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だが、しかし。この日を境にミシェラの受難の日々が幕を開ける事となる。
ミシェラが政務の練習として担っている学園運営諸々の書類を片付けようとすれば、
「王女殿下!提出期限が近い書類と提出期限に余裕がある書類を分けて置いたよ!」
と、頼んでもないのにロベルグが書類整理を手伝ったり……ミシェラが昼食を食べようと学園の貴賓室に向かえば、
「やぁ、王女殿下。今日の昼食は貴女が大好きな白身魚の香草焼きと季節の野菜のポタージュを頼んでおいたよ。」
と、勝手にロベルグが食事を用意していたり……ミシェラが穏やかな日差しの下、赤薔薇が咲き誇る庭園で優雅にユーリとお茶を楽しんでいれば、
「王女殿下ーーッ!!ユーリ君ーーッ!!美味しいお菓子を持って来たから一緒に食べないかいーーッ!?」
と、お菓子の包みを持ったロベルグがミシェラとユーリの憩いの時間に割り込んできたり……挙げ句の果てにはミシェラがお手洗いに行こうとすれば、
「王女殿下!僕も一緒にお手洗いに行くよ!」
と、ロベルグが一緒にお手洗いに付いて来ようとしたり…………などなどのミシェラが思わず頭を抱えたくなる様なロベルグのアピールが続いた。
初めこそ学園の生徒達もいままでの無愛想な態度が嘘の様に爽やかな笑顔を浮かべて自分達に挨拶をしてくるロベルグに驚き、戸惑い、恐怖していたものだが……意外と人は慣れるもので半月が経った現在では甲斐甲斐しくミシェラの世話を焼くロベルグを暖かい目で見守る生徒達の姿が学園各所で散見される様になり、前のロベルグより今のロベルグの方が良いという声が囁かれるほど180度性格が変わったロベルグを学園の生徒達は好意的に受け入れていた。
だが、肝心の当事者であるミシェラは半月が経った今でも180度性格が変わったロベルグを受け入れる事が出来ず、未だに懐疑的な目でロベルグを見ており……現在進行形で学園の執務室の花瓶に白薔薇を生けているロベルグを不機嫌そうな目で眺めていた。
(全く、みんな簡単にロベルグに騙されちゃって……!十年間もあんな無愛想な性格でやって来たのに今更そんな簡単に性格が変わるわけないじゃないの……!なんでそれが分からないのかしら……!)
当たり前の様に今のロベルグを受け入れている貴族子女達にモヤモヤしながら悶々とした気持ちを飲み下す様にミシェラは残っていた紅茶を一気に飲み干し、カチャンとティーカップをソーサーの上に置く。すると、その音に気付いたロベルグが白薔薇を生ける手を止めて、ニコリとミシェラに笑いかけた。
「おや、紅茶のお代わりかな?少し待っててね、すぐに美味しい紅茶を淹れるから」
フフッと嬉しそうに微笑みながら手に持っていた白薔薇と剪定鋏を置き、茶道具一式が置かれている棚に足を向けるロベルグ。その姿にミシェラは眉を顰めて「別におかわりが欲しいだなんて一言も言ってないんだけど……」と不貞腐れた様に呟こうとした。その時だった。茶道具一式が置かれている棚に近付いたロベルグが突然、口を押さえて「ゴホゴホッ!」と激しく咳き込み、だらりと指の間から赤い血を滴らせたのは。
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