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父のいない世界

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僕の父は死んだ。
僕は自殺した。

そして異世界に転移した。
僕はまた自殺した。
また転移した。

僕はまた自殺した。
また異世界に転移した。
俺はまた自殺した。

また異世界に転移した。
俺はまた自殺した。
まだ異世界に転移した。
俺はそこから何回も何十回も自殺して自殺して時には殺してくれるように頼んで死んで転移して自殺してを繰り返した。



父は僕を男手1つで育ててくれた。
母親がいないって理由で虐められるようになって、何で自分には母がいないのか、死んだらあいつらに復讐できるかなって考える日々だった。
父に酷い言葉を投げた時もあった。それでも父は困ったような笑顔で「ご飯できたよ」と言うだけだった。

父は交通事故で死んだ。クリスマスの夜、サンタさんは僕から何もかも奪った。
最初は実感が湧かなくて、頭が真っ白で呼吸が止まった。次に涙が出てきて、それなのに葬儀はどうやって取り行おうかぼんやりと考えてた。

遺体を見せてもらった時、初めて父が死んだんだって頭が認識した。それまでは少し遠い人の事のように感じていた事が一気に押し寄せてきた。
父が骨になって帰ってくるまで何をしてたか鮮明に思い出せない、親族が家から帰った時に父と2人きりになった。



父の入った箱を抱きしめながらどうするか考えた。父以外に生きる理由が無くて、どれだけ大切だったのかどれだけ僕の支えだったのかが苦しいくらいに心に染みてきた。
こんな世界にいる意味ない。死のう。そう思ったら心と体は軽かった。そのままベランダに出ておりようと思った。

抱えていた父を棚に置いて、いってきますをちゃんと言って。雪と共に空に舞った。

僕は死んだ。父のいない世界から。



そして死んだのに転移した。父のいない異世界へ。

何回も何回も何十回も何百回も死んで死んで死んで死んで、苦しいのと痛いのを全部無視して死んで死んで死んで死んで。



[地獄へようこそ]



死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死

「ねえ、ねえ!!」

沢山の異世界で話しかけてくる人はいる。でもこの世界も違う、死の

「そこにいると危ないから!!よっと」

死の…死ねない、死ねない、?

「離せ!!離せ!!離して!!離して!!」

抱きしめられて動けない、目の前で死ねるのに死にいけない。やめて、やめて、死なせて、、死なせて。
俺を抱きしめている人は何も言わない。何でだ、こういう状況なったら死ぬのは良くないとか綺麗事を言わないか?

「…今からご飯作るからさ、一緒に食べよ?」

「…え?」

手を繋がれ階段を降り始める人の後ろを慌ててついていく。誘拐とか拷問とか色んな事が頭によぎったが、どうせ死ぬんだしと考えない事にした。



部屋について椅子に座った時もまだ状況が理解出来なかった。家と似ている、少し狭くて物が少なくて少し大きい机と対面の椅子がある。どこからも暖かさが伝わってくるような部屋。
コトコトふつふつと手際良く料理をする彼は

「ちょっと待っててね~」

と言い鼻歌を奏でながらキッチン内を動いている。
逃げようかと思った直後

「はいどーぞ~アレルギーとかあったら言ってね」

目の前にシチューが出てきた。対面の椅子に彼は座っていただきまーすと食べはじめている、毒は無さそうだ。ただ食べるのに躊躇ってしまう。

「食欲無いかな、無理して食べなくていいよ」

あははと申し訳なさそうに笑う彼を見て、手が勝手にスプーンを持ちシチューを口に突っ込んだ。

「…おいしい、」

父の…父さんの作ったシチューと似た味がする。夢中で口に頬張る、むせる、食べる。懐かしさと優しさの混じった味を感じてる内に、気がついたら涙が出ていた。

「おいしいならよかった」

泣きながら食べてる俺を見て彼は一瞬驚いたが、すぐに慈愛の眼差しになった。

食べ終わり、おかわりいる?と言われ俺は頷いた。2杯目も噛み締めて食べ終え、食べたかったが胃が苦しく断念した。
ぼーっとしている俺と対象的に彼は皿を下げ洗い食後の紅茶まで用意してくれた。ありがとうございますと言いゆっくりと飲む。
俺の涙が止まっているのを見て、彼は話し始めた。

