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第一巻『この幻想が 薔薇色の誇りに なると信じて。』(RoGD Ch.2)
Verse 2-21
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最初のプログラムはディニークのひばり。観客の気分を高揚させるには打ってつけの楽曲である。春のひばりの飛翔を彷彿とさせる急上昇と急降下。その明るい曲調は紳士淑女の頬を緩める。この最高峰の技巧を弾き通すはまさに、ひばりを撃ち落とすかのようなものであった。
第二プログラムはパッヘルベルのカノン編曲版。前曲と打って変わり、穏やかな落ち着いた曲目である。伴奏がピアノに変わった事により、優雅さとはまた別の独特の雰囲気を出していた。曲の頂点に行くまで、ゆっくりと確実に盛大になる旋律。高音は朝を知らせる透き通った陽の光のようである。重なり合う音は天上高く昇っていった。緩やかなスピードは、観客達の緊張を解す。
第三プログラム、グノーのアヴェ・マリア。静かなメロディーがホールの中を満たしていく。豪華さを出すのではなく敢えて素朴に、祈りを捧げるような音色。ヴィブラートは、決して揺れない透明な湖面を僅かに揺らすように。
最後のプログラム、ヴィヴァルディの四季から冬、第一楽章の編曲版。しんしんと降る雪の静けさから、まさに吹雪のような激しさへ。目を刺すような白い日差しを彷彿とさせる僅かな長調部分。永遠に苦しみ抜いた、裂くようなヴァイオリンの刻み。吐く吐息でさえ白くなっていくようであった。
一瞬の息を呑んだ静寂の後、拍手喝采が鳴り響いた。だれもが感動していた胸を打たれていた。婦人達の化粧には涙の跡が残っている。紳士達の手という手にはハンカチーフが握られていた。どこからもブラボーの声が次々と発せられる。礼も忘れてジークフリートが退場してからも、その拍手はホールを揺るがすように鳴り響いていた。ジークフリートが再びヴァイオリンを持って戻ってくる。その胸には一輪の季節違いな花が飾られていた。ヤグルマギクである。
アンコール。ラフマニノフ、歌曲ヴォカリーズ編曲版。穏やかな、とこか寂しげな旋律。小さく揺れる心情はビブラートで表される。沈みゆくなかで美しい色を放つ夕焼けの太陽。ゆっくりとした旋律は、まるで遠き友人を思うように。決して叶わない感情、吐き出そうとした言葉は吐息とともに消えていく。
観客達のホールは早々に立食会場へ様変わりした。すっかり壁の華を決め込んでいたレイは、ジークフリートが最後に弾いたヴォカリーズを永遠と頭の中に流している。いや、勝手に耳元で鳴り響いていた。ジークフリートが会食に入ってくると招待された人々はわっと歓声を上げて彼に歩み寄る。その人混みを掻き分けて、ジークフリートはレイの元へ歩いて行った。
「おいおい、俺より客人の相手をしたほうが。」
「いや、いいんだ。言っただろ、僕の友人に捧げる、って。」
レイはまじまじとジークフリートを見つめた。
「聞かせてくれ、お前の感想を。」
唾を飲み込んで、ジークフリートに促されるままに目の前にあった席に向かい合って座る。ワインの注がれたグラスの縁をそっと指先で撫でながら、レイは一度目を閉じた。
「俺が今まで、音楽をあまり聞かなかったのは、その……昔ピアノをやってたんだがやめたんだ。意欲がなかっただけだ。でも、それ以来好きじゃなくなった。今日も本当は怖かったんだ。もしかしてお前のヴァイオリンに集中できないんじゃないかって。他のものに目移りして……心から聴いてやれないんじゃないかと。」
少し目を開けると、ジークフリートは真摯にその言葉を受け止めていた。
「まずは礼を言わせてくれジークフリート。今日は招待してくれて本当にありがとう。お前のヴァイオリンは……最高だった。」
第二プログラムはパッヘルベルのカノン編曲版。前曲と打って変わり、穏やかな落ち着いた曲目である。伴奏がピアノに変わった事により、優雅さとはまた別の独特の雰囲気を出していた。曲の頂点に行くまで、ゆっくりと確実に盛大になる旋律。高音は朝を知らせる透き通った陽の光のようである。重なり合う音は天上高く昇っていった。緩やかなスピードは、観客達の緊張を解す。
第三プログラム、グノーのアヴェ・マリア。静かなメロディーがホールの中を満たしていく。豪華さを出すのではなく敢えて素朴に、祈りを捧げるような音色。ヴィブラートは、決して揺れない透明な湖面を僅かに揺らすように。
最後のプログラム、ヴィヴァルディの四季から冬、第一楽章の編曲版。しんしんと降る雪の静けさから、まさに吹雪のような激しさへ。目を刺すような白い日差しを彷彿とさせる僅かな長調部分。永遠に苦しみ抜いた、裂くようなヴァイオリンの刻み。吐く吐息でさえ白くなっていくようであった。
一瞬の息を呑んだ静寂の後、拍手喝采が鳴り響いた。だれもが感動していた胸を打たれていた。婦人達の化粧には涙の跡が残っている。紳士達の手という手にはハンカチーフが握られていた。どこからもブラボーの声が次々と発せられる。礼も忘れてジークフリートが退場してからも、その拍手はホールを揺るがすように鳴り響いていた。ジークフリートが再びヴァイオリンを持って戻ってくる。その胸には一輪の季節違いな花が飾られていた。ヤグルマギクである。
アンコール。ラフマニノフ、歌曲ヴォカリーズ編曲版。穏やかな、とこか寂しげな旋律。小さく揺れる心情はビブラートで表される。沈みゆくなかで美しい色を放つ夕焼けの太陽。ゆっくりとした旋律は、まるで遠き友人を思うように。決して叶わない感情、吐き出そうとした言葉は吐息とともに消えていく。
観客達のホールは早々に立食会場へ様変わりした。すっかり壁の華を決め込んでいたレイは、ジークフリートが最後に弾いたヴォカリーズを永遠と頭の中に流している。いや、勝手に耳元で鳴り響いていた。ジークフリートが会食に入ってくると招待された人々はわっと歓声を上げて彼に歩み寄る。その人混みを掻き分けて、ジークフリートはレイの元へ歩いて行った。
「おいおい、俺より客人の相手をしたほうが。」
「いや、いいんだ。言っただろ、僕の友人に捧げる、って。」
レイはまじまじとジークフリートを見つめた。
「聞かせてくれ、お前の感想を。」
唾を飲み込んで、ジークフリートに促されるままに目の前にあった席に向かい合って座る。ワインの注がれたグラスの縁をそっと指先で撫でながら、レイは一度目を閉じた。
「俺が今まで、音楽をあまり聞かなかったのは、その……昔ピアノをやってたんだがやめたんだ。意欲がなかっただけだ。でも、それ以来好きじゃなくなった。今日も本当は怖かったんだ。もしかしてお前のヴァイオリンに集中できないんじゃないかって。他のものに目移りして……心から聴いてやれないんじゃないかと。」
少し目を開けると、ジークフリートは真摯にその言葉を受け止めていた。
「まずは礼を言わせてくれジークフリート。今日は招待してくれて本当にありがとう。お前のヴァイオリンは……最高だった。」
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