苦手。家族を殺されてから、更に感情が分からず、しかし何故か心のモヤが晴れないことに気がつく。そのため、感情を理解するために悪魔と契約をする。

悪魔(台詞:16) 性別不問
 ユーリの隠れた激情に呼び出された悪魔。魂と悦楽の為ならなんだってする。人の心など、きっとわかりはしない。

マリル・リリアス(台詞:31) 性別不問
 精神科医。ユーリの担当医師。一見優しく見えるが、ユーリの希薄さに狂わされたように、ある事件を起こす犯人。


※ アドリブ、口調の変更、性別変更等は好きにしていただいて構いません。しかし、世界観を壊すほどの変更は控えて頂きたいです。






ユーリ(M) : 誰もが寝静まった夜更け。慣れ親しんだ家の中、ただ呆然と虚空を眺めていた僕の鼓膜を、見知らぬ声が揺らした。

悪魔 : こんばんは、素敵な夜だね。

ユーリ : ……貴方は誰ですか?

悪魔 : 僕?僕はね、悪魔だよ。君の願いを叶えに来たんだ。

ユーリ : 願い……?僕の、願い?

悪魔 : そう。君の願い。君は、何を願う?

ユーリ : そもそも、どうしてこの現状を見て動じないんですか?

悪魔 : それはね、悪魔だからだよ。葬儀場だって、闘技場の真ん中だって行くさ。例えそこが、殺人現場だとしてもね。

ユーリ : ……。

悪魔 : そうだなぁ。願いを聞くよりも先に、君の記憶を眺めた方が早そうだ。失礼するよ。

ユーリ : あっ……。


   吹き荒れる風の音。ゆっくりと消えていく音に、思わず閉じた目を開くユーリ。


マリル : こんにちは、君はユーリ・ブラウソンくんだね?私はマリル・リリアス。君の担当医だよ。今日はまず、お互いのことを知ることから始めようか。じゃあ私から話そう。そうだな……私の好きなことは猫と触れ合うことと、こんな風に話すことかな。君のことも教えて欲しい。

ユーリ(M) : あれ?今まで何をしていたんだっけ……なんだかよく分からないけれど、懐かしい気がする。前に似たようなことがあったんだっけ?

マリル : うん?どうしたのかな?

ユーリ : あ、いえ……。僕は、ユーリ・ブラウソンです。えっと、なんだか、僕は感情が疎いらしく……心配した両親に、ここへ連れてこられました。

マリル : うん、そっか、ありがとう。でもね、私が聞きたいのは君自身のことだよ。何を見て、何が好きで、どんなことをしてきたのか。そういうことを聞きたいんだ。

ユーリ : 僕のこと……?

マリル : そう。君のこと。君が日常的に見たものと、それを見てどう思ったのかでもいいよ。

ユーリ : ……好きな物は、特にありません。両親が喜ぶであろうことを選択してやってきたつもりです。

マリル : 好きなものがないのかい?食べ物でも良いんだよ?

ユーリ : ……思いつきません。

マリル : うん、そっか。それならそれでいいよ。これから一緒に探していこうね。

ユーリ : ……はい。

マリル : じゃあ、次に学校であったことを聞いてもいいかな?

ユーリ : 学校で、あったこと。

マリル : うん。ゆっくりでいいよ、思いついたままに話してご覧?

ユーリ : 思いついたまま。

マリル : そう。君が言いたいことを、そのまま教えてくれるかな?

ユーリ : ……そういえば先日、友達が一日休みました。

マリル : うん。それで?

ユーリ : 翌日、登校してきた友達にどうしたの?と聞いたら、大好きだった犬のロイが死んだんだと言われました。可哀想だなとは思いました。

マリル : うん。

ユーリ : それが、どうして休むことに繋がるのか分からなくて、聞いたんです。それは可哀想だけど、なんで休んだのって。

マリル : へぇ……そうしたら?

ユーリ : 怒鳴られました。お前に何がわかるんだって。なんで怒られたのか分からなくて……これっておかしいんでしょうか?

マリル : ふんふん。


   マリルがカルテのようなものに何かを書き記す。その表情は少しニヤついている。


マリル : よし、ありがとう。今日はこれで終わろうね。疲れたでしょう。一つ伝えることがあるとしたら、君が悪いんじゃないよっていうことだ。君みたいな子は初めてで面白いしね。ああ、そういえばその友達の名前は―。

ユーリ(M) : その言葉を聞くが早いか否か、世界がぐにゃりと歪む。そしてまた見る景色はおなじだった。マリル先生が正面に座って、カウンセリングを繰り返す。

マリル : こんにちは。また来てくれて嬉しいよ。今日も君のことを教えて欲しい。

ユーリ(M) : マリル先生はいつも、ニコニコとした微笑みから始まり、ニヤニヤと妙な笑顔に変化していくことが多かった。

マリル : へぇ。その友達と仲直り出来たんだね。良かったじゃないか。どんな風にだい?うんうん、相手が謝ってくれたんだね。分かってくれたみたいだね。

マリル : こんにちは。これで三回目か。もうそろそろ、慣れてきてくれたかな?え、お友達がいじめに合ってるって?どうしたらいいか分からないから、いつもどおりにしているのか。君は本当に不思議な子だ。

