兄ちゃん、今度は何?

智春

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仕事仲間の奥さん

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「仕事仲間が結婚したと聞いたので、お祝いを届けに行ったのだが・・・」

帰ってくるなり俺の部屋に入ってきた兄ちゃんは、なんとも言えない複雑な顔をしていた。

「誰が結婚したの?俺の知ってる店員さん?」

「あぁ、スラッと背が高く、笑顔が爽やかなフリーターの青年だ」

「その人なら知ってる。ホビー系にめっちゃ詳しい人だよね」

その仕事仲間は、おっとりした癒やし系イケメンで、ハスキーな低音の声もセクシーだし、絶対モテるだろうと思ってたよ。奥さんもきっと超絶美人なんだろうな。

あれ?でも、この前話した時は独り暮らしって言ってたけど・・・

「日頃、趣味の分野で博学な彼には世話になっているので、ぜひ奥方にもご挨拶をしたいと、帰宅時にお邪魔したのだ。しかし、その奥方というのは・・・」

そこまで言って兄ちゃんは、困惑した目で俺を見つめた。

「人間ではなかったのだ」

「は?」

きょとんとする俺に、怪談でも語るみたいに兄ちゃんは「人間ではない」ともう一度言った。

「信じがたいことだが、彼の奥方は『フィギュア』という種類の人形だったのだよ」

・・・え、フィギュア?

「ちょっと待って、状況確認させて?その仕事仲間はさ、兄ちゃんに何て言ったの?『結婚した』って言ったの?」

「いいや」

兄ちゃんは首を振った。

「彼は先日、『予約していた嫁がやっと入荷した』と言っていた」

「あ~!そういうことね。理解したよ」

「何をだ?」

「あれだけプラモ、フィギュアに精通してる人ならやっぱそうだよね。それなら分かるわ」

「だから、何をだ?」

「兄ちゃんにはまだちょっと理解できない世界かな」

「どういうことだ!俺にもその世界とやらを説明しろ・・・あ、コラ!なぜ追い出すのだ!?」

完全に消化不良な兄ちゃんを居座られる前に部屋から追い出した。
あの癒やし系イケメンがオタクだと知って、世の中って案外バランスとれてるなぁ、と一人納得した夜だった。
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