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誤算と代償
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「そっちにいったぞ!」
「糞が!何が弱点は風属性だ!全く効きやしねえじゃねえか!」
「化物ってきいてたがマジで化けもんじゃねえか!なんだあの動き!」
例の化物は意外とあっさり見つかった。どうやら怪我を治す為に動き回る事ができずにいたようだが、こちらを認識したと同時に襲いかかってきた。
数を把握して逃走が無理だと判断したようで、それでこそ死に物狂いで暴れまわる。
すでにハンター側の被害も重軽傷を合わせれば半数以上にも上り、死者に至っては5名だしている。
最初の不意打ちでキャスターを狙って来たあたり、弱点の属性があるのは間違い無いようだ。
ここでグスタフは疑問に思った。
(何故ミレアは触手の弱点を風と言ったんだ?。)
もしかしたら耐性がついたのかもしれないとか、風属性が効果的な状況があるなど、色々考えられるがどうも腑に落ちない。というのも、例のメンバーは積極的に戦闘に加わらずに、後方でちょっかいを掛けるといっていい程の働きしかしていない。
普通仲間の仇討ちを行う上であんな戦い方をするだろうか。
(恐怖で尻込みしているならもっとずっと後方に陣取るだろうしなあ)
少々奇妙に思い、グスタフは3人の様子を観察する事に決めて動いていた。ウルフの方は、数でゴリ押せればこのまま行けばどうにかなるだろう。
「くっそ!槍が絡め取られる!」
「矢も芯を外されて正直これじゃあ何本あっても足り無いぞ!」
「というかあの隠してる触手は卑怯だろ!初見殺しすぎるぞ!」
「落ち着け!確実に動きは鈍ってきてる!どうやら奴は結構燃費が悪いらしいぞ!人数で勝ってるんだ!このまま持久戦を続ければそのうち勝てる!」
「くっそ!こっちの盾がやられた!誰か来れる奴いるか!」
「割に合わねえぞ!この依頼!」
喧々囂々のハンター達、嘲笑うように化物は走りまわる。足と触手は別々の意思があるかのように蠢き、盾を横から殴りつけたり、飛んできた矢を取り、逆にそのまま別の人間に突き立てたりと、獣離れした動きをしている。
「何なんだこいつは。」
もしこんな魔物が増えたとしたら・・・
グスタフは背筋に冷たいものが流れたのを感じた。これは確かに放置していてはいけない。きな臭くはあるが、オルガが知らせを持ってきてくれた事に改めて感謝する。
ウルフは戦術を変え、引いて隠れては奇襲を掛けるというやり方に変えたようで、夕刻が着々と迫ってくる。
(にしてもどうしてこんな持久力があるんだ?)
発見からしばらくしてから。奴の体力は目に見えて落ちていたが、戦術を変えてから動きが鈍る様子が見えない。どこかに非常用の餌でも置いているのか?。
そう考えて彼は自分の考えに笑った。
(魔物にそんな知能は無いよな。)
そんな事を考えていた時だった。
「たっ大変だ!バルネ村が盗賊に襲われてるらしい!」
「なにい!?」
とんでもない凶報に周囲にいたハンターが動きを止める。
最初に動いたのはバルネ村から来たハンター達だった。
「グスタフさん!すまないがあとは頼んでいいか!」
「今から行って間に合うかわからんが、とにかく戻らないと!」
(なんつうタイミングだ!ってかここらに盗賊何かでるなんて初めてじゃないか!)
そう考えた所でグスタフは、はっとした。
(まさかあの3人!)
グスタフの中で間違った考察が組み立てられていく。
「わかった!とにかくバルネ村の奴らは急いで戻れ!
それと!あの3人だが、少しの間拘束しておいてくれ!抵抗するようなら無理やりにでもな!。」
----------------
(とんだ失敗をしたなぁ)
飛んで来た矢を絡めとりながら、内心で溜息をつく。
ポーターを逃がしたのもそうだが、その後の人間の記憶の改竄も、ポチのエサとして悪戯にネズミを消費したのも悔やまれる。
こちらの手抜かりもそうだが、人間サイドの動きの早さや、驚いたのはどういう訳か折角寄生させた人間も拘束されてしまった事だ。
こちらの残りの手駒といえば保険のネズミ3匹だけだ。
不幸中の幸いか、恐らくこちらの正体まではばれていないであろう。2人と1緒にポーターまで捕まっているし、何よりばれていたら今頃火炙りにでもされてる。
暴かれるより前に証拠になりそうな物は隠滅するしか無い。彼らにはかなりの負担になるが、俺に関する情報は忘れて貰うしかない。その後は彼等の運次第だ。
ここで寄生先を増やす事も考えたが、それは悪手だ。逆に露呈し、情報を与えてしまう方が今後問題になる。皆殺しに出来ればやるのだろうが、こちらにそんな地力は無い。
逃げるのがベストなのだ。だと言うのに、ポチは何故だか退いてくれない。絶対絶命のこの状況で、ポチからは幸福感と充足感が伝わってくるばかりで・・・
(まさか・・・)
(まさかと思うが、ポチはここで果てるつもりなのか?)
