わたしのヒール

ぷぇんぷえん

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わたしのヒール

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自信満々に通り過ぎるあの人になりたかった
その人は、高いヒールを履いて颯爽と駅の方向へ進んで行った。周りには沢山の人がいてとてもうるさいのに私にはその人の歩く足音が聞こえた。
そんなあの人になりたいと思った日、私は迷子になっていた。まだ小さくて小さくて迷子になって泣いていたのに誰も助けてくれない見てもくれない。それがとても辛かった記憶がある。でも、時間が経つと慣れてきたのかその辛さを感じることはなくなった。
それより、あの人みたいに自信に満ち溢れたヒールを履きたいと思った。

18才の卒業式

その頃が、私が最後に感じた大人でもない子供でもない不思議な感覚で、胸を躍らせていた。
卒業をした記念に初めてのヒールを履いて歩いてみたらとても痛くて痛くて、それでもあの人みたいに歩きたくて何回も何回も試しているうちに、あの頃みたいに慣れてきたのか痛さがなくなり、歩けるようになった。
自信に満ち溢れたあの人みたいに颯爽と歩いて駅に向かった。駅に着いてあの人が向かうはずだった電車の切符を買った。電車を待ってる間きっとあの人は自信に満ち溢れて幸せそうだった。私も幸せな気持ちだった。あの人になれた一番幸せで一番辛くて一番痛い一瞬だった。

来世は最後に死にたくないと思える人生を送りたいなぁ。
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