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番外編①悲劇と悲願。
【54】吸血鬼ばぶちゃんと献血当番。
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「……ユユ」
「どしたの?リクリたん」
ばぶ期明けのリクリたんが深刻そうな表情をしていた。
「その、」
「ん?どしたの?」
リクハのことでは……ないと思う。今朝も父子仲良し、何ともない感じだったし。
じゃぁ、お仕事?まさか、俺とのこと!?毎日イチャイチャちゅーちゅされてるのに、一体何が!?
「今日は、献血なのだ」
は……?献血?
「吸血鬼が、献血……?」
普通、逆では?リクリたんは俺の血を飲むけれど、パートナーのいない吸血鬼は、狩人協会から血液を提供してもらっている。レナードさん曰く、そちらも献血で賄っているそうだ。
狩人協会からも、吸血鬼の血が混じっていても、人間の血が入っていればオーケーらしく、献血による血液が提供されているし、吸血鬼の事情を知る人々からも献血で血を募っているらしい。
「その、血清用だ」
「あぁ、血清の材料!」
吸血鬼の血を受け継ぐひとたちのための、命を繋ぐ血清。それは吸血鬼の王族の血を使うのだ。
しかも、王族でないとならないし、血が薄くなりすぎるとそれはそれで効き目が薄くなるそうだ。
「血清用の献血は、王族で献血当番を決めて、順番で回しているのだ。今回は私の番。今まではシングルばぶだったから私の番は少なめだったのだが」
シングルばぶだったら少なめなの……?なぜだろう。
「だいたい1ヶ月に一度、ひとりの王族が担当する。私はユユと出会う前に一度やっていてな……そこからはユユと出会って間もないから、ばぶとままんの絆を深め合うまではお休みしていたのだが。あとナナヤへの罰ゲーム」
いや、ナナヤさんへの罰ゲームって……。いや、何の罰なのかは何となく分かるけど。
しかし、1ヶ月に一度……。王族もそんなにいるわけではないのだろうが、1ヶ月に一度、ひとりなのだ。
「……それで足りるの?」
「うむ。王族血は濃いから、少しで足りる。そこからいろいろ混ぜて血清を作るのだ」
いろいろって何だろう。まぁ多分俺には分からない何か難しい技術が使われているんだろうな。
「作った血清は保管もされているから、足りなくならないようにしてある」
「そうなんだ。すごいね。それなら吸血鬼の血を受け継いでいてもみんな、普通に暮らせるんだね」
「……間に合わなかったものも、いるがな」
リクリたんが悲しそうな無表情になる。
無表情だが、リクリたんも悲しんでいるんだな。やっぱり一部とは言え、吸血鬼の血を受け継ぐからかなぁ。
「でも、これから助けて行くためにも献血は必要だ」
「そうだねぇ」
とっても立派な活動だよね。狩人協会と吸血鬼が仲良しだからこそかな。
「あ、でもそうなら、外国ではどうなの?ドンパチしてるんでしょ?」
「外国ではこの血清は作られていない。そこまでの量はないし、この血清は……母上の願いだから、父上がかなえているにすぎない」
「え……」
「だから父上のあとは……分からん」
「リクリたんは、望まないの?」
「……ユユが望むのなら」
「俺は、望むよ」
だって……血清がないと、吸血鬼の血を引いたひとたちは……。
「そうか。なら、私もその願いを叶えよう。代々の王は、ばぶであり、人間のままんを嫁に娶る。妃が望むのならば、王はそれを叶える」
「……うん、ばぶちゃんたち、優しいもんね」
「運命のままんにはな」
何その意味深系のひとこと!?
「でも、お義母さんもやっぱり優しいよね。みんなのために!」
「……そう、だな」
ん?リクリたんがちょっと口ごもる。お義母さん、あんなに優しくて、みんなのために血清も望んでくれているのに。
「同胞にはな」
「そうだねぇ」
お義母さんだと、お義父さんの吸血鬼と、人間ってことになるのかなぁ。さすがはお義母さんである。
「それでリクリたん、献血行くんだっけ?」
ぴっ
リクリたんが、俺の袖をぴっと摘まむ。
「リクリたん?」
なんか、震えてない!?
「おちゅーしゃ……こわい……ユユ、いっしょ」
ふるふるふる――――――……っ!!
まさかのお注射恐いいぃっ!?
