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第二巻『[人間]の業は 人の傲慢で 贖われる。』(RoGD Ch.3)
Verse 4-25
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遠くで、影が崩れそうになるのを見た。フィリップ二世はリチャード三世の剣撃を全力で押し込めると、その影の方へ全速力で駆け出した。背後で柄にもない舌打ちが聞こえたが、フィリップ二世は構わずに砂浜を蹴り上げる。やがて鮮明になった遠くの景色で、リチャード一世は片膝をついていた。
(あんの馬鹿!)
アーサー王がエクスカリバーを振りかぶったのを見て、フィリップ二世は片膝をついて今にも倒れ伏しそうなリチャード一世の頭上にナイフを掲げた。
「なっ……!」
酷い音に聞こえた。手に持っていた武器がもろとも、鈍器を落とされたガラスのようにいとも容易く粉々に砕け散っていき、フィリップ二世は呆然と剣を見た。
(まっず——)
慌てて頭を伏せた瞬間、視線の先の砂浜が陰った。頭が割れるような鈍い金属音に頭を上げると、リチャード一世が頭上にロングソードを掲げていた。
「っ馬鹿、お前! 手にひび入ってんじゃねぇか!」
切れた黒い革手袋から見えた素肌には、うっすらと鉱石に入ったようなひびが見えた。右利きの筈のリチャード一世が左でエクスカリバーを受け止めているのを見て、フィリップ二世はだらしなく下がった彼の右腕を見た。至る所にひびが走り、もう一度衝撃を受ければ砕け散りそうである。
「こ、これどうなってんだ!」
「私達の体は肉ではない。[核]から流れ出した[燃料]が大理石のような素材で外見を作り出しているのだ。ただ触れただけでは分からないが、攻撃を受ければ顕著に出る。知らなかったのか?フランス王。」
振り向けば、背後でリチャード三世が剣を振り下ろしかけていた。気合いでエクスカリバーを押し返して、リチャード一世は自由になった剣で背後を防備した。
「待て待て待て待てそれは不味い!」
刃が軽くリチャード一世の剣に触れた時、フィリップ二世はもう一撃を加えようとしたアーサー王に回し蹴りを食らわせた。武器が効かないのであればまだ健在の肉体で応戦するのみである。フィリップ二世は、ROZENで肉弾戦を習得した事をこの時心から感謝した。
「貴様……王を足蹴にするなど。」
「うっせーよ。ボールペンだかドラゴンだか知らねえが俺だって王だよ。」
ルプレヒトに教わった通りの型にはまった白兵戦のやり方しか出来ないが、フィリップ二世はしっかりと構えた。
「……興が削がれた。帰るぞ、三世。」
緩めていた構えを正す事もせずに、アーサー王はエクスカリバーを鞘に仕舞った。リチャード三世もまた鍔迫り合いの手を緩め、跳躍してアーサー王の斜め後ろに降り立つ。
「勝ち逃げのつもりかよ。」
「また会おう獅子心王。」
フィリップ二世の苦言を歯牙にもかけず、アーサー王は現れた時の余裕ぶった微笑みのまま、リチャード三世とともに黒い靄となってその場から消え去った。靄の一筋まで見届けていたフィリップ二世は、はっとして振り返る。剣を浜辺に突き立てて、リチャード一世は両膝をついて上半身を立てているのも難しそうな状態であった。
