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月夜の狸囃子
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7月17日夜
月明かりって、こんなに明るいんだってビックリしたよ。
山間の田舎は道路が少ないから街灯もほとんどない。夕方、またに松姫ちゃん連れて散歩行く時にも、懐中電灯がないと足下が不安なんだよ。
でも今夜は、ちっちゃい星が見えないくらい空が明るい。
「大希!早う鳴らさぬか」
「夜に太鼓って、近所迷惑じゃ・・・」
と言いかけて、苦笑いした。
この家に一番近い家でも、谷川の向こう側。集落で最も奥に離れた立地だったことを思い出した。
「じゃ、遠慮なく」
僕は思いっきりバチを振るった。
ドン!
太鼓なんて叩いたことないけど、いい音じゃないかな?メンテナンスなんか分かんないけど、納屋にあった祖父ちゃんの太鼓を担いできて、庭に据えた台座にセットしただけ。
「おぉ!これは、毎年、里の祭りのお囃子で聞く音色でござるな!」
「左様。祭り囃子は幼子らが任されておって、それに指南する役目を昭夫が請け負っておるのじゃよ」
自慢げにふんぞり返る松姫ちゃんは、「もっと腰を低く、背筋を伸ばせ」とダメ出ししてきた。本格的な祭り囃子じゃないんだから、もっと気楽に叩かせてよ、もう。
ドン、ドンと打ち鳴らすうちに、何かが 垣根の茂みの中から沸いてきた。
「大希殿!狸でござる」
清蟹くんは飛び跳ねてはしゃいだ。
茶色いモコモコは、仄明るい月の光に照らされる庭で、ピョコンと立ち上がった。そして、自分の腹の辺りを手のひらで叩いた。
ポン!
「狸囃子!スゴい、ホンモノだ」
ドン!ドン!っという僕の太鼓を叩くと、狸たちはポン!ポン!と返してくる。面白い。スゴい楽しい。
僕は台座から太鼓を抱え上げて、歩きながら叩いてた回ると狸たちが後ろをついてきた。よちよちと後ろ足で立って、ぞろぞろ一列に並んでいる。
めちゃくちゃ可愛い!
「大名行列のようでござるな」
「いや、旅芸人の一座じゃな」
「あはは。僕はハーメルンの笛吹き男って思ったよ」
月夜の行進って不思議だ。妙に気分が昂ぶってくるね。
「そうだ。秋香さんにも見せてあげよう。きっと楽しんでくれるよ」
僕は庭から道路へ下る坂道へ向かった。柿の木は、坂道の脇の斜面に生えている。狸たちがちゃんとついて来ているか、ふり返って後ろ向きに歩いた。
その時、昼間ケガした足をひねって痛みが走り、ぐらっとよろけた。
「大希!危ない」
「うわっ!!」
坂道を外れ、急斜面の方へ体が傾いた。
ヤバい!この土手は、川まで続いてる。もし転げれば、大ケガすることは必至。
「わぁ!!誰か、助けて!」
ドシン!!
「!?」
突然、何かが下から突き上げられた衝撃があった。
その反動でなんとか坂道の上へ転がされて尻もちをついた。膝と手のひらを擦り剥いたけど無事だ。
今のは、なんだ?
「大希!」
「大希殿!ご無事でござるか!」
「う、うん・・・大丈夫だよ」
血相を変えて駆け寄った二人の頭越しに、斜面を疾走する黒い影に目をこらした。大きな影が一つ、それを取りまく無数の影・・・
「あれって、何・・・?」
一陣の風のように、月明かりの届かない雑木林の闇に飛び込んでいったそれは、枝豆畑で僕を見つめた猿の群れと、それを率いる人影のようなモノだった。
月明かりって、こんなに明るいんだってビックリしたよ。
山間の田舎は道路が少ないから街灯もほとんどない。夕方、またに松姫ちゃん連れて散歩行く時にも、懐中電灯がないと足下が不安なんだよ。
でも今夜は、ちっちゃい星が見えないくらい空が明るい。
「大希!早う鳴らさぬか」
「夜に太鼓って、近所迷惑じゃ・・・」
と言いかけて、苦笑いした。
この家に一番近い家でも、谷川の向こう側。集落で最も奥に離れた立地だったことを思い出した。
「じゃ、遠慮なく」
僕は思いっきりバチを振るった。
ドン!
太鼓なんて叩いたことないけど、いい音じゃないかな?メンテナンスなんか分かんないけど、納屋にあった祖父ちゃんの太鼓を担いできて、庭に据えた台座にセットしただけ。
「おぉ!これは、毎年、里の祭りのお囃子で聞く音色でござるな!」
「左様。祭り囃子は幼子らが任されておって、それに指南する役目を昭夫が請け負っておるのじゃよ」
自慢げにふんぞり返る松姫ちゃんは、「もっと腰を低く、背筋を伸ばせ」とダメ出ししてきた。本格的な祭り囃子じゃないんだから、もっと気楽に叩かせてよ、もう。
ドン、ドンと打ち鳴らすうちに、何かが 垣根の茂みの中から沸いてきた。
「大希殿!狸でござる」
清蟹くんは飛び跳ねてはしゃいだ。
茶色いモコモコは、仄明るい月の光に照らされる庭で、ピョコンと立ち上がった。そして、自分の腹の辺りを手のひらで叩いた。
ポン!
「狸囃子!スゴい、ホンモノだ」
ドン!ドン!っという僕の太鼓を叩くと、狸たちはポン!ポン!と返してくる。面白い。スゴい楽しい。
僕は台座から太鼓を抱え上げて、歩きながら叩いてた回ると狸たちが後ろをついてきた。よちよちと後ろ足で立って、ぞろぞろ一列に並んでいる。
めちゃくちゃ可愛い!
「大名行列のようでござるな」
「いや、旅芸人の一座じゃな」
「あはは。僕はハーメルンの笛吹き男って思ったよ」
月夜の行進って不思議だ。妙に気分が昂ぶってくるね。
「そうだ。秋香さんにも見せてあげよう。きっと楽しんでくれるよ」
僕は庭から道路へ下る坂道へ向かった。柿の木は、坂道の脇の斜面に生えている。狸たちがちゃんとついて来ているか、ふり返って後ろ向きに歩いた。
その時、昼間ケガした足をひねって痛みが走り、ぐらっとよろけた。
「大希!危ない」
「うわっ!!」
坂道を外れ、急斜面の方へ体が傾いた。
ヤバい!この土手は、川まで続いてる。もし転げれば、大ケガすることは必至。
「わぁ!!誰か、助けて!」
ドシン!!
「!?」
突然、何かが下から突き上げられた衝撃があった。
その反動でなんとか坂道の上へ転がされて尻もちをついた。膝と手のひらを擦り剥いたけど無事だ。
今のは、なんだ?
「大希!」
「大希殿!ご無事でござるか!」
「う、うん・・・大丈夫だよ」
血相を変えて駆け寄った二人の頭越しに、斜面を疾走する黒い影に目をこらした。大きな影が一つ、それを取りまく無数の影・・・
「あれって、何・・・?」
一陣の風のように、月明かりの届かない雑木林の闇に飛び込んでいったそれは、枝豆畑で僕を見つめた猿の群れと、それを率いる人影のようなモノだった。
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