233 / 271
第三巻『その痩躯から 死が分たれる その時まで。』(RoGD Ch.4)
Verse 3-10
しおりを挟む
一昼夜続いた吹雪の後、漸く先日までの白んだ陽光が白銀の世界に再び降り注いだ。
(まだまだ外は寒いな。)
日本では桃が咲き始める頃合いだが、ロシアにはまだ春の兆しは見えない。膨らんだ蕾も、芽吹く葉々もなく、針葉樹の森が淡々とロシアの寒風に揺らめいていた。
「大気が安定しないので、本日も昼過ぎからは猛吹雪だそうですよ。」
零の斜め後ろに立ち、フェリクスはカーテンをそっと上げた。
「なら今日も殿下の所には行かないほうがいいか……。」
「残念がられるとは思われますが、仕方ありませんよ。」
今ロマノフ邸に行っても、さして長い時間いられるわけではない。零は窓の金具を外した。
「寒いですよ。」
「少し冷たい風に当たりたい。」
屋敷の中は、暖炉ががんがんに焚かれていて暖かかった。暖かいどころか、零の頭がぼうっとするほど暑かった。
「日本でもやはり雪が?」
「東京は一年に一回くらいしか降らないけど。」
窓枠に積もった雪を握り、だれもいない銀の野へ放り投げる。いまいち長く飛んでくれなかった。
「なら雪が降る日は大層寒いでしょう。」
「[使徒]の皆なんかは石油ストーブの前でダンゴムシだな。」
零の表現にフェリクスは吹き出して、声を出しながら笑った。
「それは可愛らしいですね。いつかお邪魔したいものです。」
一際強い風が屋敷の中に冷たい空気を運び入れて、フェリクスは慌てて窓をきっちりと閉めた。窓の木枠にかかっていた零の指先は、雪を握りしめたせいで真っ赤になっていた。
「さあ、暖かい部屋に行きましょう。体を壊してしまいますから。」
差し出された手に、零は笑いながら手を置いた。フェリクスの手はとても暖かい。雪で少し濡れた手を拭いながら、零はフェリクスに連れられて廊下を歩き出した。
その日もまた、なにごともなく一日が終わりを告げようとしていた。しかし、フェリクスは久し振りにボルシチを掬いながら零の顔を覗く。
「主よ、お加減が優れませんか。」
「……いや、別に。どうしてだ?」
ロマノフ邸の畑で採れたビーツで真っ赤なボルシチを口に運びながら、零は向かい側に座るフェリクスを見た。
「いえ……顔色がいつもよりずっと悪いので。」
ボルシチを食べ終えて、フェリクスはその皿が下げられると共に席を立った。
「失礼致します。」
次の皿を運ぼうとしたゴーレムを手で制して、フェリクスは零の席のすぐ側で屈んだ。
「……やはり。体が全く温まっていません。」
「そもそもが低体温なんだ。」
フェリクスは零の顔をじっと見上げる。蒼白を通り越して色もない零の顔は酷いものだった。
「やはり昨日のが身に応えたのでは……?」
頭を振って、フェリクスは立ち上がって零から離れた。先程の向かい側の席に戻り、ゴーレムが運んできたラム肉のステーキの為に銀食器を手に取る。
「……ボルシチのお味は如何ですか? 今日はスメタナを多く入れたんですよ。」
「そうなのか? ……今日のはいつもより味が薄いな。」
ラム肉にナイフを入れようとしていたフェリクスは、思わずその手を止めた。
「そんなに薄いですか?スメタナ以外の分量は全ていつもと一緒の筈ですが。」
「そうか?全体的に料理の味が薄いというか。寒いとこにいたから味覚が変になったかな。」
震える手で、フェリクスはゆっくりとラム肉を切り始めた。その顔にいつもの微笑みはなく、フェリクスはかすかに息を吐いた。
くぐもった声はとても落胆していた。
『進行が早いね。僕としては当分後だと思ったんだけど。』
「申し訳ありません。僕の監督不行き届きで。」
貴方は悪くないですよ、と受話器越しに医者は言った。
『近々そちらに行っても構いませんか?」
「構いません。むしろ今すぐにでも来てほしいです。これからロマノフ邸には行かせないようにしますので。」
コードを指に絡めながら、フェリクスは眉を寄せながらそう言った。分かりました、という言葉と共に、受話器が降ろされる。フェリクスもまた、持っていた受話器をゆっくりと置いた。