「馬鹿かお前! 俺が余裕ブッこいて戦ってるんだから呼びゃいいのによ!」
駆け寄って剣から手を離させると、フィリップ二世はひび一つないロングソードを見た。
「不思議か?まあそうだろう……私の剣は、かつて私が持っていた剣とは違う。これはエクスカリバーの元にもなったと言われている剣だ。」
「どうりで俺のナイフみたいにパリーンってならなかったわけだな。」
ひびの入った自らの両腕を見つめて、リチャード一世は苦笑した。[シシャ]に戻ったばかりの体では、受け止める回数でさえ限度があったのだ。修復機能がまともに仕事をしていなかった。
「……そんな事より、フィリップ。お前、ここから空間転移できる元気はあるか?」
「あ?まあヨークのリチャードの奴とは全力だったがさして参ってもねぇよ。お前をアルフレッドの所まで運ぶか?ご要望とあらば俺でも多少の治療は出来るぜ。」
干からびた声を発する元気があるなら、とフィリップ二世は立ち上がった。
「いや、でもここから離れたらユーサーとランスロットはどうするんだ。」
「あの二人は無事だろう……。」
まるで合図のように、白銀の鎧達が各々の拳と獲物を、青紫色の空に高く掲げ、勝利を宣言していた。太陽のてっぺんは、既に見えない。
「成る程な。で、俺はどこに行けばいいんだ?」
「零がベルリンを奔走しているようだが危ない気がする。気がするだけだが、付き合ってやれるならベルリンに移動して見つけ出してくれ。私は……ユーサーとランスロットが戻ってくるのを待つ。顔を真っ青にされそうだがな。」
自らに対して呆れたように笑うリチャード一世を一瞥してフィリップ二世は立ち上がると、任されたようにその場から消え去った。
(確かに屋敷の中にいる全員食い殺しています、ご主人。)
ベルクホーフの屋敷中にはなっていた番犬の頭領がそう伝えると、ルプレヒトは思い思いの場所で伏せて休んだり死体を漁って遊んだりしている犬達を眺めていた。
(言われた人数とは確かに違っておりますが。なんせ使用人などもおりますので正確な人数は把握できません。爆発部分は全員即死です。)
「そうか、ご苦労。」
静かな声で報告を終えた犬は、そのまま任務終了の合図として遠吠えを長く続けた。思い思いに過ごしていた犬達も、それを聞いて答えるようにその場で遠吠えをする。
(爆発部分が即死……という事はヒムラーはシュタウフェンベルク達が爆発物を仕掛けるのを知っていて、彼らが出てきてから数秒遅れて会議室を後にした可能性が——)
椅子から立ち上がって、ルプレヒトが振り返った瞬間、廊下の角を流れるようにして曲がっていく黒髪が目に入った。
「……バスカ、ヴィル?」
長く補佐官であった彼が間違える事などない。黒い長髪といえば理恵もいたが、彼女の髪にしては真っ直ぐに切り揃えられていない上に、先に見た黒髪ほど長くない。
「待て!」
我に返って、ルプレヒトは椅子を転がして廊下を曲がる。大声を出したルプレヒトに、足元に座っていた犬は耳を立てたが、すぐに主人がいなくなると毛繕いを再開した。
(馬鹿な。バスカヴィルは確かに死んだ筈。)
グリゴーリーがユーサー王の所持するカリバーンで左胸を突き刺して絶命したところを、ルプレヒトは確かにその目で見た。そして肉体はユーサー王の元に戻り、バスカヴィルという存在は跡形もなくなっている筈だった。
(俺は……俺は亡霊でも見ているのか?)
