兄ちゃん、今度は何?

智春

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パン朝食生活

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「お前にパンを焼いてやろう」

そろそろ寝ようかとベッドへ横になったところへ兄ちゃんがやって来た。

「パン屋に転職する気?」

「そういう意味ではない」

そう言って書店のレジ袋から取り出したのは、菓子折みたいに分厚い実用書だった。

「これで焼くのだ」

「料理本を見ながら自分で焼くってこと?」

「いや、コレで焼けるのだ」

「?」

全然分かんない。レシピ見ながら自分で焼くならともかく、料理本自体で焼くって何なんだよ?

首をかしげる俺を放置して、兄ちゃんは「やはり最初はプレーンなパンが適しているだろう」と言って、今度はコンビニのレジ袋から小麦粉を出した。

「ち、ちょっと!ここでやらないでよ。キッチン行こう」

作業を中断されてちょっと不機嫌そうな兄ちゃんの背中を押してキッチンへ向かった。

「毎朝、自分で焼いた新鮮なパンを食べるという生活を送るための実用書だ。今日、常連のお客様に薦められたので実践しようと思ってな」

料理本に添付された箱にはパンを焼く型が入っていて、マニュアル通りに準備すれば簡単にパンが焼けるらしい。

「冷蔵庫で一晩かけて生地を発酵させるそうだ。明日の朝焼いて食べさせてやろう」

「楽しみだね」

「あぁ。以前より、パン食がいいと訴える弟の要求に応えてやろうという兄の愛だ。喜ぶが良い」

「ありがと」

俺の返事に、手を粉だらけにしている兄ちゃんは満足そうに頷いた。

「悪いが、米を3合研いでおいてくれないか。予約炊飯は朝6時で」

「え?」

「今、俺は手が離せないからお前に頼んでいるのだ」

「パン焼くんでしょ?なんでご飯まで炊くの?」

戸惑う俺には兄ちゃんは「俺は毎朝、白飯を食べないと一日が始まらない性分なのだ」と言い切った。

「じゃ、パンは?両方食べるの?」

「いや、これはお前のためだと言っているだろう?」

「え・・・」

なにそれ。重いよ、兄ちゃん。

いくら俺がパン食にしたいって言ってたからって、わざわざ焼いてもらってまで食べたいわけじゃないし・・・

なんかヤダな、どのタイミングで手焼きパンを諦めさせようか。
愛情表現の方法がトリッキーな兄ちゃんが楽しそうに生地をこねている姿を見ながら、ザルに入れた米を水ですすいだ。
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