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幼女VS盗賊2
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号令の言葉が出ない。
何人もの仲間が引き裂かれ、貫かれ、粉砕されていく。一人の小さなガキに、ハンターとすら戦い合える者たちが嬲られるように殺されて・・・。
「かっかしらあ」
縋るように俺を案内してきた奴が指示を求めてくるのに、はっと気づいた。
「落ち着いて集まれ、見たところ奴は一人一人単独で相手してるようだ、髪の毛はあくまで反撃と防御に徹してる。正面から数でかかれば、いくら奴でも対応しきれないだろう。一旦物陰に隠れるぞ。」
自分に言い聞かせるように、整理して指示を下す。
「野郎ども!一回建物の裏に引け!」
俺の号令が聞こえたのか、手下は直ぐに身を引き、それを確認した俺も塀の裏に隠れた。
隠れる間際、やつが興味深そうな目でこちらを見ている姿が映り、背筋に冷たい物を感じる。(大丈夫いくら人間を刻める魔法でも、石造りの塀なら問題無いだろう。)
奴は何かを観察するように、ゆらりゆらりと周囲を見渡している。
居場所が悟られぬように、少し移動して、違う塀の裏に隠れる。どこからか見られているような不気味な感覚が常につきまとってくるが、これは先ほどの恐怖の延長だろう。
少し待っていると、家の裏を通ってきたのだろう、手下が俺の下に集まり始めた。
「頭!よかった、てっきり先にやられちまったのかと」
「矢は全然効かねえし、キャスターは真っ先に殺されちまった。」
「髪の毛は剣で斬ろうとしてもびくともしねえ。」
「手向けられた奴は盾も関係無しにやられちまう。」
「仲間が・・・やられちまった・・・このまま引き下がれねえよ・・・頭。」
口々に愚痴とも報告ともとれる事を喋る奴らの中から情報を拾い出し。勝機が見えたことに笑をこぼす。
(キャスターを先に殺したってのはつまりそれが奴の弱点の可能性が高い。)
幸い、俺は水魔法の[アロー]を使う事ができる。それで様子を見て効き目があるのならば、それを軸に戦える筈だ。一当てして駄目だったら、屈辱的だが退却をするしかないだろう。
そこまで考えて、手下に喋ろうとした時にふと気づいた「誰かガキ監視してたか?」。
馬鹿共は驚いた顔でこちらを見つめる。・・・この時程俺は馬鹿というものの罪を自覚する時は無かった。 近寄ってくる気配は無いにせよ、足音すらしないのを不審だと思わなかったのか!。
慌てて目の前にいたやつを踏み台に塀の上から顔を出して確認する。
「・・・あっ」
思わず声に出してしまったものの、危険を感じて即座にその場から離脱する。「散れ!」という言葉を残したものの、誰もそれに反応する事ができなかった。特大のバチン!という何かを弾く音にかき消されたからかもしれない。
俺の目に見えた物は、ガキの髪の毛が全て一纏めに、まるで蛇が首を持ち上げるような形でこちらを向き、先端を四っつに分離させ、まるで花の蕾のように膨らませている姿だった。
次の瞬間には、元いた場所どころか、奴を起点にして一直線上はすべて穿たれた。纏まっていた手下は全てが物言わぬ肉片に成り果て、縦横無尽に切り刻まれたからか、上方に向って飛び散った血液と、粉微塵になった様々な物が雨のように降り注ぐ。
「あはっあははははははははははh」
その中で、そいつはクルクルと回り始めた。両手を広げ、より多くの滴を受け止めるかのように、実に愉しそうに。まだ染まっていない体と髪の毛をどす黒い血の色で染め上げ、年相応には見えない恍惚とした表情を浮かべながら・・・クルクルと・・・。
俺は呆然とその場に立ち尽くすしかできなかった。仇とかそんな物より、身体全体に虚無感が侵食し、力が抜けていく。立っていることもままならず、そのまま膝をついた。
