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夢を打ち砕け
7月13日昼
「あの、俺・・・いや、僕は雅志と言います。ほ、本日はお日柄も良く・・・」
顔だけじゃなく首筋まで真っ赤にして叔父さんは和服美女の前でモジモジしている。暑苦しいオッサンの熱気に気圧された彼女は、こちらに目配せして助けを求めている。
ごめん!秋香さん、乗り切って!
救助不能とジェスチャーして、心の中で秋香さんの健闘を祈っていると「敗色濃厚ですね」と、僕の肩に腕を回している天狗が興味なさそうに大あくびをした。
「何もしなくても自滅すると思いますよ」
「だから、ただフラれるだけじゃダメなんだってば。リベンジ不可能ってくらいじゃなきゃいけないの」
叔父さんが、情熱と諦めの悪さは人並み以上だということは知っている。完膚なきまでに夢を打ち砕かなきゃ、きっと引きずることになる。
どうしてこんな状況になっているかというと、昨晩、叔父さんの恋心に終止符を打とうと密談で決まったからだった。
前の晩と同じく、一目惚れした和服美女への想いをビール片手に熱く語っていると、彼におにぎりを食われて面白くないと思っていた天狗が僕に囁いた。
「柿の木の精に想いを拒絶されたら、帰ってくれるのではないでしょうか?」
「あ!そうか」
そうだよ。避けてばかりじゃ解決しない。ここは秋香さんにも頑張ってもらって攻撃に転じよう。
どうせ叶うことのない恋なんだから、早く夢から覚めてもらわなきゃ。
僕らは(叔父さんには僕しか見えてないけど)、どういう女性だと思っているか具体的にインタビューして、叔父さんが酔いつぶれた後で対策を練ったんだ。
「和服美女が清楚で健気で上品って、かなりオーソドックスなイメージ持ってるよね。でもそれを打ち砕くとするなら簡単だよね」
「はい。真剣な顔の大希くんもステキですよ」
「脅し文句は考えてあるの?任せていい?」
「大丈夫ですよ。他ならぬ可愛いキミのためですから」
「余計なこと言わないで。協力しないと例の報酬はあげないからね」
「あ!そういう意地悪するところも父親似で好きです。ではなくて、尽力いたします、参謀殿!」
天狗は僕の両手を握って頷いてから、秋香さんの背後へ飛んでいった。
秋香さんしか見えないことを利用して、作戦通り、大和撫子イメージ崩壊を仕掛ける言動を助言した。
一瞬、顔色が青くなった秋香さんは、覚悟を決めたようで僕へ流し目で同意を伝えた。
そしておもむろに、楚々とした和装の胸元をガバッとはだけさせ腕をまくった。
「アンタ、アタシをこのシマ仕切ってる秋香と知ってて物言ってんのかい?ウダウダしてると締め上げるぞ!金玉ついてんのか、この野郎!」
秋香さんは叔父さんの胸ぐらを掴んで、任侠映画の姐さんばりにドスの効いた声で啖呵を切った。
あぁ!なんて台詞言わせるんだ、天狗は!
でも、迫真の演技だよ。胸元が開いててちょっと色っぽさが増したのは、僕的にはラッキーだけど。
さぁ、これは予想外でしょ?叔父さん。
三歩下がってついてくるような古風なタイプの女性じゃないって分かったでしょ?ほら、わなわな震えてるし、一気に目が覚めたんじゃない?
吹き出したくなる衝動を堪えつつ、様子を見守っていると、ガクッと膝から崩れ落ちた叔父さんが、秋香さんを見上げて叫んだ。
「姐さん、一生ついて行きます!自分を姐さんの舎弟にして下さい!」
え!?
「自分、目が覚めたっス!清楚で従順なだけが女じゃないっス!男勝りの女性にあれこれ仕込まれたいって、今、自分の心の声が聞こえたっス!!」
「お、叔父さん!?」
嘘でしょ、土壇場で新たな嗜好に目覚めないでよ!
泣きそうな目でこっちを見ている秋香さんと、彼女の背後で呆気にとられている天狗を見つめ、僕は頭を抱えた。
もう!!何したら帰ってくれるの?