マリル : 四回目だね。でもなんだか、いつもより沈んでいる気がするね。そんなことはないって……そうは思えないけどね。もしかして、君も虐められているのかな?それに似たようなことは?……ほら、やっぱりね。辛かったら泣いてもいいんだよ。そんな訳が分からなそうな顔をしないでくれ……気になってしまうじゃないか(小声)。

マリル : お、五回目になってくると、私にも笑みを浮かべてくれるようになったね。少しは心を開いてくれた、ということでいいのかな?はは、そんな急に真顔にならなくてもいいんだよ。君は君のままでいい。うん、それで今回は……ああ、何もなかったのか。そうか……良かったね。

ユーリ(M) : 懐かしい。そういえば、ここから色々と悪化したんだったか。

マリル : ん、どうしたのかな?今日は随分と無表情だね。

ユーリ : ……ちょっと、色々あって。

マリル : 色々かぁ…じゃあ君が話したいと思うことを、話したいままにどうぞ。

ユーリ : (被せて)友人が死にました。酷い最期だったと聞いています。

マリル : うん。

ユーリ : 昨日、先生から話を聞きました。悪い人たちに捕まったのか、酷い状態で見つかったそうです。多分、そんなことを言ってた気がします。でも、僕は見てないんです。

マリル : うん、一旦落ち着こう。ゆっくりでいいよ。

ユーリ : ……ゆっくり、ゆっくりと言ったって、これしか……

マリル : ……そっか。うん、分かったよ。今はどんな気持ち?

ユーリ : 思ったより、悲しくはないんです。不思議と。

マリル : それはそれは、不思議な事だね。


悪魔 : ふぅん、なるほどね。可哀想に、変なやつに目をつけられたらしい。

ユーリ(M) : え!?だ、だれ……

悪魔 : 悪いけど、まだ終わってはいないよ。もう一度深く眠るんだ。


   一度暗転する視界から目を覚ますユーリ。


ユーリ : ……え。

マリル : あ、見つかっちゃった。うーん、帰りはこの時間だったか…。失敗だねぇ。

ユーリ : マリル、せん、せ……?

マリル : まあ楽しむだけ楽しめたし、いっか。まずは警察を呼んでね。

ユーリ : 警察……?

マリル : そう。だって、君の両親は私が殺してしまったからね。悪いことをしたら警察、教わらなかったかな?

ユーリ : ……習いましたけど。

マリル : まさか、両親が殺されてなお、その表情を保てるのか。君は本当に人でなしだね!気になるねぇ、人の感情というものは大きな意味があるはずだ!それが極端に薄い君にはなんの意味があるのか!最後の検診だよ、君は今、何を思っている?

 
   ガラスの割れる音。
 

ユーリ : 何を…………特に、何も。


   ガラス同士が触れ合う音。

 
マリル : ふふ、そっか。やっと分かったよ。君は、感情が薄いんじゃなくて――


   近づく足音。


マリル : 分からなかっただけなんだね。


   何かが刺さる音。もしくはマリルの唸り声。そして、一定の静寂。


悪魔 : 感情が分からない。なるほど。それでこれ、という訳だね。死体の数も三つ。うんうん、とてもわかりやすい。

ユーリ : ……わかりやすいですか?

悪魔 : おっと、目が覚めるのも早いね。わかりやすいよ、今だって、これからどうしようと悩んでる最中。君はどうしたい?

ユーリ : ……分かりません。ぼくは、感情が分からない……マリル先生の言った通りです。

悪魔 : じゃあ探していけばいいんだよ。分からないなら見つけ出そう!

ユーリ : みつけ、だす?

悪魔 : そう!見つけ出すんだ!他の人の感情を見て、理解していけばいい。

ユーリ : 理解……。

悪魔 : 同じ目にあったことがないから、理解出来るほど共感ができなかったんだよ。きっと。だから、今度は色んな人を同じ目に合わせて、ゆっくり理解していけばいいのさ!大丈夫、僕が手を貸してあげる。

ユーリ : 僕に、出来るでしょうか?

悪魔 : 一人じゃできないかもしれないね。でも、だからこそ僕がいるんだ。君ができないことは、僕がカバーをする。さあ、契約を。僕の手を取って。

ユーリ : ……よろしく、お願いします。

悪魔 : ふふ、契約成立。我が主わがしゅよ、君の仰せのままに。

ユーリ(M) : そして、僕は悪魔のいうままにスラム落ちし、一家を一人だけ残して惨殺するということを繰り返した。 しかし、数人が復讐を果たすべく会いに来たが、彼らの感情は理解が出来なかった。何度味わって経験しても分からない。もう、理解など出来ないのではないか。諦めかけていた時だった。

悪魔 : 今日は、ダロウズ街道を通るといいよ。きっと、いいことがある。

ユーリ : ……ダロウズ街道ですか、分かりました。


   間をとる。
 
 
ユーリ(M) : 僕は今日も悪魔の言う通りに歩いて殺す。いつか、感情というものを理解出来る日が訪れるように、願いながら。
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