【本編完結・R18】旦那様、子作りいたしましょう~悪評高きバツイチ侯爵は仔猫系令嬢に翻弄される~

とらやよい

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マッサージ

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ジョアキンが夫婦の問題に真摯に向き合ってくれていることがエメリには予想外だった。

元はと言えばジョアキンの性欲減退、勃起不全が原因なのだが、多くの男性や周囲の人々は夫婦に子が出来なければ女性側の問題と思うのが一般的で…それ故、子が出来ずに離縁という話もよく聞くのだ。

なのに、ジョアキンは正直に話してくれた。
多分、男性が自分の性的な欠陥を話すのには、相手が妻であろうとかなり勇気がいったはずだ。

申し訳ないのと同時に、それが素直に嬉しかった。

泣いた自分を見て責任を感じたのだろうか。
エメリは少なからず自分が泣いてしまったせいでジョアキンを追い詰めたのではないかと責任を感じていた。


それ以降、ジョアキンの体のことは隠さず話して欲しいと懇願した。
今ではジョアキンの身体や健康に関する全ての情報を共有している。

試した薬草は数知れず、奇跡の水と言われた謎の泥水、異国の果物だという身震いするほど酸っぱい実、モグラの手を乾燥したものを煮詰めた激苦薬湯。

性欲減退に効くと言われるものを試し、勃起不全に効くとされるありとあらゆるものに手を出した。
エメリからすれば、それら全てが健康を害してしまうものにしか見えず顔を顰めるしかなかったがジョアキンは本気だった。

勿論、侯爵家の後継者をもうければならないという責任感があるのは当然だ。
そして夫婦となった以上、その責任はエメリ自身も同じく背負うべきことなのだ。
自分に非がないからと言って相手任せにするのは違うと思った。
エメリは自分にも何か出来ないか日々考えるようになっていた。

それからというものエメリは毎日のように王宮内にある王立図書館に通い詰めた。
エメリが座るのは医学書が並んだ一角の奥まった席だ。

「昨日読んだ人間の体の仕組みは解り易くて役に立ちそう…ん?これは…」

厚い本の間に紛れていた薄い本をペラペラと捲るとマッサージに関する本のようだった。
肩こりや腰痛、眼精疲労に効果的なマッサージが紹介されている。
ある言葉が目に入りページを捲る手を止めた。
性感…性的感度を上げるためのマッサージの紹介……。
顔を上げキョロキョロと周囲を見回し誰もいないことを確認して再度、本に顔を突っ込む。

次第に顔に熱が集まり頬が赤らむも瞬きをするのも忘れて図解に見入る。

「こ、これだわ…これなら私にも出来る。旦那様のお役に立てるかもしれない…」

その夜、エメリは早速実行に移した。


ジョアキンの告白以降も今まで同様二人は寝室を共にしていた。
勿論、閨事はないが周囲の目があるので侯爵夫妻の仲は順調であると思わせる必要があるからだ。

以前と大きく違うのは、事実上顔さえ見なかった日々とは違い、無理矢理残業をするようなことなく帰宅するのでジョアキンが十分な睡眠がとれるようになったことだ。
二人はベッドに入ると今日あった出来事を一つ二つ話してから眠りについた。
とても短い会話で肌が触れることも夫婦らしいことも、何もないけれど人としての関係性は随分と改善された気がしていた。
少なくても嫌われていると考えていた時期よりは凄い進歩だ。

二人ともゆっくり寝て十分な睡眠を摂り、朝食を共にする。
問題は解決していないものの比較的平和な日々を送れるようになっていた。


エメリはいつものように隣に横になるジョアキンに声をかけた。

「旦那様、今日図書館でマッサージに関する本を読んだのです。私にも出来そうだったので旦那様にマッサージしてみてもよろしいですか?」

「マッサージ?…ああ、じゃあ…お願いしよう」

そんなに簡単に覚えられるものなのか疑問だが断る理由も見つからずジョアキンは戸惑いながらも頷く。

エメリは準備しておいたタオルとオイルを取り出した。

「旦那様はどの香りがお好みですか?」

「香り?オイルを使うのか?」

「はい、ジャスミンとラベンダー、バラの香りもありますよ」

オイルの入った瓶の蓋を開けジョアキンに嗅がせた。

「…ジャスミンが良いな」

夜着を脱いでもらい下履き姿になったジョアキンを正面からまじまじと観察する。

ジョアキンは文官で机に向かうのが主な仕事だし体を鍛えているイメージがない。
長身だし服を着ていると細身に見えていたが、目の前に現れた意外に逞しい体を見て驚いた。

騎士の様に陽に焼けた肌ではなく、色白で滑らかな美しい肌。
そして、引き締まった体は腹筋が割れているだけでなく、脇腹から下腹部さらに下の際どいところまでエメリの視線を誘導するように斜めに筋肉の筋が走る。

エメリの視線は釘付けになり口が半開きになった。

その色白の美しい肌と筋肉のつき方が妙に淫靡で艶めかしい。堪らずエメリの心臓が煩くなる。
視線を漂わせ俯くと慌てて用意してあったバスタオルを寝そべったジョアキンに掛けた。