「ごめんね、急に家に連れてきちゃって…怖かったよね。君が助けを求めてるんなら僕が手伝うよ。…もちろんちょっと働いてもらうけどね~」

「…へ、…は、はい…」

働く…強制労働とかそういうのなのだろうか?別の異世界で少し働いた事はあるからある程度は覚悟出来ているが、何をやるのだろうか…



「よーしそれじゃあ掃除を手伝ってもらおう~!」

「…は、い」

エプロンを着た俺らは簡易的な掃除をする事になった。特に片付ける所も無さそうだが、恐らく僕に居ていいよという理由をくれたんだろう。

…でも迷惑になるし、掃除が終わったら出てかなきゃ。シチューのお礼代わりに頑張って床を磨く。
ピカピカになった床を見て嬉しそうな彼を見て、少し寂しくなった。エプロンを脱いで本当にありがとうございましたと言い玄関に向かう。

そんな俺を見て悟ったのか彼は俊敏な動きで僕の前を遮る。

「ま、待ってっ!!」

「…お世話になりました、これ以上居ても迷惑をかけるだけなので失礼します。シチューありがとうございました。」

感謝を伝えて去ろうとする…が、手を掴まれた。

「…ごめんなさい、行かなきゃなのでさよ」

「…晩御飯、生姜焼きなんだけど一緒に食べよ…?」

握る手は強く優しく俺を生きさせようとする。…お節介だなぁ。正義感が強くて、僕の事をずっと愛してくれる訳じゃないのに生きさせようとして、無責任にも程がある。

「…無責任に優しくしないでください。」

「無責任じゃないよ」

「...俺の事何も知らない癖に!!…止めないで下さいよ。僕に同情したんですか?憐れんだんですか?」

「ううん、違う。」

「何が違うんですか!!そうでしょ!!僕の事憐れなやつだって、惨めだから慰めようとしてるんでしょ!?」

「…ううん。屋上にいた君を見て、お腹空いてそうだったから。」

「………は?」

「それだけ。君を救おうとも…いや、お腹いっぱい食べてくれたらいいな~とは思ったけどそれ以外には何も感じていないよ。」

この人は…頭がおかしいのか?言い訳を並べたのか?少年に対して性的興奮を覚える人物なのか?…もしかしたらそうなのかもしれない、でなければ引き止めないよな。

そう思うとさっさとこの人の欲を解放させてから出ていこうと冷静に思って服を脱ぐ。彼はえ!?風邪ひくよ!?と慌てて服を着せようとしてくる。
往生際が悪いなぁと思いながらシャツ一枚だけになってベッドの上に寝転ぶ。

「…お礼しますから……来て、?………しよ。」

そう言いながら彼を見ようとしたが視界内にいない。え?となり起き上がると

(パシ)

頭を何かの束?のようなもので軽くはたかれる。!?と横を見ると彼が悲しそうな目で新聞紙を丸めながら俺を見ていた。

「…君みたいな歳の子がどこでこんなの覚えてきたの。言いたくないだろうから聞かないけど、軽々しくやっちゃダメだよ。」

「………で、でもお礼」

(ぺシ)

「…とりあえずお茶持ってくるね。…今切らしてたんだった…コーヒーでもいい?」

彼はそう言うと服をベッドに置き僕の頭を撫でて着替えなと去ってしまった。…こういう趣味があるのではないのか?いや隠している可能性もある。今の所犯される事は無さそうだ、このままここから逃げようかな…

「コーヒーどうぞ。...なんでまだ服着てないの...はぁ...」

ぼーっとしていた俺に向かって呆れたように彼は言った。なんか居心地が悪い...俺のせいだが...。

「...俺やっぱ帰ります。それじゃ...」

「...送ってくよ。」

「いやいいです。」

「...死ぬの?」

真っ直ぐに俺を見つめてくる彼、すぐに別れるしいいかとそうですと答えた。

「うーん...ごめん嘘ついちゃってたね」

あははと苦笑いしながら彼は簡単に

「…僕が僕の意思で助けようと、助けたいと思っちゃって助けた命だから。君が生きたいって思えるように、楽しいって思えるような毎日を贈るから。…お願い死なないで。」

そう言ってのけた、関わってすぐの僕に。何を言っているんだこの人は...と思いながら出ていこうとする。

「とりあえずさ、何日か家にいなよ。それで判断してくれたらいいし」

「迷惑なので辞めてください。...性交しますからそれでいいでしょ。」

「...僕にそんな趣味はないよ...とにかくだ!!僕の名前は人吉ひとよし。26歳の趣味は料理な職業は...作家だよ、君の名前も教えてね」

...この人は本当に頭がおかしいのか?名前の通りお人好しすぎる、どうやら俺を解放する気は無いようだ。適当に答えながら寝ている間に逃げるか刃物で死ねばいいかと考えをまとめる。

「それじゃあよろしくね~みのる。」


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