すっかり暗くなった廊下をいくら曲がっても、髪がちらりと見えるだけで顔や体を見る事は叶わなかった。相手もどうやら急ぎの用のようで、どこかせかせかとした足音が静寂の中に響いていく。
ゲシュタポの本部を訪れた時、零は絶句した。そこには、親衛隊員の死体が床を覆い尽くしており、足の踏み場もなかった。喉に迫り上がるなにかを飲み込んで、零はその死体の床に踏み込む。漸く世界を照らし始めた淡い月明かりが、彼らの死因を照らし出す。急所に鉛玉を打ち込まれるか、刃物で突き刺されたかのどちらかに分類された。
「っ!」
数多の足音がして、零は抜刀した。制帽の下で、月光を受けてぎらぎらと目を光らせる、報告にあった有象無象の黒服が死体の上を歩いてくる。獣のような息を吐きながら、アンデッドのように歩いていくる彼らを見て、零は緊張を高める。
「……来い!」
怒声を張り上げた零に摑みかかるようにして、黒服達は高く跳躍した。月明かりを受けて淡く輝く刀身は、その黒の中であまりに美しかった。一閃して弧を描けば描くほど、零の周りにその残像の明かりが残る。零に爪の先でさえ触れられずに、黒服達は死体の上に折り重なっていく。徐々に後退して彼らを斬り伏せていると、零は異変に気付いた。黒い波の中で、一人、また一人と頭が起き上がっていく。
「なんだ……殺せてないのか!?」
確かに、零は喉元や左胸を切り裂くか突くかして殺していた。試しに、目の前にいた黒服の複数を一線して致命傷を与える。進みくる黒服の列が、一瞬だけ止まった。
(量があるだ——)
しかし、倒れた黒服は、また何事もなかったかのように起き上がって零に迫る。背中を悪寒が駆け抜ける。報告で埒が明かないと言われているのは、まさに殺しても起き上がるという事だ。零は続けざまに剣撃を繰り出し、これでもかとばかりに首を切り落としたが、首がなくなっても彼らは歩みを止めなかった。最早死の行進である。
(原因を探るどころじゃない……こいつらのろまだからま——)
踵を返したところで、路地のそこら中から零を襲う為に機をうかがう無数の目があった。一体どこで情報共有をしているのか、零が逃げるのであればもう建物の屋根を飛び越えていくしかなかった。久し振りの戦闘に、慣れない頭で思考を張り巡らせていると、すぐ背後にいた黒服達に肩を掴まれ腕を回される。酷く暗く掠れた声で何事か口々に囁いていたが、パニック状態になりかけた零の頭でその言葉を聞き拾って理解している余裕はなかった。がつん、と銃の尻で叩かれる衝撃が頭に響く、零の視界がぐらりと揺れた。
「離れろ、ドブネズミ共。」
耳に届いた声は、酷く凍てついていた。零の頰を、夏風とは思えぬ程寒々しい空気が撫でた。バキン、と氷の割れる音がするや否や、零の背後にあった黒が凍てついていく。
「離れぬと言うのであれば死ね。」
なにかが床から次々と突き出る音がホールを埋め尽くす。しかし、零の頭でそれを認識する事は出来なかった。
(あんの馬鹿!)
アーサー王がエクスカリバーを振りかぶったのを見て、フィリップ二世は片膝をついて今にも倒れ伏しそうなリチャード一世の頭上にナイフを掲げた。
「なっ……!」
酷い音に聞こえた。手に持っていた武器がもろとも、鈍器を落とされたガラスのようにいとも容易く粉々に砕け散っていき、フィリップ二世は呆然と剣を見た。
(まっず——)
慌てて頭を伏せた瞬間、視線の先の砂浜が陰った。頭が割れるような鈍い金属音に頭を上げると、リチャード一世が頭上にロングソードを掲げていた。
「っ馬鹿、お前! 手にひび入ってんじゃねぇか!」
切れた黒い革手袋から見えた素肌には、うっすらと鉱石に入ったようなひびが見えた。右利きの筈のリチャード一世が左でエクスカリバーを受け止めているのを見て、フィリップ二世はだらしなく下がった彼の右腕を見た。至る所にひびが走り、もう一度衝撃を受ければ砕け散りそうである。
「こ、これどうなってんだ!」
「私達の体は肉ではない。[核]から流れ出した[燃料]が大理石のような素材で外見を作り出しているのだ。ただ触れただけでは分からないが、攻撃を受ければ顕著に出る。知らなかったのか?フランス王。」
振り向けば、背後でリチャード三世が剣を振り下ろしかけていた。気合いでエクスカリバーを押し返して、リチャード一世は自由になった剣で背後を防備した。
「待て待て待て待てそれは不味い!」
