モンキー骨董屋

さる

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正夫と愛

嫌悪

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薄暗い店内。
棚の隙間から差し込む午後の光が、粉塵をゆっくりと浮かび上がらせていた。

聴取に応じるのは店主の ブルーノ と、店に居合わせた ネネ。
二人の前に立つのは、刑事の 正夫 と、その相棒の 愛 である。

ブルーノはゆったりした笑みを浮かべ、両手を組んでいる。
ネネは不安げにバッグの紐を握り、視線を落としていた。


正夫は周囲を一瞥しながら、淡々と切り出す。

「最近この界隈で、女性の行方不明が続いてましてね。
 お二人、何か気になる人物や出来事はありませんでした?」

ブルーノは眉を下げ、申し訳なさそうな声を出した。

「いやぁ、刑事さん……困りましたねぇ。
 うちは静かな店でして。
 そんな危ない話、耳に入らないんですよ」

その口調は柔らかい。
だが――ネネの横で、彼の目はほんの一瞬だけ鋭く光った。

ネネも続けるようにか細く言った。

「わ、私も……特に何も……
 今日はたまたま、古い楽譜を探しに来ただけで……」

正夫はネネをじっと見た。
その目は――“空白”を見る目。

(……おかしい。
 この娘、普通の反応じゃない。
 恐怖じゃない“別の何か”を抱えてる……)

愛も横で小さく息をのむ。



そのとき、店の入口の鈴が鳴った。

チリン――。

振り向いた正夫の目に、
少年のような笑みを浮かべた トオル が入ってくる。

「うっす、ブルーノさーん。
 言ってたアレ、ちょっと確認したいんすけど──」

言いかけて、警察の存在に気づく。

トオルの表情が一瞬にして固まり、
次に浮かんだのは露骨な不快感だった。


「……ああ、警察か。」

正夫が慎重に問いかける。

「君は……この店の従業員か?」

トオルは鼻で笑った。

「はぁ?
 まあ、手伝ってるけど……
 あんたらに説明する義理はないよ」

愛が眉をひそめる。

「協力してくれたら助かるの。
 地域の安全のためでもあるから──」

「安全?」
トオルの笑みが歪む。

「ふーん……
 相談しても“まともに助けてくれなかった”奴らが言うと説得力ゼロですねぇ」

その棘は、ただの反抗ではなく、
“誰かの絶望”を代弁するような鋭さだった。



ブルーノは横目でトオルを見る。

(……まずいな。
 こいつ、熱くなりやすいんだよ。
 余計なことまで口走られたら困る)

ブルーノは静かに笑みを崩さず、
しかし声だけはトオルへ向けて柔らかく投げた。

「トオル。
 お客さん……じゃなくて、刑事さんに失礼だよ。
 店の評判にも関わるからね?」

その声には“支配者”の響きがしのび、
トオルは肩をすくめる。

「……はいはい、わかりましたよ。
 ブルーノさんが言うならさ」

正夫はふたりを見比べる。

彼の直感が、鈍い警鐘を鳴らしていた。

(この関係……普通じゃない)
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