僕と松姫ちゃんの妖怪日記

智春

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まさかの同居人

7月1日早朝


「ちょっと、父さん!アレってどういうこと?父さんはアレのこと知ってたの?」

「・・・アレって?・・・あ~、もしかして、もうバレちゃった?」

早朝5時、電話の向こうの父さんの声は、まだ目覚めていないぼんやりした声でムカつく。朝早く起こされたからって何だ。僕は丸6日寝てないんだよ。

「う~ん・・・もう少しごまかせると思ったんだけどな。大希、夜更かししてちゃダメでしょ?休職中って言ったって、生活リズムは規則正しく・・・」

「無理だよ!あんなカリカリカリカリ毎晩やられて、安眠できる方がどうかしてるよ」

「そんなに気になるかな~」

ヘラヘラ笑いながら「俺は気にならなかったけどな」なんて返してくる父さんに、ますますイライラが増した。あぁ、まったく!山育ちって、みんな神経が図太いのかな。

ため息をついて本題の、仏壇の前に放置してきたアレのことを切り出した。

「朝になったら急に静かになっただろ?動けるのは基本的に日が落ちてから夜明けまでみたいだから、今は元に戻っていないかな?」

「あ、うん。そうだよ」

確かに、朝陽で明るく照らす仏間で、アレはピクリともしない。
夜中、納戸から転がり出てきた騒音の犯人は、古い日本人形だった。父さんがいうには、市松人形っていうものらしいよ。

「俺の母方の祖母ちゃん・・・え~っと、大希からしたら曾祖母ひいばあちゃんだな、その人の形見なんだよ。付喪神つくもがみが何とかって言ってたけど・・・忘れちゃった。あんなに動けるなんて、ちょっとビックリするだろ?」

「ちょっとで済むんだ?スゴいな、父さんたち」

夜の間ずっと偉そうに騒いだり、バタバタ動き回るったりする人形に、なんでみんな平気でいられるんだよ。ここで育つと異常な現象が日常になるの?

「松姫ちゃん・・・あ、あの市松人形の名前ね。あの子、蝶よ花よと大事に扱われていたから、ちょっとお姫様気質だけど、悪い子じゃないから許してあげてね」

「ちょっとかな?父さんたちの基準ってどんだけ一般人とズレてるの?」

「まぁ、子供なんてあんなもんだよ。大希だって、似たようなものだったし」

「え?僕もあんなワガママ放題だったの?」

ショックを受ける僕に父さんは、子供を持てば分かるよと笑った。そんなのまだまだ先の話だし、こんな異様な予行練習いらない。

「あ、そうそう。ご飯多めに炊くとか、井戸の木桶に水を張って毎日取り換えるとか、いろいろ頼んだけどちゃんとやってる?」

「まぁ、一応」

祖父ちゃんの家の留守番を任された日に、父さんから箇条書きにされたレポート用紙を渡されていた。
なんでも、祖父ちゃんと祖母ちゃんの日課だったから、帰ってくるまでの間、代行していてほしいと言われていたんだ。作業的には簡単なものばかりだけど、何の意味があるのか分からない。

「用件は松姫ちゃんのことだけ?他には何かある?」

「他に?いや、別に」

僕の答えに「ま、すぐには何もないか」と言ったように聞こえたけど、聞き違いかもしれない。
日本人形は動く以上に度肝を抜かれることなんて起こりそうもないし。

「とんでもないシェアハウスだな、この家」

電話を切って、自室として使っている客間の畳の上に寝転がった。そしてひと眠りした後、「松姫ちゃんは時代劇観せておくとおとなしいよ」という父さんのアドバイスに従って、持ってきたノートパソコンで適当な動画を検索し始めた。

まさか猿と畑で抗争している田舎で、日本人形とシェアして暮らすことになるなんて奇妙すぎるよね。

こんな感じで、7日目の朝は明けていったんだ。

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