呼吸を落ち着かせる為、深呼吸する。

「じゃ、じゃあ…始めます」

「ああ、頼む」

足の指から足裏、足首から脹脛にオイルを馴染ませながら掌を滑らせる。

これは一般的にも行われる血流の流れを良くするためのマッサージだ。

脹脛から太腿までそのまま掌を滑らせていく。
エメリの手とジョアキンの体温で温まったオイルはジャスミンの香りを漂わせる。

何回か繰り返すと、ジョアキンもリラックスしてきたのか瞳を閉じて身を任せている。

「では、旦那様。仰向けになってください」

「…仰向け?」

「はい!」

ジョアキンは首を傾げながらも素直に従う。

また同じように足首から太腿までオイルを馴染ませながら何回か往復すると、徐にジョアキンの膝裏に手を入れ膝を立てさせ、そのまま左右に開かせた。
ベッドの上でカエルの様な姿になるジョアキン。

「は?!…な、何をしている!」

「何をって…マッサージです」

至極当然だと言うように真面目に答える。
慌てたジョアキンが起き上がろうとするのを見てエメリは肩を押し戻した。

「静かにしてください。ちゃんと勉強してきたのですから、私に身を任せてください!はい、リラ~ックス…リラ~ックス…」

「だ、大丈夫なんだろうな…」

動揺しながらも仰向けになるジョアキンに微笑みかける。
開かれた太腿の内側に手を滑らせ撫でるように先程より優しく動かす。
足の付け根に指を当て指圧するようにゆっくりと押していく。
そうすると旦那様が履いている下履きが邪魔に思えてグイッと横にずらした。

「お、おい!やめろっ」

ジョアキンは大きな声を上げ股間を抑えながら下履きを死守する。

「おまえ、どこを触ろうとしているのだ!」

「どこって、足の付け根です…それから、この後もう少し中央の方も…」

「はあ!?」

「そんなに驚かなくとも…以前見せてくれたではありませんか」

「以前は!……おまえが何も知らなすぎるから…教育的な意味でだな……」

告白した夜、エメリの指先がほんの僅かに触れた瞬間、自分の下腹の奥がズクリと鈍く疼いたのを忘れられないでいたジョアキンは戸惑った。
疼いただけでジョアキンのものに特に変化はなかったものの疼くということ自体が新しい発見だったからだ。

エメリがマッサージをしたいと言った時も、身体に触れられることであの時と同じ疼きがあるのか確認したいという思いが浮かんだのは事実だ。
先程まで行われた通常のマッサージで疼きを感じることはなかった。
だとしたら、前回同様に局部に触れられたらどうだろう。

しかし、冷静に考えれば十九歳で閨事の内容も知らないエメリに男性器を触らせるなど異常な振る舞いだ。

確認したい…あの疼きが偶然でないのならば…何か糸口が掴めるかもしれない。
葛藤のあまりグッと押し黙るジョアキンに呆れたエメリが口を開いた。

「わかりました…旦那様もいきなり、どこに触れられるかわからない状況では不安がおありでしょうから。触るときにはどこに触れるのか何をするか説明しながら進めていきます…それならいいでしょう?」

「……う…うむ…それなら…」

エメリはパッと顔を輝かせた。

「安心してください!優しくします!」

まさか、こんなセリフを十九歳の女の子から言われる日が来るとは。
ジョアキンは参ったというように上を向き、そのままベッドに仰向けに寝転んだ。

「では、下履きを脱がせますね」

情緒も何もあったものではない。
エメリは気合を入れて一気に下履きを降ろした。
美しいジョアキンの筋肉を見て動揺してしまったので不安だったが、局部を見ても以前と同じ形状に安堵し、どうにか落ち着いていられた。

「足の付け根の部分に触れますね」

指圧されるのは心地よくてジョアキンも力を抜く。

「では、子種を作る部分に触れます」

「おい…子種を作るってどこで習ったのだ?」

「本に書いてあったのです。人体の仕組みについて書かれた本です」

「ああ…そうか‥‥勉強熱心なことだ…」

ジョアキンは半分呆れながらも触れられる部分が男にとってデリケートな部分であるが故にゴクリと喉を鳴らした。

そっと指先が触れた。
エメリの小さな掌が丸い球形の局部を包み込むように掬う。

エメリに触れられた部分がジワリと熱を持つのがわかった。
フウっと静かに息を吐き気持ちを落ち着かせる。
ジョアキンのモノはピクリとも動かず変化はないが触れられた部分が熱く感じるのは気のせいではない。

「もう片方にも触れますね」

エメリは器用に小さな掌でそれぞれ左右の球体を掬うと、やわやわと揉み始めた。

熱が下腹部にまで上がって来たような感覚に襲われる。
ギュッと瞳を閉じ眉間に皺を寄せた。

エメリの瞳は真剣だった。
これで、もしかするとジョアキンの病気が治るかもしれない。
そんな淡い期待を持っていたのだ。

「痛くはありませんか?」

「ふっ…ああ、大丈夫だ」

冷静を装っていたが局部付近に顔を近づけているエメリの息がジョアキンのモノにかかると背筋をゾゾゾゾッと甘い痺れが一気に這い上がっていく。

「くっ!それまでだ!」

一気に上体を起こすとエメリの両手を掴んだ。ジョアキンの表情は歪み苦しそうだが瞳は潤み頬は赤く染まっている。
息を整えながら確信した。
ハッキリしたことは一つ。
性的な興奮と僅かばかり気持ち良さを感じることは出来る。
だが勃ない。
自分の現状が見えた。


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