* * *
その日、零はフェリクスの屋敷にある書庫で安静にするようにとゴーレムから伝えられた。
『病状について。味覚、嗅覚、視覚、聴覚、触覚の順に失う。死亡は免れ得ないと考えられる。』
キャップをした万年筆で耳の後ろをなぞりながら、フェリクスは大きく長いため息を吐き出した。肘掛に腕を委ね、天井を見上げていた瞳を閉じる。
『フェリクス様。』
「いらっしゃいましたか。」
音もなく扉の前に立っていたゴーレムに声をかけられ、フェリクスは重い腰を上げた。長い民族調のローブを手で払って、執務室を出る。いつもこの屋敷は静かだ。しかし、零が来てからは少しだけ、弱々しくも温もりが増えた気がしていた。
「アルフレッドさん。」
階段を下がり玄関ホールを見下げると、落ち着いた橙色の髪の男が外を見ながら立っている。吹雪ではないが、外ははらはらと雪が舞っていた。アルフレッドが着ていたキャメル色のダブルロングコートにも、所々粉雪が残っている。
「ユスポフ公。零は?」
「ベッドでは飽きるというので苦肉の策で書庫に……。一応部屋を温めてはいますが。」
やれやれ、とアルフレッドは頭を振った。医療用具が入った鞄を持つと、フェリクスが手を差し出しながら書庫への道を歩き出した。
置いてあったランタンの灯りが一瞬だけ揺らめいた。はっと我に返って、零は顔を上げる。見知った親友の顔だ。
「理由は分かるよね。」
ぱたん、と本を閉じる音が書庫に響き渡った。俯いて目を逸らし、零は肩を落とす。
「分かってる。」
怒気を孕んだ顔でじっと零を見ていたアルフレッドは、数分後に気苦労の絶えなさそうなため息を吐き出した。
「君の寝室に行こう。診るから。」
ゴーレムに本の片付けを頼んで、零はゆっくりと立ち上がる。雪を触った時だけではない。既に暖炉に当たっていなければ一日中指先や爪先が冷え切っていた。書庫の扉のすぐ傍で待っていたフェリクスの手にはトレーが握られていた。トレーの上にはハーブティーの入ったティーポットや空のカップが置いてある。
「ただの診療では寂しいでしょうから。」
トレーを僅かに上げると、アルフレッドは予想していなかったとばかりにティーポットをじっと見つめていた。
「……まあいっか。零は?」
「飲む。」
嬉しそうに微笑んで、フェリクスは、では、と言って寝室に向かう二人の背中をついていった。
ワイシャツを掻き分けて出てきた零の肢体は以前よりもずっと細く見えた。肋骨も僅かに浮き出し、息をめい一杯吸えば骨の形がよく分かるまでになっていた。
「脈も以前よりずっと弱いし、心臓も弱ってるね……。紅茶飲んでる時に悪いけど便通は?」
「……分からん。でも前よりトイレに行かなくなったかな。」
前髪を上げて自らの額を撫でて、アルフレッドは再びため息を吐いた。
「平均体温もだいぶ低い……なにより三食食べてるのにこんなに痩せてる。」
カルテに書き込んだ情報を確認しながら、アルフレッドは肩を落とす。なぞった項目を見つめて、零に視線を戻した。
「……悪いけど、多分君の先はもうそう長くない。」
覚悟をしていたのか、それとも死を体験しているからなのか、零は悪い顔色を一つも変えずにアルフレッドを見ていた。そのガーネットのような煌めきが眩しくて、アルフレッドは深緑色の瞳を少しずらした。
「公、病状について話は?」
「まだ一切しておりません。」
鞄の中にいれていた四つ折りの紙を取り出して、アルフレッドはバインダーに挟んだ。
「味覚、嗅覚、視覚、聴覚、触覚。この順番で君は多分五感を徐々に失っていく。保って一ヶ月か一ヶ月半……。今のままで行けばね。」
紅茶を飲むフェリクスに一度だけ視線をやる。零はカップが唇から離れるまで見つめて、アルフレッドに視線を戻した。
「この体を[シシャ]に戻した場合は?」
俯きつつ、アルフレッドは目頭を揉んだ。
「……分からない。なんにせよモデルケースがないからね。今のところの情報から推測するなら、果たして半月保つかどうか……。」
「長くて半月は保つんだな。」
指を離して顔を上げると、アルフレッドは呆れ返った顔で零を見つめ返した。