何人もの仲間が引き裂かれ、貫かれ、粉砕されていく。一人の小さなガキに、ハンターとすら戦い合える者たちが嬲られるように殺されて・・・。
「かっかしらあ」
縋るように俺を案内してきた奴が指示を求めてくるのに、はっと気づいた。
「落ち着いて集まれ、見たところ奴は一人一人単独で相手してるようだ、髪の毛はあくまで反撃と防御に徹してる。正面から数でかかれば、いくら奴でも対応しきれないだろう。一旦物陰に隠れるぞ。」
自分に言い聞かせるように、整理して指示を下す。
「野郎ども!一回建物の裏に引け!」
俺の号令が聞こえたのか、手下は直ぐに身を引き、それを確認した俺も塀の裏に隠れた。
隠れる間際、やつが興味深そうな目でこちらを見ている姿が映り、背筋に冷たい物を感じる。(大丈夫いくら人間を刻める魔法でも、石造りの塀なら問題無いだろう。)
奴は何かを観察するように、ゆらりゆらりと周囲を見渡している。
居場所が悟られぬように、少し移動して、違う塀の裏に隠れる。どこからか見られているような不気味な感覚が常につきまとってくるが、これは先ほどの恐怖の延長だろう。
少し待っていると、家の裏を通ってきたのだろう、手下が俺の下に集まり始めた。
「頭!よかった、てっきり先にやられちまったのかと」
「矢は全然効かねえし、キャスターは真っ先に殺されちまった。」
「髪の毛は剣で斬ろうとしてもびくともしねえ。」
「手向けられた奴は盾も関係無しにやられちまう。」
「仲間が・・・やられちまった・・・このまま引き下がれねえよ・・・頭。」
口々に愚痴とも報告ともとれる事を喋る奴らの中から情報を拾い出し。勝機が見えたことに笑をこぼす。
(キャスターを先に殺したってのはつまりそれが奴の弱点の可能性が高い。)
幸い、俺は水魔法の[アロー]を使う事ができる。それで様子を見て効き目があるのならば、それを軸に戦える筈だ。一当てして駄目だったら、屈辱的だが退却をするしかないだろう。
そこまで考えて、手下に喋ろうとした時にふと気づいた「誰かガキ監視してたか?」。
馬鹿共は驚いた顔でこちらを見つめる。・・・この時程俺は馬鹿というものの罪を自覚する時は無かった。 近寄ってくる気配は無いにせよ、足音すらしないのを不審だと思わなかったのか!。
慌てて目の前にいたやつを踏み台に塀の上から顔を出して確認する。
「・・・あっ」
思わず声に出してしまったものの、危険を感じて即座にその場から離脱する。「散れ!」という言葉を残したものの、誰もそれに反応する事ができなかった。特大のバチン!という何かを弾く音にかき消されたからかもしれない。
俺の目に見えた物は、ガキの髪の毛が全て一纏めに、まるで蛇が首を持ち上げるような形でこちらを向き、先端を四っつに分離させ、まるで花の蕾のように膨らませている姿だった。
次の瞬間には、元いた場所どころか、奴を起点にして一直線上はすべて穿たれた。纏まっていた手下は全てが物言わぬ肉片に成り果て、縦横無尽に切り刻まれたからか、上方に向って飛び散った血液と、粉微塵になった様々な物が雨のように降り注ぐ。
「あはっあははははははははははh」
その中で、そいつはクルクルと回り始めた。両手を広げ、より多くの滴を受け止めるかのように、実に愉しそうに。まだ染まっていない体と髪の毛をどす黒い血の色で染め上げ、年相応には見えない恍惚とした表情を浮かべながら・・・クルクルと・・・。
俺は呆然とその場に立ち尽くすしかできなかった。仇とかそんな物より、身体全体に虚無感が侵食し、力が抜けていく。立っていることもままならず、そのまま膝をついた。
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