吸血鬼なのに!いや、吸血鬼もお注射恐いことはあるのかもしれない。
リクリたんもね。
「いっしょ……」
ふるふるふる。
「うん、いいよ」
そんなリクリたんもかわゆす。
「どしたの?リクリたん」
ばぶ期明けのリクリたんが深刻そうな表情をしていた。
「その、」
「ん?どしたの?」
リクハのことでは……ないと思う。今朝も父子仲良し、何ともない感じだったし。
じゃぁ、お仕事?まさか、俺とのこと!?毎日イチャイチャちゅーちゅされてるのに、一体何が!?
「今日は、献血なのだ」
は……?献血?
「吸血鬼が、献血……?」
普通、逆では?リクリたんは俺の血を飲むけれど、パートナーのいない吸血鬼は、狩人協会から血液を提供してもらっている。レナードさん曰く、そちらも献血で賄っているそうだ。
狩人協会からも、吸血鬼の血が混じっていても、人間の血が入っていればオーケーらしく、献血による血液が提供されているし、吸血鬼の事情を知る人々からも献血で血を募っているらしい。
「その、血清用だ」
「あぁ、血清の材料!」
吸血鬼の血を受け継ぐひとたちのための、命を繋ぐ血清。それは吸血鬼の王族の血を使うのだ。
しかも、王族でないとならないし、血が薄くなりすぎるとそれはそれで効き目が薄くなるそうだ。
「血清用の献血は、王族で献血当番を決めて、順番で回しているのだ。今回は私の番。今まではシングルばぶだったから私の番は少なめだったのだが」
シングルばぶだったら少なめなの……?なぜだろう。
「だいたい1ヶ月に一度、ひとりの王族が担当する。私はユユと出会う前に一度やっていてな……そこからはユユと出会って間もないから、ばぶとままんの絆を深め合うまではお休みしていたのだが。あとナナヤへの罰ゲーム」
いや、ナナヤさんへの罰ゲームって……。いや、何の罰なのかは何となく分かるけど。
しかし、1ヶ月に一度……。王族もそんなにいるわけではないのだろうが、1ヶ月に一度、ひとりなのだ。
「……それで足りるの?」
「うむ。王族血は濃いから、少しで足りる。そこからいろいろ混ぜて血清を作るのだ」
いろいろって何だろう。まぁ多分俺には分からない何か難しい技術が使われているんだろうな。
「作った血清は保管もされているから、足りなくならないようにしてある」
「そうなんだ。すごいね。それなら吸血鬼の血を受け継いでいてもみんな、普通に暮らせるんだね」
「……間に合わなかったものも、いるがな」
リクリたんが悲しそうな無表情になる。
無表情だが、リクリたんも悲しんでいるんだな。やっぱり一部とは言え、吸血鬼の血を受け継ぐからかなぁ。
「でも、これから助けて行くためにも献血は必要だ」
「そうだねぇ」
とっても立派な活動だよね。狩人協会と吸血鬼が仲良しだからこそかな。
「あ、でもそうなら、外国ではどうなの?ドンパチしてるんでしょ?」
「外国ではこの血清は作られていない。そこまでの量はないし、この血清は……母上の願いだから、父上がかなえているにすぎない」
「え……」
「だから父上のあとは……分からん」
「リクリたんは、望まないの?」
「……ユユが望むのなら」
「俺は、望むよ」
だって……血清がないと、吸血鬼の血を引いたひとたちは……。
「そうか。なら、私もその願いを叶えよう。代々の王は、ばぶであり、人間のままんを嫁に娶る。妃が望むのならば、王はそれを叶える」
「……うん、ばぶちゃんたち、優しいもんね」
「運命のままんにはな」
何その意味深系のひとこと!?
「でも、お義母さんもやっぱり優しいよね。みんなのために!」
「……そう、だな」
ん?リクリたんがちょっと口ごもる。お義母さん、あんなに優しくて、みんなのために血清も望んでくれているのに。
「同胞にはな」
「そうだねぇ」
お義母さんだと、お義父さんの吸血鬼と、人間ってことになるのかなぁ。さすがはお義母さんである。
「それでリクリたん、献血行くんだっけ?」
ぴっ
リクリたんが、俺の袖をぴっと摘まむ。
「リクリたん?」
なんか、震えてない!?
「おちゅーしゃ……こわい……ユユ、いっしょ」
ふるふるふる――――――……っ!!
まさかのお注射恐いいぃっ!?
吸血鬼なのに!いや、吸血鬼もお注射恐いことはあるのかもしれない。
リクリたんもね。
「いっしょ……」
ふるふるふる。
「うん、いいよ」
そんなリクリたんもかわゆす。
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