「一体何を考えてるんだい?」
「例えゴーレムでも、ほぼ植物状態の俺を世話させるのは忍びない。[シシャ]なら腹も減らないし排泄の必要性もないだろ?」
脚を組み、アルフレッドはサイドテーブルに肩肘をついた。目を瞑って暫く考え込むような素振りを見せる。
「君の気持ちはとても分かるけどね……。」
「拒否する理由があるのか?」
すかさず言葉を紡いできた零に、アルフレッドは早々降参した。両手を上げて、お手上げですとばかりに頭を横に振る。
「分かったよ。今君が[シシャ]に戻っても、アーサー達が感知出来るかどうか分からないほどに脆弱だ。」
満足げに微笑んで、零はベッドから這い出してきた、ワイシャツの前を止めて、革靴を履く。そのまま駆け足でどこかへ行ってしまい、寝室にはフェリクスとアルフレッドだけが残された。
「……よろしかったのですか?」
「貴方が最期まで面倒を見る気があったのは分かります。でもそれより、零の気持ちを優先させてあげたかった。」
眼鏡を外し、アルフレッドは珍しく皺の寄った眉間を人差し指で動かした。
「好きにさせてあげましょう。最期の時ですから。」
* * *
(まだまだ外は寒いな。)
日本では桃が咲き始める頃合いだが、ロシアにはまだ春の兆しは見えない。膨らんだ蕾も、芽吹く葉々もなく、針葉樹の森が淡々とロシアの寒風に揺らめいていた。
「大気が安定しないので、本日も昼過ぎからは猛吹雪だそうですよ。」
零の斜め後ろに立ち、フェリクスはカーテンをそっと上げた。
「なら今日も殿下の所には行かないほうがいいか……。」
「残念がられるとは思われますが、仕方ありませんよ。」
今ロマノフ邸に行っても、さして長い時間いられるわけではない。零は窓の金具を外した。
「寒いですよ。」
「少し冷たい風に当たりたい。」
屋敷の中は、暖炉ががんがんに焚かれていて暖かかった。暖かいどころか、零の頭がぼうっとするほど暑かった。
「日本でもやはり雪が?」
「東京は一年に一回くらいしか降らないけど。」
窓枠に積もった雪を握り、だれもいない銀の野へ放り投げる。いまいち長く飛んでくれなかった。
「なら雪が降る日は大層寒いでしょう。」
「[使徒]の皆なんかは石油ストーブの前でダンゴムシだな。」
零の表現にフェリクスは吹き出して、声を出しながら笑った。
「それは可愛らしいですね。いつかお邪魔したいものです。」
一際強い風が屋敷の中に冷たい空気を運び入れて、フェリクスは慌てて窓をきっちりと閉めた。窓の木枠にかかっていた零の指先は、雪を握りしめたせいで真っ赤になっていた。
「さあ、暖かい部屋に行きましょう。体を壊してしまいますから。」
差し出された手に、零は笑いながら手を置いた。フェリクスの手はとても暖かい。雪で少し濡れた手を拭いながら、零はフェリクスに連れられて廊下を歩き出した。
その日もまた、なにごともなく一日が終わりを告げようとしていた。しかし、フェリクスは久し振りにボルシチを掬いながら零の顔を覗く。
「主よ、お加減が優れませんか。」
「……いや、別に。どうしてだ?」
ロマノフ邸の畑で採れたビーツで真っ赤なボルシチを口に運びながら、零は向かい側に座るフェリクスを見た。
「いえ……顔色がいつもよりずっと悪いので。」
ボルシチを食べ終えて、フェリクスはその皿が下げられると共に席を立った。
「失礼致します。」
次の皿を運ぼうとしたゴーレムを手で制して、フェリクスは零の席のすぐ側で屈んだ。
「……やはり。体が全く温まっていません。」
「そもそもが低体温なんだ。」
フェリクスは零の顔をじっと見上げる。蒼白を通り越して色もない零の顔は酷いものだった。
「やはり昨日のが身に応えたのでは……?」
頭を振って、フェリクスは立ち上がって零から離れた。先程の向かい側の席に戻り、ゴーレムが運んできたラム肉のステーキの為に銀食器を手に取る。
「……ボルシチのお味は如何ですか? 今日はスメタナを多く入れたんですよ。」
「そうなのか? ……今日のはいつもより味が薄いな。」
ラム肉にナイフを入れようとしていたフェリクスは、思わずその手を止めた。