刃が軽くリチャード一世の剣に触れた時、フィリップ二世はもう一撃を加えようとしたアーサー王に回し蹴りを食らわせた。武器が効かないのであればまだ健在の肉体で応戦するのみである。フィリップ二世は、ROZENで肉弾戦を習得した事をこの時心から感謝した。
「貴様……王を足蹴にするなど。」
「うっせーよ。ボールペンだかドラゴンだか知らねえが俺だって王だよ。」
ルプレヒトに教わった通りの型にはまった白兵戦のやり方しか出来ないが、フィリップ二世はしっかりと構えた。
「……興が削がれた。帰るぞ、三世。」
緩めていた構えを正す事もせずに、アーサー王はエクスカリバーを鞘に仕舞った。リチャード三世もまた鍔迫り合いの手を緩め、跳躍してアーサー王の斜め後ろに降り立つ。
「勝ち逃げのつもりかよ。」
「また会おう獅子心王。」
フィリップ二世の苦言を歯牙にもかけず、アーサー王は現れた時の余裕ぶった微笑みのまま、リチャード三世とともに黒い靄となってその場から消え去った。靄の一筋まで見届けていたフィリップ二世は、はっとして振り返る。剣を浜辺に突き立てて、リチャード一世は両膝をついて上半身を立てているのも難しそうな状態であった。
「馬鹿かお前! 俺が余裕ブッこいて戦ってるんだから呼びゃいいのによ!」
駆け寄って剣から手を離させると、フィリップ二世はひび一つないロングソードを見た。
「不思議か?まあそうだろう……私の剣は、かつて私が持っていた剣とは違う。これはエクスカリバーの元にもなったと言われている剣だ。」
「どうりで俺のナイフみたいにパリーンってならなかったわけだな。」
ひびの入った自らの両腕を見つめて、リチャード一世は苦笑した。[シシャ]に戻ったばかりの体では、受け止める回数でさえ限度があったのだ。修復機能がまともに仕事をしていなかった。
「……そんな事より、フィリップ。お前、ここから空間転移できる元気はあるか?」
「あ?まあヨークのリチャードの奴とは全力だったがさして参ってもねぇよ。お前をアルフレッドの所まで運ぶか?ご要望とあらば俺でも多少の治療は出来るぜ。」
干からびた声を発する元気があるなら、とフィリップ二世は立ち上がった。
「いや、でもここから離れたらユーサーとランスロットはどうするんだ。」
「あの二人は無事だろう……。」
まるで合図のように、白銀の鎧達が各々の拳と獲物を、青紫色の空に高く掲げ、勝利を宣言していた。太陽のてっぺんは、既に見えない。
「成る程な。で、俺はどこに行けばいいんだ?」
「零がベルリンを奔走しているようだが危ない気がする。気がするだけだが、付き合ってやれるならベルリンに移動して見つけ出してくれ。私は……ユーサーとランスロットが戻ってくるのを待つ。顔を真っ青にされそうだがな。」
自らに対して呆れたように笑うリチャード一世を一瞥してフィリップ二世は立ち上がると、任されたようにその場から消え去った。
(確かに屋敷の中にいる全員食い殺しています、ご主人。)
ベルクホーフの屋敷中にはなっていた番犬の頭領がそう伝えると、ルプレヒトは思い思いの場所で伏せて休んだり死体を漁って遊んだりしている犬達を眺めていた。
(言われた人数とは確かに違っておりますが。なんせ使用人などもおりますので正確な人数は把握できません。爆発部分は全員即死です。)
「そうか、ご苦労。」
静かな声で報告を終えた犬は、そのまま任務終了の合図として遠吠えを長く続けた。思い思いに過ごしていた犬達も、それを聞いて答えるようにその場で遠吠えをする。
(爆発部分が即死……という事はヒムラーはシュタウフェンベルク達が爆発物を仕掛けるのを知っていて、彼らが出てきてから数秒遅れて会議室を後にした可能性が——)
椅子から立ち上がって、ルプレヒトが振り返った瞬間、廊下の角を流れるようにして曲がっていく黒髪が目に入った。
「……バスカ、ヴィル?」
長く補佐官であった彼が間違える事などない。黒い長髪といえば理恵もいたが、彼女の髪にしては真っ直ぐに切り揃えられていない上に、先に見た黒髪ほど長くない。
「待て!」
我に返って、ルプレヒトは椅子を転がして廊下を曲がる。大声を出したルプレヒトに、足元に座っていた犬は耳を立てたが、すぐに主人がいなくなると毛繕いを再開した。
(馬鹿な。バスカヴィルは確かに死んだ筈。)
グリゴーリーがユーサー王の所持するカリバーンで左胸を突き刺して絶命したところを、ルプレヒトは確かにその目で見た。そして肉体はユーサー王の元に戻り、バスカヴィルという存在は跡形もなくなっている筈だった。
(俺は……俺は亡霊でも見ているのか?)
