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「!? お、お、お前口からち、血が……!」
突然、血を吐いたロベルグに驚いたミシェラが震える声で言うとロベルグはハッとした様子で口から手を離し「は、はは…」と気まずそうに笑う。
「あ、ははは……参ったな。どうやら口の中を少し切ってしまったみたいだ。」
「口の中を切ったって……いや、どうみても口の中を切った血の量じゃないわよ!?」
「ははは……大丈夫、大丈夫。こんなの日常茶飯事だから。」
「いやいや尚更大丈夫じゃないわよ!こんなことが日常的に起きるって……ちょっと待っていなさい!今すぐ侍女を呼んで医者を連れて来て貰うから!!」
「王女殿下、本当に僕は大丈夫だよ。だから医者は呼ばなくてーー……」
執務机に置かれている呼び鈴を掴み、侍女を呼び出そうとするミシェラを止めようとロベルグは手を伸ばした。が、その手は虚空を切り、ロベルグはそのまま糸が切れた操り人形の如くドサリと力無く執務室の床に崩れ落ちる。
「え」
死人の様な青白い顔をして執務室の床に倒れたロベルグの姿にミシェラは一瞬大きく目を見開いた後、絹を切り裂いた様な甲高い悲鳴を執務室に響かせたのだったーー……。
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「ロベルグ、何か言いたい事はあるかしら?」
シミ一つない清潔なベッドに寝かされたロベルグを見つめながらミシェラは問い掛ける。あの後、ミシェラの悲鳴を聞いて駆け付けた生徒達の手によって迅速に医務室に運ばれたロベルグは直ぐに医師の診察を受けた。そして、その医師からミシェラに告げられた診察結果は「精神的疲労」。医師の話を要約するにロベルグはストレスを溜めに溜め込み過ぎて体調不良を起こして倒れたらしい。この診察結果を聞いたミシェラはすぐにストレスの原因が「性格が激変した」事に起因すると察し、医師が別の用事で席を離れている隙にこうしてロベルグを問い詰めている訳だが……ロベルグは困った様に苦笑いしながら答える。
「えーと……王女殿下、ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした……?」
「ち、が、う、わよ!なんで血を吐くほど嫌だったのに心を入れ替えましたなんて嘘を吐いてまで演技をしていたのか聞いているのよ!」
バフバフッと布団を叩きながらミシェラが叫ぶ様に言うとロベルグは一瞬ピタリと動きを止めた後、スッと全ての感情を削ぎ落とした表情でミシェラを見つめる。突然、いつもの顔に戻ったロベルグにミシェラは驚き思わず身構えたが、ミシェラの予想に反してロベルグはフゥ…と憂いを帯びた溜め息を吐くと、絞り出す様な小さな声で呟いた。
「……やはり、ミシェラ王女殿下には嘘は通用しませんね。ええ、そうです。私はこの半月の間……ずっと貴女に気に入られる様にあの憎たらしい男爵令息を演じていました。」
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