確かにポチはもう高齢だ、騙し騙しで補強し維持して来たが、こんな戦いに何の意味があるというのだ。
いくら嫌忌性のある物質を打ち込んでも、ポチは戦うのを辞めない。
(ポチ、お前はいったい何を考えているんだ。)
----------------
(まだまだやれる。)
もう何人目かわからない人間の足を砕き、ポチと名付けられた高齢の狼は思う。
今まで群でいた時でさえ散々に苦渋を飲まされてきた敵である人間を今はいいように翻弄している。
その事実が、自らの固体としての心を満たしていく。
この大舞台で果てるなら本望だと、敵を1人倒す毎に実感を得る。きっと一緒にいる彼はこれを良しとしていないのであろう。短い付き合いだが、身体に抵抗を感を感じる。
いつも朧げな指示で真意をつかみ損ねる時が多々あったが、今回は単純明快に逃げて欲しいという要求だろう。
だがしかし、申し訳ないがそれを叶える訳にはいかない。
暫く時を置くと、彼も私の考えがわかってきたようだ。徐々に身にかかる抵抗は減っていき、完全になくなると、いつものように私の行動の補助に回ってくれた。
身体を無理に動かした痛みは消え、時が引き延ばされるような感覚。いつも不思議なのだが、彼は時を操れるのだろうか。いよいよ彼の正体は謎のままだった。
しかし、彼は私に様々な物をくれた。
快感をくれた、丈夫な身体をくれた、力をくれた
何よりも自由を与えてくれた。
確かに彼が私を誘導しているのはわかっていた、しかし群でいた時では考えられない程に、彼との奇妙な生活は充実していた。
そんな与えてくれた彼にだからこそ、私は我儘をしたくなったのだ、甘えたくなったのだ。
どうか、許して欲しい、群れの為に生き群れの為に追われたこの老いぼれに、ウルフとしての誇りを果たさせて欲しい。
大丈夫、最期はきちんと安全な所に連れて行くから・・・。
「糞が!何が弱点は風属性だ!全く効きやしねえじゃねえか!」
「化物ってきいてたがマジで化けもんじゃねえか!なんだあの動き!」
例の化物は意外とあっさり見つかった。どうやら怪我を治す為に動き回る事ができずにいたようだが、こちらを認識したと同時に襲いかかってきた。
数を把握して逃走が無理だと判断したようで、それでこそ死に物狂いで暴れまわる。
すでにハンター側の被害も重軽傷を合わせれば半数以上にも上り、死者に至っては5名だしている。
最初の不意打ちでキャスターを狙って来たあたり、弱点の属性があるのは間違い無いようだ。
ここでグスタフは疑問に思った。
(何故ミレアは触手の弱点を風と言ったんだ?。)
もしかしたら耐性がついたのかもしれないとか、風属性が効果的な状況があるなど、色々考えられるがどうも腑に落ちない。というのも、例のメンバーは積極的に戦闘に加わらずに、後方でちょっかいを掛けるといっていい程の働きしかしていない。
普通仲間の仇討ちを行う上であんな戦い方をするだろうか。
(恐怖で尻込みしているならもっとずっと後方に陣取るだろうしなあ)
少々奇妙に思い、グスタフは3人の様子を観察する事に決めて動いていた。ウルフの方は、数でゴリ押せればこのまま行けばどうにかなるだろう。
「くっそ!槍が絡め取られる!」
「矢も芯を外されて正直これじゃあ何本あっても足り無いぞ!」
「というかあの隠してる触手は卑怯だろ!初見殺しすぎるぞ!」
「落ち着け!確実に動きは鈍ってきてる!どうやら奴は結構燃費が悪いらしいぞ!人数で勝ってるんだ!このまま持久戦を続ければそのうち勝てる!」
「くっそ!こっちの盾がやられた!誰か来れる奴いるか!」
「割に合わねえぞ!この依頼!」
喧々囂々のハンター達、嘲笑うように化物は走りまわる。足と触手は別々の意思があるかのように蠢き、盾を横から殴りつけたり、飛んできた矢を取り、逆にそのまま別の人間に突き立てたりと、獣離れした動きをしている。
「何なんだこいつは。」
もしこんな魔物が増えたとしたら・・・
グスタフは背筋に冷たいものが流れたのを感じた。これは確かに放置していてはいけない。きな臭くはあるが、オルガが知らせを持ってきてくれた事に改めて感謝する。
ウルフは戦術を変え、引いて隠れては奇襲を掛けるというやり方に変えたようで、夕刻が着々と迫ってくる。
(にしてもどうしてこんな持久力があるんだ?)