「そんなに薄いですか?スメタナ以外の分量は全ていつもと一緒の筈ですが。」
「そうか?全体的に料理の味が薄いというか。寒いとこにいたから味覚が変になったかな。」
震える手で、フェリクスはゆっくりとラム肉を切り始めた。その顔にいつもの微笑みはなく、フェリクスはかすかに息を吐いた。
くぐもった声はとても落胆していた。
『進行が早いね。僕としては当分後だと思ったんだけど。』
「申し訳ありません。僕の監督不行き届きで。」
貴方は悪くないですよ、と受話器越しに医者は言った。
『近々そちらに行っても構いませんか?」
「構いません。むしろ今すぐにでも来てほしいです。これからロマノフ邸には行かせないようにしますので。」
コードを指に絡めながら、フェリクスは眉を寄せながらそう言った。分かりました、という言葉と共に、受話器が降ろされる。フェリクスもまた、持っていた受話器をゆっくりと置いた。
* * *
その日、零はフェリクスの屋敷にある書庫で安静にするようにとゴーレムから伝えられた。
『病状について。味覚、嗅覚、視覚、聴覚、触覚の順に失う。死亡は免れ得ないと考えられる。』
キャップをした万年筆で耳の後ろをなぞりながら、フェリクスは大きく長いため息を吐き出した。肘掛に腕を委ね、天井を見上げていた瞳を閉じる。
『フェリクス様。』
「いらっしゃいましたか。」
音もなく扉の前に立っていたゴーレムに声をかけられ、フェリクスは重い腰を上げた。長い民族調のローブを手で払って、執務室を出る。いつもこの屋敷は静かだ。しかし、零が来てからは少しだけ、弱々しくも温もりが増えた気がしていた。
「アルフレッドさん。」
階段を下がり玄関ホールを見下げると、落ち着いた橙色の髪の男が外を見ながら立っている。吹雪ではないが、外ははらはらと雪が舞っていた。アルフレッドが着ていたキャメル色のダブルロングコートにも、所々粉雪が残っている。
「ユスポフ公。零は?」
「ベッドでは飽きるというので苦肉の策で書庫に……。一応部屋を温めてはいますが。」
やれやれ、とアルフレッドは頭を振った。医療用具が入った鞄を持つと、フェリクスが手を差し出しながら書庫への道を歩き出した。
置いてあったランタンの灯りが一瞬だけ揺らめいた。はっと我に返って、零は顔を上げる。見知った親友の顔だ。
「理由は分かるよね。」
ぱたん、と本を閉じる音が書庫に響き渡った。俯いて目を逸らし、零は肩を落とす。
「分かってる。」
怒気を孕んだ顔でじっと零を見ていたアルフレッドは、数分後に気苦労の絶えなさそうなため息を吐き出した。
「君の寝室に行こう。診るから。」
ゴーレムに本の片付けを頼んで、零はゆっくりと立ち上がる。雪を触った時だけではない。既に暖炉に当たっていなければ一日中指先や爪先が冷え切っていた。書庫の扉のすぐ傍で待っていたフェリクスの手にはトレーが握られていた。トレーの上にはハーブティーの入ったティーポットや空のカップが置いてある。
「ただの診療では寂しいでしょうから。」
トレーを僅かに上げると、アルフレッドは予想していなかったとばかりにティーポットをじっと見つめていた。
「……まあいっか。零は?」
「飲む。」
嬉しそうに微笑んで、フェリクスは、では、と言って寝室に向かう二人の背中をついていった。
ワイシャツを掻き分けて出てきた零の肢体は以前よりもずっと細く見えた。肋骨も僅かに浮き出し、息をめい一杯吸えば骨の形がよく分かるまでになっていた。
「脈も以前よりずっと弱いし、心臓も弱ってるね……。紅茶飲んでる時に悪いけど便通は?」
「……分からん。でも前よりトイレに行かなくなったかな。」
前髪を上げて自らの額を撫でて、アルフレッドは再びため息を吐いた。
「平均体温もだいぶ低い……なにより三食食べてるのにこんなに痩せてる。」
カルテに書き込んだ情報を確認しながら、アルフレッドは肩を落とす。なぞった項目を見つめて、零に視線を戻した。
「……悪いけど、多分君の先はもうそう長くない。」