「あの、俺・・・いや、僕は雅志と言います。ほ、本日はお日柄も良く・・・」
顔だけじゃなく首筋まで真っ赤にして叔父さんは和服美女の前でモジモジしている。暑苦しいオッサンの熱気に気圧された彼女は、こちらに目配せして助けを求めている。
ごめん!秋香さん、乗り切って!
救助不能とジェスチャーして、心の中で秋香さんの健闘を祈っていると「敗色濃厚ですね」と、僕の肩に腕を回している天狗が興味なさそうに大あくびをした。
「何もしなくても自滅すると思いますよ」
「だから、ただフラれるだけじゃダメなんだってば。リベンジ不可能ってくらいじゃなきゃいけないの」
叔父さんが、情熱と諦めの悪さは人並み以上だということは知っている。完膚なきまでに夢を打ち砕かなきゃ、きっと引きずることになる。
どうしてこんな状況になっているかというと、昨晩、叔父さんの恋心に終止符を打とうと密談で決まったからだった。
前の晩と同じく、一目惚れした和服美女への想いをビール片手に熱く語っていると、彼におにぎりを食われて面白くないと思っていた天狗が僕に囁いた。
「柿の木の精に想いを拒絶されたら、帰ってくれるのではないでしょうか?」
「あ!そうか」
そうだよ。避けてばかりじゃ解決しない。ここは秋香さんにも頑張ってもらって攻撃に転じよう。
どうせ叶うことのない恋なんだから、早く夢から覚めてもらわなきゃ。
僕らは(叔父さんには僕しか見えてないけど)、どういう女性だと思っているか具体的にインタビューして、叔父さんが酔いつぶれた後で対策を練ったんだ。
「和服美女が清楚で健気で上品って、かなりオーソドックスなイメージ持ってるよね。でもそれを打ち砕くとするなら簡単だよね」
「はい。真剣な顔の大希くんもステキですよ」
「脅し文句は考えてあるの?任せていい?」
「大丈夫ですよ。他ならぬ可愛いキミのためですから」
「余計なこと言わないで。協力しないと例の報酬はあげないからね」
「あ!そういう意地悪するところも父親似で好きです。ではなくて、尽力いたします、参謀殿!」
天狗は僕の両手を握って頷いてから、秋香さんの背後へ飛んでいった。
秋香さんしか見えないことを利用して、作戦通り、大和撫子イメージ崩壊を仕掛ける言動を助言した。
一瞬、顔色が青くなった秋香さんは、覚悟を決めたようで僕へ流し目で同意を伝えた。
そしておもむろに、楚々とした和装の胸元をガバッとはだけさせ腕をまくった。
「アンタ、アタシをこのシマ仕切ってる秋香と知ってて物言ってんのかい?ウダウダしてると締め上げるぞ!金玉ついてんのか、この野郎!」
秋香さんは叔父さんの胸ぐらを掴んで、任侠映画の姐さんばりにドスの効いた声で啖呵を切った。
あぁ!なんて台詞言わせるんだ、天狗は!
でも、迫真の演技だよ。胸元が開いててちょっと色っぽさが増したのは、僕的にはラッキーだけど。
さぁ、これは予想外でしょ?叔父さん。
三歩下がってついてくるような古風なタイプの女性じゃないって分かったでしょ?ほら、わなわな震えてるし、一気に目が覚めたんじゃない?
吹き出したくなる衝動を堪えつつ、様子を見守っていると、ガクッと膝から崩れ落ちた叔父さんが、秋香さんを見上げて叫んだ。
「姐さん、一生ついて行きます!自分を姐さんの舎弟にして下さい!」
え!?
「自分、目が覚めたっス!清楚で従順なだけが女じゃないっス!男勝りの女性にあれこれ仕込まれたいって、今、自分の心の声が聞こえたっス!!」
「お、叔父さん!?」
嘘でしょ、土壇場で新たな嗜好に目覚めないでよ!
泣きそうな目でこっちを見ている秋香さんと、彼女の背後で呆気にとられている天狗を見つめ、僕は頭を抱えた。
もう!!何したら帰ってくれるの?
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