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野良稲荷
7月16日夜
松姫ちゃんは白いモフモフ2匹を膝に乗せ、時代劇の動画を鑑賞している。
本日のタイトルは『鬼平犯科帳』。捕り物の場面では手をぎゅっと握り、一緒に「御用だ!」と声を上げた。2匹のモフモフは大声にも動じることなくおとなしく寝ている。
「いいなぁ・・・」
僕は可愛らしい妖怪を抱くご主人様を恨めしく眺めた。
日暮れ、腰の重い天狗を山に帰してから、清蟹くんと早めの夕飯を食べている頃に、松姫ちゃんが起きてきた。その時にはすでに、白い子狐を連れていた。
「油揚げの作り置きはもうないのか?稲荷たちがうるさくてかなわん」
眉を寄せる松姫ちゃんに言われ冷蔵庫を開けると、いつの間にかタッパーの中身は空っぽだった。
「ごめん。祖母ちゃんに連絡しとくから今夜はこれで我慢して」
僕は予備で買ってきておいた高級油揚げを皿に出し、稲荷の前に置いた。
ふんふん匂いを嗅いで品定めした後、警戒しつつかぶりついた。かなり空腹だったのか、ものの数分でペロリと食べてしまった。
「まるで拾ってきた犬の子みたいだね」
微笑む僕に「まことに、そうじゃったぞ」と松姫ちゃんが言った。
「この稲荷は、久志が子供の頃裏山で拾ってきたのじゃよ」
「マジで?」
野良犬じゃなくて、野良稲荷!?
口の周りをペロペロ舐めている白い子狐が野良に捨てられている姿を想像してみた。絶句ている僕に、
松姫ちゃんはその日の話をしてくれた。
「久志は元々、そういうモノを引き寄せる質なのじゃよ。ある日、裏山で妖怪に仕掛ける落とし穴を掘っている時じゃったそうじゃ」
シャベルの先に何か堅いモノが当たった。土を取り出して土をはたくと、それは小さな稲荷像だった。
なんで稲荷像が埋まっていたかは分からないけど、裏山辺りには、大昔に山津波に飲まれた古い社があったという言い伝えがあるらしい。
長い間埋まっていた地面からやっと外に出たことで、像から稲荷たちが解放されて飛び出してきたんだって。
父さんはそれを抱えて家に戻った。
「自分で面倒みるので飼っても良いか、そう文代に問うたのじゃ。名も付けたと申してな、犬とでも思うたのか、おかしな奴よ」
「ホントだね。子犬拾ってきた展開と同じって・・・父さんって、子供の頃はもしかして動物と妖怪の区別つかなかったとか?」
いや、区別ついていたとしても、あの人ならやっぱり飼うと言いそうだな。人と妖怪も区別してなさそうだし。
「結局、世話をしたのは最初の数日だけ。稲荷たちが懐く前に飽きてしまった久志は、文代に押し付けてしまったのじゃ」
「うわ。そんなところもペット飼うって言い出した子供の典型的な行動そのままだよ」
「文代は嫁入りの日には狸どもを連れていたので、そこへ白い獣が2匹混ざったくらい屁でもなかろうよ」
祖母ちゃんと一緒に世話をしていたおかげで、松姫ちゃんには心を開いているらしい稲荷たち。羨ましいな、思う存分モフモフできて。
「もしや、大希殿が手作りの美味い油揚げを食べさせられれば、稲荷たちも懐くのではござらぬか?食わせてくれる者に獣は心を許すであろう」
「清蟹くんもそう思う?やっぱ胃袋を握る人は強いんだろうね」
異性をオトすのも、動物を手懐けるのも、料理の腕次第なのかな。
「祖母ちゃんにレシピ聞くかな」
本気で料理の勉強しようか、なんて考えてしまう夜だった。
松姫ちゃんは白いモフモフ2匹を膝に乗せ、時代劇の動画を鑑賞している。
本日のタイトルは『鬼平犯科帳』。捕り物の場面では手をぎゅっと握り、一緒に「御用だ!」と声を上げた。2匹のモフモフは大声にも動じることなくおとなしく寝ている。
「いいなぁ・・・」
僕は可愛らしい妖怪を抱くご主人様を恨めしく眺めた。
日暮れ、腰の重い天狗を山に帰してから、清蟹くんと早めの夕飯を食べている頃に、松姫ちゃんが起きてきた。その時にはすでに、白い子狐を連れていた。
「油揚げの作り置きはもうないのか?稲荷たちがうるさくてかなわん」
眉を寄せる松姫ちゃんに言われ冷蔵庫を開けると、いつの間にかタッパーの中身は空っぽだった。
「ごめん。祖母ちゃんに連絡しとくから今夜はこれで我慢して」
僕は予備で買ってきておいた高級油揚げを皿に出し、稲荷の前に置いた。
ふんふん匂いを嗅いで品定めした後、警戒しつつかぶりついた。かなり空腹だったのか、ものの数分でペロリと食べてしまった。
「まるで拾ってきた犬の子みたいだね」
微笑む僕に「まことに、そうじゃったぞ」と松姫ちゃんが言った。
「この稲荷は、久志が子供の頃裏山で拾ってきたのじゃよ」
「マジで?」
野良犬じゃなくて、野良稲荷!?
口の周りをペロペロ舐めている白い子狐が野良に捨てられている姿を想像してみた。絶句ている僕に、
松姫ちゃんはその日の話をしてくれた。
「久志は元々、そういうモノを引き寄せる質なのじゃよ。ある日、裏山で妖怪に仕掛ける落とし穴を掘っている時じゃったそうじゃ」
シャベルの先に何か堅いモノが当たった。土を取り出して土をはたくと、それは小さな稲荷像だった。
なんで稲荷像が埋まっていたかは分からないけど、裏山辺りには、大昔に山津波に飲まれた古い社があったという言い伝えがあるらしい。
長い間埋まっていた地面からやっと外に出たことで、像から稲荷たちが解放されて飛び出してきたんだって。
父さんはそれを抱えて家に戻った。
「自分で面倒みるので飼っても良いか、そう文代に問うたのじゃ。名も付けたと申してな、犬とでも思うたのか、おかしな奴よ」
「ホントだね。子犬拾ってきた展開と同じって・・・父さんって、子供の頃はもしかして動物と妖怪の区別つかなかったとか?」
いや、区別ついていたとしても、あの人ならやっぱり飼うと言いそうだな。人と妖怪も区別してなさそうだし。
「結局、世話をしたのは最初の数日だけ。稲荷たちが懐く前に飽きてしまった久志は、文代に押し付けてしまったのじゃ」
「うわ。そんなところもペット飼うって言い出した子供の典型的な行動そのままだよ」
「文代は嫁入りの日には狸どもを連れていたので、そこへ白い獣が2匹混ざったくらい屁でもなかろうよ」
祖母ちゃんと一緒に世話をしていたおかげで、松姫ちゃんには心を開いているらしい稲荷たち。羨ましいな、思う存分モフモフできて。
「もしや、大希殿が手作りの美味い油揚げを食べさせられれば、稲荷たちも懐くのではござらぬか?食わせてくれる者に獣は心を許すであろう」
「清蟹くんもそう思う?やっぱ胃袋を握る人は強いんだろうね」
異性をオトすのも、動物を手懐けるのも、料理の腕次第なのかな。
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