鳥居の先には

tomato

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2話

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簡単なあらすじ:神と妖の世界へ迷い込み天照大神に助けられる。それから現世へ戻る為に稲荷神の元へ。

その部屋を後にし、歩いて行く、歩きながら。
「名が無いというのはいささか不便だな、何か名をつけてやろうか、なぁに呼び名だけだ、気に入らなかったらまた自分で名乗れば良い」
そう言ってくれた。
「そうだな、、華実なんでどうだ」
「華実、わかりました」
嬉しくて思わず笑顔でそう答える。
「気に入ってくれたのなら良い」
ふふっと笑い返し、足を進めていく。
大分廊下を歩いた時、背が高く狐の様な尾の生えた和装の神に天照大神様が声を掛けた。
「稲荷神よ、件の子を連れて参ったぞ」
と言っている。
「よく来てくれた、我が食物の神とされる稲荷神さ」
そう言って此方を向く、その顔は中性的で柔らかな顔立ちをしているた。
「えっとこんにちは」
何を言えば良いのか分からず挨拶をしておく。すると。
「ふむ、良い器を持っている子だね、その子は」
「やはりお主もそう思うか、やはり心が透き通っておる証だな」
にこにこしながらそう話をしている。何を言っているのか分からずぽかんとしていた。
「おっと本命を忘れていた、眷属についてだったね、君が望むなら我の眷属、まぁ狐か蛇辺りの姿を持ち人を見守る者に成れば、何とか我の力で現世に姿を保てるだろう。さて、何か聞きたい事が有れば聞こう」
「あ、はい眷属って具体的に何をするんですか?」
「我の眷属だと神の使いとして各地に何が起こっているのか見て来て貰ったり、人々を少し手助けする、殆ど手出しはしていないが、見守るのが仕事の様な者だからな、そんなものさ」
「何か他に聞きたいことが有るかい」
「大丈夫です」
「そうか、じゃあ眷属になってくれるかい、ああ今すぐ決めなくても良い、じっくり悩む時間も無かっただろうしね」
「なりたいです、眷属」
そう言うと天照大神様は真剣な顔で。
「その選択に後悔せんようにな、成れば簡単には死ねなくなる上、もう人には戻れんぞ」
「いいんです。生きていられれば、人を救える立場になれるなら、心配して下さりありがとうございます」
「はっはっは、やはり肝が良く座っておる、その信念曲げるで無いぞ」
「話はまとまったようだね、じゃあこちらで準備を進めておこうか、それから、この後外へ行くんだろう、ならこのお面を着けるといい、妖に心を覗かれ難くなる、上屋台の物は貰えるようになるからね」
そう言って黒の狐のお面をくれた紅の紐があり動きにより美しく揺れそうだ。
「お主も過保護よなぁ」
「天照様も同じ様なものでしょう」
苦笑いしながら何か話しをしている、そういえば稲荷神様は話し方が砕けているなぁなんて思っていた。
「余も付いて行ってやりたいが少々仕事が残っていてなぁ、すまんが1人で巡ってくれるか、妖には拐われんようにな」
「はい、ここまで良くしてくれてありがとうございました」
深く頭を下げ感謝を述べると。
「華実を巻き込んでしまったのは神の不手際とも捉えられる、お主が頭を下げる必要など無いのだ、巻き込んでしまいすまんなぁ」
頭をふるふると横にふり。
「そんな事ないです、私の命の恩人ですから」
そう言うと嬉しそうに笑ってくれた。そんなやり取りをしていると稲荷神様が。
「そういえば1人で行くなら地図が要りますかね、玄関ホールに持って行きましょうか」
「そうしてくれると助かるな、では此方は出口へ向かうとするか、さあ行くぞ」
そう言い一度見た場所、入ってきた所へ戻って行く、出口へ着いた。そこで貰った狐のお面を付けて見た、視界は遮られる事なく通り快適だった。
「妖には悪い奴も居るがいい奴も居る、最初に怖がらせてしまったと思うが皆がそうと言うわけでも無いのだ、華実は危機感強い様だ、本能が警鐘を鳴らしたらすぐに逃げてくれ、もしくは余の名前を呼ぶといい、直ぐに駆けつけてやろう」
ドヤ顔気味でそう言ってくれた、きっと私の事を気にかけての事だろうと思う。
それから少し待つと稲荷神様が白く、金色の模様によって飾られた片手で持てる程の巾着の様なバケットバッグを持って来ていた。
「この中に大雑把だが地図を入れて置いたから持って行って下さいね」
そう言ってバッグをくれた、見た目の割には重みが無く使い易そうなバッグだった。
「ああ、他にも色々要りそうな物も入れて置いたからあとで見てね」
にこにこ笑いながらそう言っていた。
「はいっありがとうございます」
「どういたしまして」
そう言いながらも尾が嬉しそうに揺れていて、ちょっとだけかわいいな、と思ってしまった。
「じゃあ行って来ます、色々ありがとうございました」
「戻って来るまでに眷属となる準備は進めておく、自由に見て参れ」
「じゃあね、無事に帰ってこれるよう祈っているよ」
そう言って2柱共手を振り送り出してくれた。
これから何処へ行こうか、大通りを適当にふらふらと歩いている周りの妖に少し怯えてながらも何とか恐怖に耐え歩いていられる、屋台の物を貰ってみよう、物は試しだ!と自分を奮い立たせつつ何となく近くにあったたこ焼きの屋台の妖に。
「たこ焼き4つ入りを下さい」
そう言うと此方の顔、、、狐のお面を見るとお代も取らないまま透明なパックに入ったたこ焼きをくれた。食べてみたが普通に美味しい、熱々の普通に美味しいたこ焼きだった、そんな熱々のたこ焼きをはふはふと冷ましながら食べつつあるいていると、少し開けた公園の様な場所があった、他の妖は余り興味が無さそうで、ここだけ誰もいない、丁度ベンチがあったので座って、バッグの中の物を物色してみる、言われていた地図は上の方にありすぐ取り出せた、後で確認しよう、他にはお茶の入った竹製で紐の付いた水筒、覗いている刃が鋭く銀色に光っている折りたたみナイフと余り物は入っておらず、他にも物が入れられそうだ。それにしてもナイフなんて何に使うと思って入れたのだろう、まぁそれよりも地図だ。


このように本当に簡単にだが地図がある、多分神の城、と書かれている所から真っ直ぐ公園に来たのだろう、それで、私の迷い込んだところが神社と示されている所だと思う。さて、何処へ向かおうか、歩いて来た感覚から思うにとても広い、歩きで巡れる程と言っても県で開催される1番大きな花火大会の様な広さをしている、正直自分の体力で全て回るのは辛い、あと妖の主ってなんだ、とても不穏な予感がする,行かない方がいいだろう、そうなると今居る公園の近くの横に向かう道を見て帰り道にでも神社に寄ってみようか。ようやく目的が見つかった、今度は林檎飴が食べたいな、なんて思いつつまた歩き始めた。
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