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00.プロローグ
しおりを挟むブランシュ様···、ブランシュ様···どうかお目をお開けくださいまし···」
誰かが、私の手を握ってすすり泣いている声がする。
でも。
まだ、まだ、眠いの···お願い寝かせて。
体が酷く重たくて、瞼が重い。
シクシクと何処か湿り気を帯びた部屋の空気の中、私は再び深い眠りの奥へ奥へと沈んで行った。
♦ ♦ ♦
パチッ。
(久しぶりによく寝た気がするわ!)
と、思考回路もスッキリ爽快したは良いものの視界の中に飛び込んで来た情報に、今度は頭を悩まされるはめになってしまった。
「いっつー···!。何これ、身体中が痛いわ···」
とりあえず上半身を起こそうとすれば、ビリッと全身に電気が走った様な痛みが走って再びベッドへと戻るはめに。
「それにここは何処···。病院···にしては内装がおかしい。病院の中のVIPルーム?いやいやドラマじゃあるまいし···」
まるで何処ぞのヨーロッパの中のお城の中のような内装だ。やたらにロココ調の家具たちが並べられている。
何とか動かせる首だけを動かしてキョロキョロしていると、室内に派手な音が響き渡った。
「···!?」
(あ、メイドさんだ)
水の入った桶を床に盛大に落とし、大きな目には見る見る内に涙が溜まりやがて崩壊した。口元に両手を当て、肩がわなわなと震えている。
「ブ···ブ、ブランシュ様ぁ~!!」
「···へっ!?」
メイドなんて初めて見たものだから、呑気な事を考えていれば、ボブカットの超がつくほどの美少女メイドが、私の横たわるベッドへと号泣しながら駆け寄って来る。
「ブランシュ様!!やぁっっっとお目覚めに!···あぁ。感激している場合では無いわ!殿下をお呼びしなければ!それに宮廷医に、ブランシュ様のお兄様!」
(···んんん?···、ブランシュって、もしかして私か?私なの?)
「あ、あの···。少し、落ち着いては?」
(ん?、あ、あれ?そう言えば、よく聞いたらこの声って私の声じゃない!?)
一体何が起こっているのやら。
メイドに落ち着けと言った手前ソワソワ出来るはずも無く、ただただ笑顔を顔に貼り付けた。
「ブランシュ様ぁ···。お目覚めになられたばかりだといらっしゃいますのに···。私のご心配して下さるなど···待っていてください!直ちにお呼び致しますので···!」
(え────···)
恐らく、私(この体)の侍女であろうメイドはそそくさと落とした桶と水を片付け言葉をかける暇すら無いままに部屋を出て行ってしまった。
「仕事早っ···。じゃなくて···」
豪華な装飾品の置かれる部屋に、天蓋付きのベッド。オマケにふっくらした枕に羽毛布団。ちなみに私が着ているのはネグリジェだ。
て事はよ···もしかして、もしかしなくとも私はどうやら、今巷で流行りの異世界転生をしてしまったらしい···。(可能性として)
(···殿下の婚約者(?)と言うことは、私は悪役令嬢なのかしら···確率的に)
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