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「それでは、文化祭の出し物はロミオとジュリエットに決定!」
黒板に書かれた数個の提案の中から、実行委員がチョークで大きく丸を付ける。
「じゃあ、次は配役なんだけど~」
教壇に立ったクラスメイトが詳細を詰めていく中、白石結月は朝日陽太に視線を走らせた。
(ロミオは絶対、朝日くんだよな……)
心の中で呟き、陽太の横顔を見つめる。通った鼻筋に、形のいい唇。教室に差し込む光が、金に近い髪をキラキラと照らす。その横顔はいつ見ても綺麗で、結月は思わず見惚れてしまう。視線に気づいた陽太が結月の方を振り返り、微笑んだ。
「っ……」
優しい眼差しと笑みに、パッと視線を逸らす。その反応に陽太は楽し気に肩を揺らした。それだけで、結月の鼓動は走り出す。
(あんな素敵な人が、僕の恋人だなんて信じられない……)
二人が付き合い始めて三か月、交際はとても順調だった。陽太はとにかく優しくて、温かくて、かっこいい。
そんな陽太が、ロミオを演じるところを想像して、結月はぽうっと頬を染める。
(うん! やっぱり朝日くんしかいない!)
そう思い、結月はロミオ役の投票用紙に、大きく陽太の名前を書いた。
「え⁉ ロミオ役を……断る?」
「うん」
昼休み、いつものように陽太と結月は一緒にお昼を食べていた。陽太の言葉に驚いて、結月はお弁当の卵焼きを落としそうになる。それをすんでのところで阻止し、ホッと胸をなでおろした。
文化祭、クラスの出し物は演劇に決まった。演目は「ロミオとジュリエット」。結月の思い通り、陽太はほぼ満票でロミオ役に決まったのだが。
「え? 何で?」
それを断ると言う。楽しみにしていた結月は、理由が分からず首を傾げる。
「何でって……」
結月の返事に、陽太がちらっと窺うような視線を向ける。だが、考え込んでいる結月は気づかない。
(どうしてだろ……もしかして自信がないとか)
そう思い、陽太を勇気づけるように力強く拳を握る。
「大丈夫! ロミオ役は朝日くんしかいないよ! 絶対素敵だし、絶対かっこいい!」
「…………」
「僕、朝日くんのロミオ見たいな」
いつになくきらきらと瞳を輝かせる結月に、陽太は少し考えこむ。
「……まあ、白石がそういうならやってみようかな……」
少しの間のあとそう言った陽太に、うんうんと強くうなずく。
「楽しみだなぁ……」
結月は顔を綻ばせる。まだ見ぬ『ロミオ陽太』に想いを馳せ、無事に救出した卵焼きを口に運ぶ。
「ふっ……ついてる」
笑い声が聞こえたと思ったら、陽太の手が口に付いた食べくずを取り、そのまま口に入れた。
「っ……えっ…………あ、ありがと」
一瞬、何をされたか分からなかった結月は、次の瞬間お湯が沸いたような勢いで赤く染まった。
「顔真っ赤……かぁ~わい」
結月の反応に満足げに微笑み、陽太が弁当に箸を伸ばす。
触れられた頬が熱い。陽太の甘い雰囲気に、恋心がキュンと痺れた。高鳴る胸を抱えながら、結月もふふっ、とはにかむ。
この時、結月はまだ知らなかった。陽太のロミオが見たい、その言葉を後悔することを――
黒板に書かれた数個の提案の中から、実行委員がチョークで大きく丸を付ける。
「じゃあ、次は配役なんだけど~」
教壇に立ったクラスメイトが詳細を詰めていく中、白石結月は朝日陽太に視線を走らせた。
(ロミオは絶対、朝日くんだよな……)
心の中で呟き、陽太の横顔を見つめる。通った鼻筋に、形のいい唇。教室に差し込む光が、金に近い髪をキラキラと照らす。その横顔はいつ見ても綺麗で、結月は思わず見惚れてしまう。視線に気づいた陽太が結月の方を振り返り、微笑んだ。
「っ……」
優しい眼差しと笑みに、パッと視線を逸らす。その反応に陽太は楽し気に肩を揺らした。それだけで、結月の鼓動は走り出す。
(あんな素敵な人が、僕の恋人だなんて信じられない……)
二人が付き合い始めて三か月、交際はとても順調だった。陽太はとにかく優しくて、温かくて、かっこいい。
そんな陽太が、ロミオを演じるところを想像して、結月はぽうっと頬を染める。
(うん! やっぱり朝日くんしかいない!)
そう思い、結月はロミオ役の投票用紙に、大きく陽太の名前を書いた。
「え⁉ ロミオ役を……断る?」
「うん」
昼休み、いつものように陽太と結月は一緒にお昼を食べていた。陽太の言葉に驚いて、結月はお弁当の卵焼きを落としそうになる。それをすんでのところで阻止し、ホッと胸をなでおろした。
文化祭、クラスの出し物は演劇に決まった。演目は「ロミオとジュリエット」。結月の思い通り、陽太はほぼ満票でロミオ役に決まったのだが。
「え? 何で?」
それを断ると言う。楽しみにしていた結月は、理由が分からず首を傾げる。
「何でって……」
結月の返事に、陽太がちらっと窺うような視線を向ける。だが、考え込んでいる結月は気づかない。
(どうしてだろ……もしかして自信がないとか)
そう思い、陽太を勇気づけるように力強く拳を握る。
「大丈夫! ロミオ役は朝日くんしかいないよ! 絶対素敵だし、絶対かっこいい!」
「…………」
「僕、朝日くんのロミオ見たいな」
いつになくきらきらと瞳を輝かせる結月に、陽太は少し考えこむ。
「……まあ、白石がそういうならやってみようかな……」
少しの間のあとそう言った陽太に、うんうんと強くうなずく。
「楽しみだなぁ……」
結月は顔を綻ばせる。まだ見ぬ『ロミオ陽太』に想いを馳せ、無事に救出した卵焼きを口に運ぶ。
「ふっ……ついてる」
笑い声が聞こえたと思ったら、陽太の手が口に付いた食べくずを取り、そのまま口に入れた。
「っ……えっ…………あ、ありがと」
一瞬、何をされたか分からなかった結月は、次の瞬間お湯が沸いたような勢いで赤く染まった。
「顔真っ赤……かぁ~わい」
結月の反応に満足げに微笑み、陽太が弁当に箸を伸ばす。
触れられた頬が熱い。陽太の甘い雰囲気に、恋心がキュンと痺れた。高鳴る胸を抱えながら、結月もふふっ、とはにかむ。
この時、結月はまだ知らなかった。陽太のロミオが見たい、その言葉を後悔することを――
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