覚悟をしていたのか、それとも死を体験しているからなのか、零は悪い顔色を一つも変えずにアルフレッドを見ていた。そのガーネットのような煌めきが眩しくて、アルフレッドは深緑色の瞳を少しずらした。
「公、病状について話は?」
「まだ一切しておりません。」
鞄の中にいれていた四つ折りの紙を取り出して、アルフレッドはバインダーに挟んだ。
「味覚、嗅覚、視覚、聴覚、触覚。この順番で君は多分五感を徐々に失っていく。保って一ヶ月か一ヶ月半……。今のままで行けばね。」
紅茶を飲むフェリクスに一度だけ視線をやる。零はカップが唇から離れるまで見つめて、アルフレッドに視線を戻した。
「この体を[シシャ]に戻した場合は?」
俯きつつ、アルフレッドは目頭を揉んだ。
「……分からない。なんにせよモデルケースがないからね。今のところの情報から推測するなら、果たして半月保つかどうか……。」
「長くて半月は保つんだな。」
指を離して顔を上げると、アルフレッドは呆れ返った顔で零を見つめ返した。
「一体何を考えてるんだい?」
「例えゴーレムでも、ほぼ植物状態の俺を世話させるのは忍びない。[シシャ]なら腹も減らないし排泄の必要性もないだろ?」
脚を組み、アルフレッドはサイドテーブルに肩肘をついた。目を瞑って暫く考え込むような素振りを見せる。
「君の気持ちはとても分かるけどね……。」
「拒否する理由があるのか?」
すかさず言葉を紡いできた零に、アルフレッドは早々降参した。両手を上げて、お手上げですとばかりに頭を横に振る。
「分かったよ。今君が[シシャ]に戻っても、アーサー達が感知出来るかどうか分からないほどに脆弱だ。」
満足げに微笑んで、零はベッドから這い出してきた、ワイシャツの前を止めて、革靴を履く。そのまま駆け足でどこかへ行ってしまい、寝室にはフェリクスとアルフレッドだけが残された。
「……よろしかったのですか?」
「貴方が最期まで面倒を見る気があったのは分かります。でもそれより、零の気持ちを優先させてあげたかった。」
眼鏡を外し、アルフレッドは珍しく皺の寄った眉間を人差し指で動かした。
「好きにさせてあげましょう。最期の時ですから。」
* * *
0
あなたにおすすめの小説
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
『召喚ニートの異世界草原記』
KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。
ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。
剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。
――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。
面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。
そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。
「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。
昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。
……だから、今度は俺が――。
現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。
少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。
引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。
※こんな物も召喚して欲しいなって
言うのがあればリクエストして下さい。
出せるか分かりませんがやってみます。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる