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出会いは墓地前
五年前の初夏だった。
私が二十歳の時、毎年恒例のお墓参りで国境を越え隣国の緑豊かな墓地にいた。彼女と恋人の墓は仲良く並んでいる。
その日は両親も兄も急用で来られず、私一人での訪問だった。
五月の爽やかな風が草花を揺らして行く。
彼女に手向ける花は白と淡いピンクの芍薬の花。私が作ったブーケだ。墓石の前に屈みブーケを置いた。視界に影が差し、後ろに人がいることに気付いて振り返った。
綺麗な少年が真っ白な薔薇の花束を抱え立っていた。陽に透け輝く金色の髪とブルーの瞳。
薔薇を抱える美少年の破壊力。暫し、互いに言葉を発せずにいる。
さあっと風が吹き抜け前髪が揺らされると、我に返り慌てて会釈した。少年もペコっと頭を下げ困ったように視線を泳がせる。
彼女の命日には、恋人の子孫も長年に渡り花を手向けてくれていた。私が参加する年に、かち合ったことはなかったのだけれど…美少年は恋人の子孫にあたるのかな…。
「あ、毎年花を手向けてくださっているんですよね?ありがとうございます。私は終わりましたから…どうぞ」
端に除け正面を譲った。
少年は墓石の前で跪き花を置くと瞳を閉じた。美少年は何をしても様になる。溜息が出そうになるのを飲み込んだ。
やがて少年は立ち上がる。
「クレマン家の方ですか?」
「ええ、先祖代々恒例の墓参りに来ました。今日は家族が急用で私だけの墓参りになったけど…」
「恒例の?」
ふふっと微笑む美少年。
「僕も家族の都合が合わず、恒例の墓参りに今回は一人で来ました」
墓地は辺鄙な片田舎にあり、小さな駅を降りてバスを乗り継がなくてはならない。
私は車の免許を取るため教習所に通っているがまだ取得出来ずにいた。小旅行のような気持ちで電車とバスに乗りこの地まで来ていた。
少年も同じ行程で来ていたらしい。私達はバスの時間まで近くの素朴な雰囲気のレストランでお茶をして時間を潰すことにした。
レストランには数人の客がいた。交通の便が悪い田舎だが風光明媚なところで、ここ数年この時期になるとピクニックやキャンプで人が集まりようになっていた。
私はコーヒーを少年はカフェオレを頼んで同じ席に着いた。
「私はリディ。あなたは?」
「フェリクスです」
ここまでの道中に何時間かかったかとか他愛もない話をしながら過ごしていると、さっきまで晴れたいたのにぽつぽつと雨粒が路面にシミを作っていく。
空を見上げると、どんよりとした灰色の雲が空を覆っていた。
「天気予報確認してこなかったわ…すぐ止むかな?」
少年がスマホを取り出し確認すると雨は今夜いっぱい降りそうだという。
「まあ、バスに乗れれば問題ないと思いますよ」
雨は次第に激しくなっていった。
まあ、雨には濡れそうだがバスさえ来てくれれば問題ないだろうと心配もしていなかった。
暫くすると、レストランの女主人が私達の席まで来て心配そうに最悪のニュースを伝えてくれた。
「お客さん、観光できているんでしょう?この先の道で土砂崩れが起きたらしくてね…バスも来れないらしいのよ…」
「「えっ!?」」
私達は声を揃えて固まる。
「良かったらうちに泊まっていったら?レストランの上が宿になっているから…」
この片田舎で宿泊施設はここ一軒のみ。私達と同じような境遇の観光客が宿を求めて集まっていた。
私達も慌てて部屋を取ってもらったが、何故か…用意されていたのは一部屋だけだった。どうやら女主人は私達を姉弟と勘違いしていたらしい。別々の部屋にして欲しいとお願いしたが、五部屋しかない小さな宿は満室。
この辺に知り合いもいない。どちらかが野宿…いやいや、この豪雨でそれはない…。
もう、選択肢はなかった。
「僕…オーナーにお願いしてレストランのソファで寝させてもらいます」
フェリクスは神妙な顔で俯く。
「だ、大丈夫よ。ツインのお部屋だし…フェリクスが嫌じゃなければ二人で使おう」
……私だって子供相手にどうこうなることもないし…
フェリクスは一瞬躊躇し、戸惑いながらも頷いた。
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