すっかり暗くなった廊下をいくら曲がっても、髪がちらりと見えるだけで顔や体を見る事は叶わなかった。相手もどうやら急ぎの用のようで、どこかせかせかとした足音が静寂の中に響いていく。
ゲシュタポの本部を訪れた時、零は絶句した。そこには、親衛隊員の死体が床を覆い尽くしており、足の踏み場もなかった。喉に迫り上がるなにかを飲み込んで、零はその死体の床に踏み込む。漸く世界を照らし始めた淡い月明かりが、彼らの死因を照らし出す。急所に鉛玉を打ち込まれるか、刃物で突き刺されたかのどちらかに分類された。
「っ!」
数多の足音がして、零は抜刀した。制帽の下で、月光を受けてぎらぎらと目を光らせる、報告にあった有象無象の黒服が死体の上を歩いてくる。獣のような息を吐きながら、アンデッドのように歩いていくる彼らを見て、零は緊張を高める。
「……来い!」
怒声を張り上げた零に摑みかかるようにして、黒服達は高く跳躍した。月明かりを受けて淡く輝く刀身は、その黒の中であまりに美しかった。一閃して弧を描けば描くほど、零の周りにその残像の明かりが残る。零に爪の先でさえ触れられずに、黒服達は死体の上に折り重なっていく。徐々に後退して彼らを斬り伏せていると、零は異変に気付いた。黒い波の中で、一人、また一人と頭が起き上がっていく。
「なんだ……殺せてないのか!?」
確かに、零は喉元や左胸を切り裂くか突くかして殺していた。試しに、目の前にいた黒服の複数を一線して致命傷を与える。進みくる黒服の列が、一瞬だけ止まった。
(量があるだ——)
しかし、倒れた黒服は、また何事もなかったかのように起き上がって零に迫る。背中を悪寒が駆け抜ける。報告で埒が明かないと言われているのは、まさに殺しても起き上がるという事だ。零は続けざまに剣撃を繰り出し、これでもかとばかりに首を切り落としたが、首がなくなっても彼らは歩みを止めなかった。最早死の行進である。
(原因を探るどころじゃない……こいつらのろまだからま——)
踵を返したところで、路地のそこら中から零を襲う為に機をうかがう無数の目があった。一体どこで情報共有をしているのか、零が逃げるのであればもう建物の屋根を飛び越えていくしかなかった。久し振りの戦闘に、慣れない頭で思考を張り巡らせていると、すぐ背後にいた黒服達に肩を掴まれ腕を回される。酷く暗く掠れた声で何事か口々に囁いていたが、パニック状態になりかけた零の頭でその言葉を聞き拾って理解している余裕はなかった。がつん、と銃の尻で叩かれる衝撃が頭に響く、零の視界がぐらりと揺れた。
「離れろ、ドブネズミ共。」
耳に届いた声は、酷く凍てついていた。零の頰を、夏風とは思えぬ程寒々しい空気が撫でた。バキン、と氷の割れる音がするや否や、零の背後にあった黒が凍てついていく。
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