発見からしばらくしてから。奴の体力は目に見えて落ちていたが、戦術を変えてから動きが鈍る様子が見えない。どこかに非常用の餌でも置いているのか?。
そう考えて彼は自分の考えに笑った。
(魔物にそんな知能は無いよな。)
そんな事を考えていた時だった。
「たっ大変だ!バルネ村が盗賊に襲われてるらしい!」
「なにい!?」
とんでもない凶報に周囲にいたハンターが動きを止める。
最初に動いたのはバルネ村から来たハンター達だった。
「グスタフさん!すまないがあとは頼んでいいか!」
「今から行って間に合うかわからんが、とにかく戻らないと!」
(なんつうタイミングだ!ってかここらに盗賊何かでるなんて初めてじゃないか!)
そう考えた所でグスタフは、はっとした。
(まさかあの3人!)
グスタフの中で間違った考察が組み立てられていく。
「わかった!とにかくバルネ村の奴らは急いで戻れ!
それと!あの3人だが、少しの間拘束しておいてくれ!抵抗するようなら無理やりにでもな!。」
----------------
(とんだ失敗をしたなぁ)
飛んで来た矢を絡めとりながら、内心で溜息をつく。
ポーターを逃がしたのもそうだが、その後の人間の記憶の改竄も、ポチのエサとして悪戯にネズミを消費したのも悔やまれる。
こちらの手抜かりもそうだが、人間サイドの動きの早さや、驚いたのはどういう訳か折角寄生させた人間も拘束されてしまった事だ。
こちらの残りの手駒といえば保険のネズミ3匹だけだ。
不幸中の幸いか、恐らくこちらの正体まではばれていないであろう。2人と1緒にポーターまで捕まっているし、何よりばれていたら今頃火炙りにでもされてる。
暴かれるより前に証拠になりそうな物は隠滅するしか無い。彼らにはかなりの負担になるが、俺に関する情報は忘れて貰うしかない。その後は彼等の運次第だ。
ここで寄生先を増やす事も考えたが、それは悪手だ。逆に露呈し、情報を与えてしまう方が今後問題になる。皆殺しに出来ればやるのだろうが、こちらにそんな地力は無い。
逃げるのがベストなのだ。だと言うのに、ポチは何故だか退いてくれない。絶対絶命のこの状況で、ポチからは幸福感と充足感が伝わってくるばかりで・・・
(まさか・・・)
(まさかと思うが、ポチはここで果てるつもりなのか?)
確かにポチはもう高齢だ、騙し騙しで補強し維持して来たが、こんな戦いに何の意味があるというのだ。
いくら嫌忌性のある物質を打ち込んでも、ポチは戦うのを辞めない。
(ポチ、お前はいったい何を考えているんだ。)
----------------
(まだまだやれる。)
もう何人目かわからない人間の足を砕き、ポチと名付けられた高齢の狼は思う。
今まで群でいた時でさえ散々に苦渋を飲まされてきた敵である人間を今はいいように翻弄している。
その事実が、自らの固体としての心を満たしていく。
この大舞台で果てるなら本望だと、敵を1人倒す毎に実感を得る。きっと一緒にいる彼はこれを良しとしていないのであろう。短い付き合いだが、身体に抵抗を感を感じる。
いつも朧げな指示で真意をつかみ損ねる時が多々あったが、今回は単純明快に逃げて欲しいという要求だろう。
だがしかし、申し訳ないがそれを叶える訳にはいかない。
暫く時を置くと、彼も私の考えがわかってきたようだ。徐々に身にかかる抵抗は減っていき、完全になくなると、いつものように私の行動の補助に回ってくれた。
身体を無理に動かした痛みは消え、時が引き延ばされるような感覚。いつも不思議なのだが、彼は時を操れるのだろうか。いよいよ彼の正体は謎のままだった。
しかし、彼は私に様々な物をくれた。
快感をくれた、丈夫な身体をくれた、力をくれた
何よりも自由を与えてくれた。
確かに彼が私を誘導しているのはわかっていた、しかし群でいた時では考えられない程に、彼との奇妙な生活は充実していた。
そんな与えてくれた彼にだからこそ、私は我儘をしたくなったのだ、甘えたくなったのだ。
どうか、許して欲しい、群れの為に生き群れの為に追われたこの老いぼれに、ウルフとしての誇りを果たさせて欲しい。
大丈夫、最期はきちんと安全な所に連れて行くから・・・。
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