寄生虫転生~神様ではない~

kitakore

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元村長の息子の憂鬱

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つい最近の事だ、我々バルネ村の住人は、真の信仰に眼醒め、異形なるも優しき神と親交を深める事に成功した。

神の下、我々は等しく平等であるが、集団であるが為にどうしても統制という物が必要になってくる。

その際に上に着く者として適任なのは、神との親和性が高い者であり、且つ人をまとめるに足る人格である事が望まれた。

新村長兼巫女様はその言を踏まえ、私にその任を託され、自らは象徴として神と一緒にこの村を見守っていただいている。

見守るとは言っていたが、実質この村に来る害意は神自ら事前に芽を詰むどころか、その害意をほだし取り込むまでしている。

その取り込んだ中から荒事を担当する者も生まれ、今村の防衛は着々と整っている。

荒事を担当しているのは、この村を最初に襲った盗賊の頭である者と、一部の村人、ウルフ、取り込んだ戦闘経験のある者数人だ。



頭なんかは自ら[緋浴の巫女の伝導者]と大仰な自称をしているが、今の所表立って動くことは無く、正直名前負けもいいところだ。



しかし、そんな名前負けの伝導者、、、名前をバレンというのだが、彼に好機が訪れた。

荒事担当に好機というのも素直に喜べはしないが、問題ごとは様々な形をとって発生するのもである、致し方ない。

最近なにやら街の方からこの村について探りを入れて来る者が多発している。

あまりにもその数が多い為か神を通して不快感が村に広がっていた。

その不快感というのは信徒全員が共有しており、その頻度の数に伴い根本的な対処が必要であると判断され、比較的村で手があいている・・・もとい暇そうな彼らに任じようとなっていたのである。



訓練ばかりの集団ではなく、きちんと実戦の経験を積んでもらわないと困る。

兎に角現状では情報が少なすぎる為、まずは街での情報収集だ。



で、それをバレンに伝えた所

「神よりの御信託確かに承りました。ああ。この身に溢れんばかりの悦びを感じます。」

とかなんとか勝手に独白を始めて反応に困った。

「おお!我が神よ!尊き巫女よ!今にその不安と不快さをこの敬虔なる信徒が取り除いてみせます!。

あの血潮の赤きを火にに例え熱きたぎりと清純なる信心の下に!不義不遜なる輩共を皆殺しにし、供物として捧げましょう!」



いや、だからまずは情報収集だっていったのに、勝手に皆殺しを決定するんじゃない。

他の者もあまり担ぎ上げて調子に乗らせない!。

・・・はあ。・・・これで本当に大丈夫なのだろうか?。今になって不安になってきた・・・。胃に悪い心配事が一つ増えたような気がする。



こめかみに手を当ててため息を吐くと私の感情に反応した神が労わるようにそっと肩を叩いてくれた。

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